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FAIRY TAIL~水の滅竜魔導士~

作者:山神
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予想外

 
前書き
決めました!!
これが終わったらオリジナルで投稿をしていきたいと思います!!
理由は100年クエストでやると途中で追い付いてしまうだろうから!!
ただ、100年クエストもやりたい気持ちはあるので、もしかしたら別に100年クエストだけの作品を作るかも?
ただ、このストーリーあと最低8話かかることが判明してしまったので、それが終わってからですが笑 

 
シリルとティオスの戦い。それを最も近くで見ていたウェンディたちは、突然の戦況の変化に戸惑っていた。

「シリル!?どうしたの!?」

お互いに攻めていたはずなのに、味方である少年は動きが止まったかと思うと、頭の前で腕をクロスさせてただ防御の体勢に入っている。対するティオスは、敵の攻撃が止まったタイミングを見計らい、一方的な攻撃に出ていた。

「なんだ!?どうしたんだね!?」
「わからん!!何が起きているというんだ!?」

一夜とジェラールも何がどうなってこのような状況になっているのか理解できずにいる。距離を大きく取っていることもあり、シリルの目から涙のように流れている血液に彼らは気が付いていないのだ。

ダッ

なす統べなくやられていく少年。ここはどうするべきなのか3人はわからずにいると、その脇を1つの影がすり抜けていく。

「カミューニ!!」

先ほどまでの準備運動を徹底していたカミューニがトップスピードで2人の元へと駆けてゆく。その反応のよさ、スピードから、彼らはどういうことなのか察した。

「これがお前が想定していた事態が、カミューニ」
















カミューニside

2人との距離は結構ある。あいつらのパワーは普通の魔導士のそれとは格が違うからな。それに巻き込まれないようにするには、あれくらい離れてないと意味がない。

目から大量に出血し、恐らく視覚を完全に奪われているであろうシリルの救助に向かいながら、そんな言い訳を頭の中でする。本当だったらもっと近くで最悪の事態に対応できるようにしておかなければならなかったのに、それを怠ってしまった自分の行動を正当化するように。

「シリル・・・俺が行くまで持たせろよ」

さらに魔力を解放し速度を上げる。俺が着くよりも前にあいつがやられたら、それこそ積みゲーだ。しかし・・・

「こんな事態・・・全く予想できなかったよ」

もっと()()()()を想定していた俺からすると、シリルの目が見えなくなってピンチに陥るとは思っていなかった。もし今の状態で俺が想定することになれば・・・

「死ぬしかないんだろうな、俺たちは」















第三者side

「何!?何が起こったの!?」

一方、天界でこの戦いを見ていたヨザイネも、シリルの突然の出血、防御に徹する姿勢に何が起きたのかわからずにいた。

「目が・・・割れた?」
「いいえ。恐らくは目の血管が切れたんでしょう」

シリルの目玉が破裂してしまったのではないかと思わせるほどの状況だったが、ヨザイネを抱える美女は冷静な口調でそう告げる。

「な・・・なんでそんなことに?」
「あの子はヨザイネの子供といえど、ほとんどの成分は人間だからね。14歳くらいだっけ?人間だとそれくらいじゃあまだ体は完全に出来上がっていないからね」

まだ成長途中であるシリルは当然肉体的にも魔力的にも伸び代が大きくある。しかし、今回はそれが裏目に出てしまった。

まだ伸び代があるということは未完成であり、肉体は破壊と再生を繰り返し成長していく。つまり壊れやすいとも言えるのだ。
そんな未成熟な体で通常の魔導士ではあらえない2つの滅系魔法を持っている上に、ティオスと同等の魔力を持つために妖精の心臓(フェアリーハート)を体内へと宿したシリル。そのあまりにも大きな負担をかけられ続けた肉体は限界に達し、彼のもっとも戦う上で使用していた部位・・・目が最初に悲鳴をあげてしまったのだ。

