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戦国異伝供書

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第九十五話 負け戦その五

「戦うぞ」
「さすれば」
「その様にしていきましょうぞ」
「これよりは」
「うむ、しかしな」
 ここで元就はこうも言った。
「尼子家の軍勢は多い」
「その大軍とどう戦うか」
「そのことがですか」
「ここでは問題ですか」
「そうなる、そこは苦しいが」
 それでもというのだ。
「安芸まで戻るぞ」
「はい、それでは」
「槍と弓矢もありますし」
「戦っていきましょうぞ」
「この度は」
「そうしていくとしよう」
 こう話してだ、そしてだった。
 元就は尼子家の軍勢と戦いつつそのうえで退きにかかった、尼子家の大軍はここぞとばかりに来るが。
 元就は陣の前に置いた柵と堀を使い粘った、そうしつつまずは大内家の軍勢と逃がしていった。その彼等は。
「無事にか」
「はい、今のところはですが」
 志道が答える。
「陶殿が無事にです」
「退かせてくれておるか」
「陶殿はご自身は魚のはらわたを食され」
 そしてというのだ。
「飯を兵達に回されて」
「采配を執られているか」
「退きの」
 それのというのだ。
「執られています」
「そしてか」
「はい、大内殿を真っ先に戦の場から逃がされて」
 そのうえでというのだ。
「そうされています」
「それは何よりじゃ」
「退きの動きは速いので」
 陶のその采配はというのだ。
「それで、です」
「大内家の軍勢はじゃな」
「順調に退いています」
「そうか、ではな」 
 元就はその話を聞いて言った。
「我等もな」
「頃合いを見てですな」
「退く」
 そうするというのだ。
「そうしていく」
「左様でありますな」
「うむ、陣は固めておるしな」
 堀と柵でだ。
「そう簡単には破れぬ」
「尼子家の軍勢も」
「そうして戦いながらな」
「大内家の軍勢は安全なところまで逃れれば」
「その時はな」
 まさにというのだ。
「退くぞ、そしてな」
「退く時はですか」
「もう策は用意してある」
「そしてその策を出して」
「そうしてな」
 そのうえでというのだ。
「無事に退くぞ」
「そうされますか」
「そして退くとなればな」
 そう決めたらともだ、元就は話した。
「まさにな」
「一目散にですな」
「退く、立ち止まることはせぬ」
 そうするというのだ。
「よいな」
「そうしますな」
「尼子家の軍勢に偽の話を流しつつな」
「それで乱してですな」
「そしてじゃ」
 そうしてというのだ。 
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