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戦国異伝供書

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第九十五話 負け戦その九

「よいな、敵は弓矢と槍でじゃ」
「近寄せぬ」
「そうしていきますな」
「この様にして」
「そうしていきますな」
「左様、当家の槍は長くしてある」
 見れば他の家のそれよりも確かに長い。
「それでじゃ」
「徐々にでもですな」
「退いていきますな」
「このまま」
「敵を寄せ付けず」
「そうしていく、敵は弓矢にな」
 それに加えてだった、見れば。
「石つぶてに騎馬隊も使って来るが」
「つぶてにはですな」
 桂が問うてきた。
「それには」
「左様、顔を下ろしてな」
「陣笠で受ける様にしますな」
「身体にも具足がある、顔を下ろしてな」
「屈めばですな」
「石が当たっても陣笠や具足が守ってくれてな」
「痛くないですな」
 こう元就に言った。
「そうですな」
「そうじゃ、だからな」
「ここはですな」
「そうじゃ、石はそうして防いでな」
 そしてというのだ。
「弓矢には弓矢じゃ」
「それで、ですな」
「数多く放ち」
 その弓矢をというのだ。
「敵に近寄って放たたせぬ」
「そうしますな」
「そうする、後は騎馬隊はな」
 彼等の突進、それは退く時に最も恐ろしものだがそれはというと。
「槍襖でじゃ」
「防ぎますな」
「そうするのじゃ」
「そうして防ぎますな」
「そこに攻めが入れば」
 元網のそれがというのだ。
「敵は守りだけでないとなってな」
「攻めに専念出来ませぬ」
 志道が言って来た。
「左様ですな」
「そうさせる、攻められることもあるとなると」
「そこを警戒するので」
「攻めも弱まる」
「だからよい、損害も出させられるしな」
 尼子家の軍勢をというのだ。
「よい、だからな」
「攻めもですな」
「言ったのじゃ」
 元網にというのだ。
「そうな」
「退く間でも攻められる」
「それが出来るのはあ奴だけだからな」
「お任せしたのですな」
「そういうことじゃ、ではよいな」
「守り攻めつつ」
「戦って退くぞ」
 こう言ってだ、元就は采配を執って弓矢と槍で敵を寄せ付けず攻めるに夢中になった元網の騎馬隊を軸とした攻めで戸惑ったところでだ。
 退く、それを繰り返し。
 出雲から石見まで退いていった、その間傷付いた兵達は全て助けていった。誰一人見捨てようとしなかった。
 それを見てだ、元網は兄に問うた。 
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