八条荘はヒロインが多くてカオス過ぎる
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第二百七十八話 期末テストその六
「普通はね」
「こっそりとだったのね」
「こっそりと楽しんで」
そしてだ。
「罪に問われない様にしたんだ、ただね」
「ただ?」
「王様でもそうした人がいたしね」
「ああ、バイエルン王だった」
「ルードヴィヒ二世なんだけれどね」
「うたかたの記の」
バイエルン王ルードヴィヒ二世と聞いてだ、詩織さんはすぐに森鴎外のこの小説のタイトルを出してきた。
「あの人よね」
「あの作品だと同性愛じゃないけれどね」
「そうだったわね」
「何でか知らないけれど」
「あの作品じゃそうよね」
「森鴎外の考えかも知れないけれど」
書いたその人のだ。
「あの人が同性愛を否定していて」
「それでっていうのね」
「ああした風に書いたかも知れないけれど」
それでもだ。
「あの作品では女の人を好きになってね」
「湖に入ってね」
「それで亡くなったけれど」
「実際は同性愛の人で」
「当時有名だったんだ、ただ王様だったから」
この立場だったからだ。
「だからね」
「捕まらなかったのね」
「狂王と呼ばれていても」
音楽や舞台、古城の建築に夢中になって予算を浪費して人前にも姿を現さない様になってこう呼ばれた。
「最後は幽閉されようとしたけれど」
「そこで亡くなってね」
「うたかたの記も書かれたけれどね」
当時森鴎外はバイエルンそのミュンヘンの大学に留学していてこの話を聞いてそれで書いたと言われている。
「あの人は同性愛の人で、ただ」
「ただ?」
「畑中さんもね」
畑中さんの名前も出して話した。
「僕にこの人のことをお話してくれたよ」
「そうだったの」
「テスト前にね」
「そんなことがあったのね」
「うん、畑中さんあの人のこと嫌いじゃないとのことで」
「お話してくれたの」
「あの王様のことを色々とね」
僕は詩織さんに畑中さんがお話してくれたあの人のことをさらに話してくれた。
「戦争が嫌いで赤十字にも真っ先に賛成して国民には慕われていたそうだよ」
「いい人だったのね」
「お花と花火が好きでね」
「お花が好きだったのね」
「それに詩がね」
「何か女性的な人だったみたいね」
「畑中さんが言われるには身体は男の人でもね」
このことも話した。
「心は女の人だったかもって」
「性同一障害みたいな?」
「そうだったかもってお話してくれたんだ」
「そうなのね」
「実際に僕も思ったよ」
畑中さんのお話を聞いてだ。
「そうした人だったのかもってね」
「何か不思議な人ね」
「少なくとも悪い人ではなかったみたいだよ」
このことは間違いないと思う。
「それで歌劇が特に好きで」
「ワーグナーよね」
「もうあの人の作品が大好きで」
この人のことで最も有名なことの一つだと思う。
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