「そんな・・・どうすればいいんですか!?」

ヨザイネは自身を抱えている女性に問いかける。それに対し女性は何も答えない。

「カミューニが救出に向かってはいるが、奴ではほんの一瞬隙を作るので精一杯だろう」
「シリルを回復魔法の使えるウェンディの元まで運ぶのは、少々無理がある」

オーガスト、ヴァッサボーネがそれぞれの見解を述べる。ティオスの圧倒的力の前では、ほとんどの魔導士たちの力など無力。とてもじゃないが、勝負にならない。

「そうだ!!いい方法がある!!」

すると、女性に抱えられていたヨザイネが急に立ち上がり、彼女の前で膝をつき、頭を下げる。

「お願いします!!オーガストを蘇られてもらえないでしょうか!?」

突然の発言に目を見開き硬直するオーガストたち。それを言われた女性は、深いタメ息をついた。

「残念だけど、それはできないわ」
「そんな!?なんでですか!?」

彼女がなぜそんなことを言えるのか、そもそもいまだにこの女性の正体すら知らない彼らからすれば、一体何が行われているのかも全く理解ができない。

「私は()()()()で何かを為すことはできないわ。前に色々やりすぎちゃったからね」
「そこを・・・そこをなんとかお願いします!!」

彼女の無慈悲な言葉を聞いてもなおも食い下がるヨザイネ。その姿に同調すればいいのか迷っていたオーガストたちだったが、彼女から発せられた名前に驚愕した。

「アンクセラム様!!」
「「「「「!?」」」」」

突然発せられた聞き覚えのある名前に、ヨザイネを除く全てのものが目を丸くしていた。

















地上でも天界でもシリルの身に起きた異常事態に慌てている頃、肝心の少年は劣勢に追い込まれていた。

「これでわかっただろ?お前がどれだけ弱いかが」

視力を失ったことにより攻撃をすることができなくなっているシリル。彼は急所への攻撃を避けるため、元々の小さな体をさらに小さく屈め、防御に徹することしかできなくなっていた。

「そんなことしても、無駄だよ」

しかし、目が見えない彼では当然攻撃を防ぐことなどできない。ティオスはシリルの防御を掻い潜り、次々に攻撃をヒットさせていく。

「さて、これでおしまいと行こうか」

あとは気絶させて彼を体内に取り込めばそれで終わり。ティオスは完全体になり、この世の全てを破壊することができる。そんな全てを決める決定打を放とうとしたティオスだったが・・・

「波動波!!」

射程範囲内にやってきたカミューニが、それを阻止する。

「チッ」

ジェラールの流星(ミーティア)でも射程圏内には間に合わないとティオスは読んでいたためにこの攻撃をギリギリで回避するのがやっと。おかげでシリルとの距離が離れたタイミングで、カミューニは彼を抱えてさらに距離を取る。

「やれやれ・・・本当にシリルが好きだね、あなたは」
「あぁ。俺のやれなかったことをやってくれた奴だからな」

かつてハデスを殺すことに全ての労力を注ぎ込んだカミューニ。そんな彼が最後に託したのは、紛れもない彼なのだ。

「あなたのいう通りシリルは何度も不可能を可能にしてきた。それは俺も認める。だが・・・」

ニヤリと笑うティオス。彼の瞳に映る少年は、ひどく怯えていた。それにカミューニは、いまだに気付けていない。

「そんな状態じゃあ、とても相手にならないな」
「何?」

シリルの異変にまだ気付けないカミューニ。その理由は明白だった。彼はティオスという絶対的な力を持った悪を前に、集中力を途切れさせることができず、少年の様子を見れていないのだ。

「カ・・・カミューニさん・・・」
「シリ・・・!?」

名前を呼ばれようやく少年に視線を向けたカミューニ。彼は自身の抱える少年の現状を見て、目を見開いた。

「目が・・・何も・・・見え・・・」

先ほどまでの悪魔のような形相から普段通りの少年の表情へと戻っているシリル。翼こそまだ出ている状態だが、魔力が明らかに下がり始めているのを、青年はすぐに感じ取った。

(バカな・・・妖精の心臓(フェアリーハート)とかいうのは永遠の魔力なんじゃないのかぁ!?)

