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FAIRY TAIL~水の滅竜魔導士~

作者:山神
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決定的な違い

 
前書き
TwitterでFAIRYTALE好きなフォロワーさんいてビックリしました。
やっぱりあれだけの作品だとファンもいっぱいいるんだと改めて認識した今日この頃。 

 
ドォンッ

次々に繰り出されるティオスの攻撃。だがそれは、回避に専念しているシリルには一切当たることがない。

「竜魔神の・・・」

一向に当たる気配がないにも関わらず、ティオスは攻撃の手を休めない。確かに回避を続けなければならないシリルも消耗はしていくだろうが、それ以上に攻撃を繰り出し続ける彼の方が消耗していくのは明らかだった。

(なのになぜ、こんな無意味な攻撃を続けているのか)

疑問に思いながらも、一度敵に攻撃の流れを渡してしまったこともありなかなか反撃に打って出ることができない。

ピシッ

「!?」

その時、シリルの耳には何か変な音が聞こえた。それが何なのかはわからない。ただ、確かに彼の耳にはその何かが・・・亀裂が入ったかのような音が聞こえたのだ。

ニヤッ

その何かがわからないシリル。そんな彼を嘲笑うかのように、ティオスは小さく笑みを浮かべた。















「あんなにガムシャラに攻撃するなんて、なんか拍子抜けね」

そう言ったのはヨザイネを抱きながら地上の様子を見ている美女。彼女はティオスの攻撃が明らかに粗雑になっていることに内心ガッカリしていた。

「なんでティオスはあんな攻撃の感じになったんですか?」
「さぁ?」

抱えられているヨザイネはされるがままの状態で美女に問いかける。だが、彼女は首をかしげるだけで、何が狙いなのかわかっていない様子。

「ただ、ティオスの狙いはわからないけど、カミューニとゼレフの想定していることは大体わかったわ」
「「「「「!?」」」」」

ただ、続けてそう答えた彼女の方に思わず全員が視線を向けた。その際ヨザイネのお団子ヘアが、彼女の顔面に直撃すると、彼女の顔から一瞬で血の気が引いた。

「すすすすすすすみません!!」
「いいのよ、気にしてないわ」

思わず泣きそうになりながら謝罪する彼女に対し、全く気にした様子のない女性はそのまま、泉の方に視線を落とす。それを見たオーガストが、ようやく口を開いた。

「して、お父さんは何を恐れているのです?」

その声が聞こえた途端、彼女は彼の方に視線を向ける。すると、美女はニヤリと笑みを浮かべて見せた。

「ここにいる私たちならなんとなく気付けると思ったけど、意外と気付かないものなのね」
「ここにいる私たちなら?」

彼女の言葉の意味がよくわからず、顔を見合わせるオーガストたち。ヨザイネもまたわからずにいたが、そんなのお構い無しに女性は口を開く。

「他にも諸々ヒントはあるわよ?例えば・・・」

そういって、黒髪の女性はある人物を大きく写し出す。水色の髪をした白い翼を広げた少年を見て、彼女は不敵に笑う。

「この子が妖精の尻尾(フェアリーテイル)っていうギルドの一員ってこととかね」

その言葉を聞いてもわからないヨザイネとドラゴンたち。だが、オーガストだけはその言葉の真意に気付き、顔色を変えて地上の様子に目を向けていた。















(なんだ?今の音は・・・)

突然の変な音に動きが止まりそうになったシリル。そのわずかな隙をこの男が見逃すわけがない。

ドンッ

「ぐっ!!」

一瞬速度が落ちたタイミングできっちりと蹴りを腹部へとクリーンヒットさせてくるティオス。運良く魔法は発動してはいなかったものの、シリルは不意を突かれた形になりバランスが崩れてしまう。

「竜魔神の・・・」

畳み掛けるようにブレスの体制に入るティオス。危険を感じたシリルは自らの翼で自身の体を覆い尽くす。

「怒号!!」

至近距離で放たれたブレス。それは翼で防御を固めたシリルには一切届かなかった。だが、彼の魔法が弾かれた周囲は至るところに爪痕が残っており、受けていれば一溜りもなかったことを物語っている。

「ちぇっ、仕留め損なったか」

言葉では悔しがっているものの、声のトーンはそんな風には聞こえない。まるでこのようなチャンスはこれから何度でもあるとでも言いたげな、そんな印象を与えた。

「ナメるなよ?」

それにより、少年の心に闘志が漲ってきた。彼は翼を広げると、ティオス目掛けて急加速する。

「竜魔の翼撃!!」

自身の翼の上に魔力を合わせての攻撃。それは、通常のその魔法よりも高い攻撃力を誇っていた。

ガンッ

まともにティオスの肉体を切り裂いたシリル。それなのに、ティオスは怯むことなく自身の脇を抜けていった少年に向き直る。

「竜魔神の・・・」

背中越しに魔力を溜める感じが伝わってきたシリルも同様に彼に体を向けた・・・はずだった。

「!?」

それなのに、本来そこにいるはずの敵の姿が見えない。

「握撃!!」
「なっ!?」

そんな隙などあったはずはないのに、いつの間にか背後を取られそのまま地面へと突き落とされる。ここでダメ押しをするかのように、ティオスは額に手を当てると、落とされたシリルの目の前へと瞬間移動する。

(例のあれか!!)

