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八条荘はヒロインが多くてカオス過ぎる

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第二百七十八話 期末テストその十三

「領地から街だから」
「そうなるのね」
「ワーグナーの作品の主人公は」
 作品の傾向としてだ。
「異邦人なんだよね」
「他の世界から来た人ね」
「そうなんだよね、ローエングリンも」 
 この人にしてもだ。
「それでお姫様を救って」
「悲しい別れを経て帰る」
「そうした作品だね」
「そうよね」
「けれどクリスマス向きの作品かっていうと」 
 このことはだ。
「確かにそうだね」
「だからよね」
「観たいね」 
 僕は心からこう思って言った。
「是非ね」
「そうね、ただね」
「ただ?」
「もうそんな季節なのね」
 詩織さんはここでこうも言った、しみじみとした口調で。
「早いわね」
「そうだね、もうね」
 僕も詩織さんの今の言葉に応えて言った。
「気付いたらって感じだね」
「八条荘に入ったと思ったら」 
 もうだ。
「冬でね」
「クリスマスだから」
「早いわね」
「本当にそうだね」
「光陰矢の如しっていうけれど」
「実際にそうだね」
「気付いたらって感じよ」
 詩織さんはこうも言った。
「一日の流れどころか」
「もう季節単位でね」
「あっという間よね」
「そうだね」
「何だかんだでテストに入ってるし」
「そのテストもね」
「あっという間でしょうね」
「そうだね」
 もうこのことは間違いない、あっという間に終わることはもう確実なことだと思っている。それで僕は詩織さんに言った。
「終わって」
「それですぐにね」
「クリスマスだね」
「そうよね、本当に早いわね」
 詩織さんはしみじみとした口調で僕にいってきた。
「時間の流れって」
「そうだよね」
「八条荘に入って」
 そうしてだ。
「皆揃ってね」
「それで夏休みに入って」
「合宿があってお祭りがあって」
「それで二学期になって」
 そうしてだ。
「運動会に文化祭があって」
「それでもう冬だからね」
「驚く位速いわね」
「全くだね」
 僕も実感するばかりだ、このことを。
「これじゃあ気付いた時にはおじさんとか」
「なってるかも知れないわね」
「子供の時は長く感じたのに」
 時間が経つそのことがだ。
「一日だってね」
「もっと長かったわよね」
「そうだったよね」
「子供の頃の時間は」
 詩織さんは遠くを見る目で僕に言ってきた。
「もう一日が長くて」
「朝起きてご飯食べて学校に行って」
「それで帰ってから塾行くか遊んで」
「そんな一日だったけれどね」
「長かったわよね」
「うん、一時間でもね」
 この時間すらだ。
「長かったね」
「そうよね」
「それが今じゃね」
 高校生になった時はだ。
「本当にね」
「あっという間よね」
「そうだよね」
「何ていうか」
 詩織さんはここで僕にこうも言った。 
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