ジェラールを伝いこの戦争の主なことを早い段階で聞かされていたカミューニ。彼はシリルが手にいれたであろう力のこともわかっていた。だが、現実で起きているのは、聞いていたこととは全く違う状況。

「どうしよう・・・どうすれば・・・」

ここまで来てようやく青年は気付いた。少年が弱気になればなるほどどんどんが弱くなっているということに。それはつまり・・・

(永遠の魔力といえど、それを持つ()がザルになってたら、漏れて消滅してしまうということか)

目が見えなくなったことにより、明らかに不安感に襲われているシリルは、どんどん体内に取り込んだはずの妖精の心臓(フェアリーハート)の力が漏れ出てしまっているのだ。永遠の魔力であっても、大気中に出てしまえば自然に同化していき、エーテルナノ濃度を高めるだけで終わってしまう。

(だけど、今の俺にこの状況を何とかできる術がねぇ!!)

自身がやってきた方向に視線を向けるが、この状況に呆気に取られているジェラールたちはいまだやってきている様子はない。治癒魔法が使えるウェンディの元まで運べればシリルの目は治せるだろうが、ティオスが目の前にいる状況でそんなことは不可能。

(そもそも、治せたとしてもその間に魔力がなくなって終わりだ)

妖精の心臓(フェアリーハート)の魔力が尽きてしまえば、天使の力を解放できたシリルであっても、さすがにティオスに勝つことは難しい。それは先の戦いを見れば、想像に難くない。

(くそっ・・・何か・・・突破口はないのか!?)

様々な方法、可能性を頭の中で計算していく。しかし、どれも起死回生のものにはなり得ない上、現実的にとてもじゃないが起こり得そうもないものしか出てこない。

(俺ではティオスを止めることはできない。シリルを取り込まれれば奴はさらにパワーアップし、誰も手がつけられなくなる)

そうなればアルバレス、フィオーレ、両国の魔導士たちが束になっても、ティオスを止めることはできないであろう。

「・・・」

そこまで思考した彼は、抱えていたシリルを地面へとゆっくりと下ろす。視界のない彼は感触でそれを把握すると、よく状況の把握できないまま座っていることしかできない。

「カミューニさん?」

彼が何をしようとしているのか、全くわからない。そんな少年の疑問など気にする素振りも見せない青年は、強大な悪へと向かい合った。

「あれ?あなたが俺の相手をするってことですか?」
「いや・・・」

これまでの彼とは違い、冷や汗もかかずビビっている様子もない青年に、ティオスは疑問符を浮かべ問いかける。それに対し青年は、冷めた目で敵を見据えた。

「万策尽き果てた」

ティオスを倒すためにあらゆる手段を見せてきたフィオーレ。だが、結果として見れば、それは全て不発に終わり、このような段階まで来ている。

「お前を倒すことなどもう無理だろう。なら俺は・・・」

闘志も何も感じられないカミューニ。彼は全身の魔力を解放すると、ゆっくりと・・・スローモーションのように戦闘態勢に入る。

「魔導士らしく、戦って散ろう」

勝つことはもちろん、消耗させて他の者に繋ぐこともできない。彼がここで負ければ視界のないシリルとすぐにティオスは融合し、さらなる力を手にいれるのは明白だから。それならばとカミューニは潔く散ることを決意した。

「さすがBIG3!!俺が見てきた中でも、一番勇ましいよ」

今まで見てきた魔導士たちは、死に直面した途端恐怖に怯え、中には命乞いする者までいた。それなのに、カミューニはそのどちらもすることなく、冷静な分析のまま死を受け入れた。その事に対するティオスの拍手は、恐らく嫌みなのだろうが。

