八条学園騒動記
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第五百七十四話 文化祭前日その十
「異世界迷い込みかな」
「それだとファンタジーだろ」
「そう、けれどモンスターとか異種族とか出ないから」
「ファンタジーじゃないか」
「漂流した子供達がどうして生きていくか」
そうしたというのだ。
「創作だけれどドキュメントみたいな」
「そんな作品か」
「僕はそう思ったよ」
読んでというのだ。
「そうね」
「成程な」
「面白かったよ」
「最後は皆助かるんだよな」
「無事にね、色々な国の人がいるし」
「イギリスだけじゃないんだな」
「フランスやアメリカ、オーストラリアからも来ているよ」
そうして十五人の少年達を形成しているというのだ。
「皆で計画や規律を立てたり役割を決めて分担したりして」
「暮らしていくんだな」
「漂流した小島の中でね」
「皆子供でもしっかりしているんだな」
「驚く位にね」
「そうした生活が寄宿学校で培われたんだな」
「そのこともわかるよ」
この作品を読んでいると、というのだ。
「それで面白いんだ」
「それなら今度読んでみるか」
洪童はマルコの十五少年漂流記についての話をここまで聞いてこう言った、その目には興味深そうな光がある。
「そうしてみるか」
「いいと思うよ、短い作品だしね」
「長くないんだな」
「適度な長さで」
それでというのだ。
「長編ってところまでいかないんだ」
「中編位か」
「手頃な長さだしね」
「そのこともいいんだな」
「かなりね、だからね」
「読んで損はしないか」
「絶対にね、まあ名作の小説は」
俗にこう言われている作品はというのだ。
「読んで損しないと思うよ」
「そういうものか」
「シェークスピアにしても」
「ああ、ウィンザーの陽気な女房達にしてもな」
洪童はマルコの言葉から自分達があたる舞台の作品の話もした。
「それもな」
「短くなくてね」
「手頃な長さでな」
それでというのだ。
「読んでいて面白いし」
「人間も学べてね」
「いい部分も悪い部分もな」
その両方がというのだ。
「それでな」
「いい作品だよね」
「本当に読んでいて損しないな」
「そう思うと」
実際にというのだ。
「小説こそ一番読んでいいものかな」
「そんなものか」
「シェークスピアが戯曲でも」
小説ではなくこちらのジャンルの作品だが、というのだ。
「それでもね」
「創作だからか」
「小説と同じ様に考えて」
そしてというのだ。
「読めばね」
「いいか」
「そう、そしてね」
そのうえでというのだ。
「色々学んでいけばいいよ」
「そういうことか」
「というかね」
「というか?」
「小説は下手な哲学書、思想書よりずっといいかもね」
「もっと多くのことを学べるか」
「おかしな新聞記者の記事よりもね」
マルコはこうも言った。
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