八条学園騒動記
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第五百六十八話 働き手その一
働き手
セーラはせっせと店に出す紅茶やコーヒーのチェックをしていた、そうしつつラメダスに対して言った。
「私も出来れば」
「肉体労働をですか」
「したいのですが」
「クラスの他の方と共にですね」
「そうなのですが」
「お気持ちはわかりますが」
それでもとだ、ラメダスはセーラに恭しく述べた。
「お嬢様はシヴァ家の方です」
「だからですか」
「マハラジャの家の方なのです」
だからだというのだ。
「決してです」
「肉体労働はですか」
「カーストの決まりで」
ヒンズー教の絶対のそれの為にというのだ。
「ですから」
「それはなりませんか」
「はい」
どうしてもというのだ。
「お茶やコーヒーのチェックにです」
「会計ですね」
「そうしたものをです」
是非にというのだ。
「お願いします」
「そうですか」
「ここは連合ですが」
カースト制度のある国ではないがというのだ。
「それでもです」
「カーストのことはですね」
「ヒンズー教徒ですから」
それ故にというのだ。
「どうしてもです」
「生きているのですね」
「そうです」
まさにというのだ。
「あります」
「だからですか」
「はい、ですから」
それ故にというのだ。
「ここは我慢して下さい」
「こうしたお仕事をですね」
「肉体労働ではなく」
「それでは」
「はい、お嬢様はもっと言えばプリンセスなのです」
王女だというのだ。
「それならです」
「肉体労働は、ですか」
「少なくともマウリアではです」
セーラの国ではというのだ。
「しないものなので」
「だからですか」
「されないで下さい」
決してというのだ。
「されるべきお仕事は他にもありますので」
「そちらをですか」
「されて下さい、劇にも出演されますが」
ウィンザーの陽気な女房達にもというのだ。
「それもです」
「本来は、ですね」
「よくありません」
そうだというのだ。
「それもまた」
「やはりそうですか」
「はい、それもです」
どうしてもというのだ。
「本来は」
「何かとですね」
「そうです、マウリアのマハラジャの家には決まりがあります」
「カーストからですね」
「カーストだけでなく」
それに加えてというのだ。
「家訓もあります」
「我がシヴァ家の」
「家訓は法律と同じです」
マウリアにおいてはそうだ、特にカーストが高いと余計にそうなる。この辺りマウリア社会の特性でもある。
「ですから」
「それで、ですか」
「されたくとも」
セーラ自身がそう思っていてもというのだ。
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