「俺は1度・・・いや、2度死んでるからな。今さら死ぬのも怖くねぇよ」

大魔闘演武の直後のドラゴンとの戦いの際も、天海との戦いの際も彼は命を落としていた。しかし、ウルティアとヨザイネの力によって生還した彼からすれば、もうそれは恐怖に怯えることではないのだろう。

「じゃあ・・・勇ましく散れ」
「あぁ・・・」

高まる両者の魔力。カミューニは人差し指をティオスに向けると、かつてシリルを殺めかけたその魔法を解放する。

「お前の勝ちだ、ティオス」

全ての魔力を指先1つに集約させる一点集中波(ピンポイントシュート)。最期の足掻きに選んだそれは、今まで彼が放ってきた魔法の中でも最高クラスの威力だっただろう。
ティオスはそれをあえて避けることなく右肩で受けるが、体はびくとも揺れることはなかった。

「あなたの最期の力、見せてもらえてよかったよ」

自らの死を受け入れ、潔く引くその男の行動に、彼は敬意を表した。だからこそそれを避けることはしなかった。彼の全てを受け止め、あの世へと送ることにしたのだ。

「サヨナラ、カミューニ・フィゾー」
「あぁ。じゃあな」

一瞬で距離を詰め、青年の頭部に溢れ出ようとする魔力を集約した左手を向けるティオス。カミューニはそれを受け入れており、目を閉じ最期の時を向かえようとしていた。

ゴゴゴゴゴゴゴゴ

しかし、次第に近付いてくる謎の音に、2人の男の動きは止まった。

何事かとそちらに顔を向けたティオスとカミューニ。その彼らの視界に入ったのは、人の数倍はあるであろう巨大な津波だった。

「な!?津波!?」
「なんでここで!?」

ここは大陸の真ん中部分に位置しているはずのエリア。海などは近くになく、ましてや雨も降っていないこの状況で、これほどの津波が起こることはありえない。

「「「うわあああああああ!!」」」

想定できるはずもない事態に対処できなかった青年たちも、目が見えないため気付くことすらできなかった少年もあっという間に飲み込まれる。しばらくして水が引けてくると、その場に咳き込む3人の姿があった。

「ゴホゴホッ・・・なんだってんだ・・・」

何か訳がわからずにいたティオスだったが、カミューニは目を輝かせた。

(援軍か!?)

このタイミングで味方が駆け付けてくれたのかと、津波が来た方向に視線を移す。しかし、期待に満ち溢れていた彼の目は、一瞬でその輝きを失った。

「こらぁ!!師匠の偽物!!やっと見つけたでありますよぉ!!」
「レオン!!もうラウも怒ったからね!!」

オレンジ髪の翼の生えた少年に抱えられている薄い桃色のショートヘアの少女。彼らが何者か把握しているカミューニは、思わずタメ息を付いた。

「もっとマシな奴が来てほしかった・・・」

ガッカリとしたトーンで、誰にも聞こえないほどの声で呟く青年。しかし、この2人の登場により、事態は大きく変わっていた。

「サクラとラウルか。取るに足ら・・・!!」

呼吸を落ち着けたティオスも、2人を見て焦りを見せていなかったが、右肩に走る激痛に顔を歪める。

「くっ・・・ちょっとミスったかもしれないな」

カミューニの攻撃を受けたその部位を抑え、顔を歪める。そして彼らの視界の範囲外では・・・

「サクラ・・・腕を上げたな」

微かに目の焦点が合っているシリルの姿があった。


 
 

 
後書き
いかがだったでしょうか。
たぶん皆さん忘れていたであろうサクラとラウルです。えぇ、私も忘れかけてましたww
そしてティオスがダメージを受け、シリルが少し回復してきました。ピンチのあとにチャンスありとはこのためにあった言葉ですね!!
次はさらに展開が進むと思います。次回もよろしくです!! 
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