ティオスは時の狭間に自らの魔力をリンクさせることにより、瞬間移動に限りなく近い動きをすることができる。シリルの速度が落ちた一瞬のタイミングを見計らい、彼はそれを使用して怒涛の攻撃に打って出たのだ。

「だが・・・」

種がわかってしまえばどうってことはない。それに、ティオスのそれは諸刃の剣。魔力をリンクさせるには時間がかかるため、自身が隙さえ与えなければ発動することはできないのだから。

「竜魔の鉄拳!!」

そう考えたシリルはすかさず反撃に打って出る。ティオスはそれを難なく払うと、同様に拳を突き出す。

「くっ・・・」

回避しようとしたが攻撃に出ていたこともあり敵の攻撃を受けてしまうシリル。先の攻撃で流れを引き寄せたからなのか、ティオスは再度怒涛の攻撃ラッシュに切り替える。

(またそれか)

彼のこの不可解な攻撃にシリルは疑問を感じ始めてはいた。だが、何も確証もない上に攻めあぐねている相手を狙い撃ちする方が作戦としては有利であると少年は考えた。

「竜魔の鉤爪!!」

ティオスのガムシャラの攻撃に対し、隙を縫って攻撃を仕掛けるシリル。それを読んでいたのか、ティオスは軽く体を下げてそれを回避する。

「竜魔神・・・」

シリルが動いたからなのか、体を回転させながらの攻撃に転じるティオス。高い魔力を誇っている彼ならではの、力業での攻撃。

氷結(コンゲラート)!!」

真横の回転ではなく縦軸に回転を行い、頭部から一撃を狙うティオス。重力が合わさっていることもありスピードも勢いも通常のそれを上回っている。

ガンッ

それほどの一撃であっても、シリルを捉えることはできなかった。目の魔水晶(ラクリマ)を使っているシリルには、敵の動きの先を読むことも、瞬時に反応することも容易い。最小限の動きで横にずれた彼は、攻撃が終えた瞬間の敵を狙う。

「ふっ!!」

ただし、体勢を崩すことを第一に考え最小限の動きでいい蹴りで。

ガンッ

「!?」

間髪いれずに攻撃を繰り出したことにより命中するはずだった。それなのに、ティオスは左腕でそれをあっさりとガードすると、そのまま地面に叩き付けた状態になっている右足でシリルの顔面目掛けて蹴りを蹴り出す。

「うおっ!!」

その動きにも彼は反応することができた。ギリギリ視界で捉えることができたゆえに、反応することができた。

ピシッ

(また?)

その時、再びどこかから何か音が聞こえた。それなのに、耳がいいはずのシリルがその位置を把握することができない。

「あと数秒だな」

距離を取ろうとしたシリルの方を見たティオスの顔は笑っていた。それを見た時、彼はここで引くべきではないと感じた。

(何かはわからないけど・・・これ以上時間をかけちゃダメな気がする)

一度間を置こうとしたシリルはそれをやめ、再度攻撃に転じる。対するティオスも、それに真っ向から向き合う。

「いい判断だ。やっぱりお前はあらゆるものに秀でているよ」

そう言った青年はどこか嬉しそうに見える。それが果たしてどう言うことなのか、少年には全くわからない。

ぶつかり合った両者の拳。互いの力は均衡しており、つばぜった状態で固まっている。

「そういえば、さっきの言葉の意味はわかったか?」
「自分のことなのに・・・て奴か?」

小さくうなずくティオス。いつ均衡が崩れてもおかしくない状況なのに、あえてそんなことを聞いてくる彼の狙いが読めない。

「どうせハッタリだったんだろ?あいにく俺はそんなことで揺るがない」

彼の言葉はあくまで同様を誘うためのものだとシリルは考えていた。しかし、ティオスはその回答を聞き、鼻で笑っている。

()()()()みたいだから教えてやるよ。俺の言葉はハッタリでもなんでもない」
「何!?」

ピキピキピキッ

ティオスの言葉と共に次第に先ほどまでの音が大きく・・・止めどなく聞こえてくるのを少年は感じた。

「俺とお前はほぼ同じ力を持っている。だが、決定的に違う点があるんだ」
「違う点だと?」

さらに音が大きくなっていくと、シリルはその音が聞こえてくる場所を次第にわかってくる。そして、その場所から赤いものが流れ地面に落ちていることも。

「俺は数年間この世界でこの時を待っていた。それは準備を万全にするため」

少しずつ地面に溢れるそれの量が多くなっているのを少年は感じていた。さらにはそこから来る異変も。

「お前はまだまだ成熟しきっていない肉体。対して俺は成長も止まり、あらゆるものが伸びきった状態だ」

徐々に狭まっていく視界。それは魔力の使いすぎや体力的な限界ではないことに、少年は気づいた。しかし、それはもう遅い。

「未成熟のお前が戦う上で最も負荷がかかる場所・・・そこはこの戦いで一番最初に限界を迎えるんだよ」

パンッ

その言葉と共に聞こえた音。その瞬間、少年の視界が完全になくなった。




 
 

 
後書き
いかがだったでしょうか。
またギリギリでの一週間の投稿です。
やっと次の展開に進んでいきます。
たぶんここからは展開も早くなると思います。
またよろしくです(*・ω・)ノ 
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