ヘタリア大帝国
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TURN42 雨蛙その三
「それでも」
「私はそれでいい」
「むしろ大歓迎だ」
東郷も言ってきた。それも機嫌よく。
「君のその能力に期待したい」
「雨を降らす能力にですか」
「その通りだ。敵も味方も攻撃力を半減させられる」
東郷はあらためてこの能力について話した。
「是非だ。太平洋軍の為に役立ててくれるか」
「私のこれが力ですか」
「素晴らしいな。いいだろうか」
「私からも頼む」
ベトナムはここでまたフェムに言った。
「その雨を皆の為にだ」
「皆さんの為に」
「使って欲しい。いいだろうか」
「祖国さんに言われますと」
やはりだった。フェムは自分の祖国の言葉には従うのだった。
「それなら」
「よし、これで話は決まりだな」
東郷はフェムの言葉に微笑みで返した。しかしだった。
ここでその雨が降った。茶室の中は忽ち水浸しになる。その水浸しになった部屋の中でだ。日本はフェムを見て言うのだった。
「何となくですが」
「どうかしたんですか?」
「はい、フェムさんから感じるものがあります」
「若しかしてそれって」
「柴神様ともお話しましょう」
日本は柴神の話もした。
「そのうえで確かめたいことがあります」
「ひょっとして私の雨の原因が」
「わかるかも知れません」
「何とか。これがわかれば」
フェムは日本の言葉を聞いて切実な顔になった。そのうえで言うのだった。
「私もう皆さんに迷惑をかけることはありませんね」
「ないです。ただ」
「ただ?」
「イギリスさんはお気付きになられなかったのでしょうか」
日本はイギリスが妖精やそういったものを見ることができるのを知っている。しかしそのイギリスがフェムのことを気付かないことについてだ。
首を捻ってだ。こう言うのだった。
「だとしたらこれは一体」
「若しかすると特別な存在ではないでしょうか」
山下は日本には、彼女の祖国には礼を尽くした話でこう言った。
「イギリスですら見えないまでの」
【特別ですか」
「そうした存在ではないでしょうか」
「しかしイギリスさんが見えないとなると」
「ですが祖国殿は感じられましたね」
「ふとですが」
僅かだがだ。感じたのは確かだというのだ。
「確かに」
「祖国殿は今陰陽道を使っておられますので」
「そうした感覚が普段より遥かに研ぎ澄まされてですか」
「そうではないかと」
「ではここは」
「はい、柴神様にも来て頂きましょう」
山下は真面目な口調で東郷に話す。雨は結界により彼女を弾き濡らすことはない。しかし水が周りにあるその姿には艶があった。
「それがいいかと」
「わかった。それではな」
「はい、その様に」
こう話を整えてだ。それからだった。
ハワイ戦線から柴神が来た。神なので行き来は一瞬で済むことが今回は有り難かった。秋山はその彼にまずはこのことを尋ねた。
「そちらの戦線はどうなっているでしょうか」
「今のところは問題ない」
そうだとだ。柴神は秋山の問いに答える。
「マイクロネシアもラバウルも大丈夫だ」
「そうですか。それは何よりです」
「敵の侵攻は首相と外相の前線外交で遅らせてもいる」
この二人の特技だ。交渉や工作で攻めさせないのだ。少なくともその侵攻を遅らせることはできるのである。
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