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八条学園騒動記

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第五百六十六話 アンの絵その十二

「それでもね」
「嫌われてるかっていうと」
「決してそうじゃなくて」
「何処か憎めなくて」
「愛されてるのよね」
 アンはマルティに話した。
「本当に」
「そうなんだよね」
「いや、いいキャラよ」
「うん、そしてそんな人はね」
「当時も今もね」
「そうそういないよ」
「世の中悪人はいても」
 アンはこうも言った。
「ヤーゴやマクベス夫人みたいな悪人はね」
「そうはいないね」
「どの世界でも千人に一人位の割合で悪人がいるっていうわ」
 こうもだ、アンはマルティに話した。
「サイコパスっていうのかしら」
「ああ、どんな悪事を働いても平気な」
「ヤーゴは歪んでマクベス夫人も罪悪感を感じてたけれど」
 だから手に着いた血のシミを洗い落とそうとしていたのだ、それまでの所業を見れば信じられないという者もいるかも知れないが。
「もう最初からね」
「良心がない人がいるんだね」
「どんな嘘を何度吐いても平気で」
 そしてというのだ。
「どれだけ人を騙しても利用しても悪いことをしても」
「平気な人がいるんだ」
「そう言うわね」
「じゃあヤーゴ達みたいな悪人は稀で」
 マルティはアンの今の言葉を聞いてこう述べた。
「それ以上のサイコパスもだね」
「そうはいないみたいね」
「千人に一人だね」
「もっと確率少ないかしら」
 どんな嘘を吐いても人を騙しても悪事を為しても平気な者はというのだ。
「流石に」
「シェークスピアでも出ないね」
「流石にね」
 それはというのだ。
「契約も破るし」
「悪魔は契約守るよ」
 マルティは悪魔についてはこう述べた。
「というかね」
「悪魔って契約は絶対だから」
「むしろ天使より厳しいね」
「そうなのよね」
「その契約もだよね」
「そうした人は破るわよ」
 どんな悪事も平気な輩はというのだ。
「騙すことだって平気だし」
「悪魔より悪質だね」
「悪魔は契約の抜け目を衝くかも知れないけれど」
 それでもというのだ。
「破ることはしないから」
「だからだね」
「そう、それはね」
 流石にというのだ。
「しないから」
「それでだね」
「もうね」
 それこそというのだ。
「悪魔以上にね」
「そうした人は厄介だね」
「シェークスピア劇の悪人達以上に」
「ヤーゴ達は確かに悪人だけれど」
 それは事実だが、というのだ。
「世の中もっと酷い悪人もいるんだよね」
「十字軍とか異端審問とかね」
 アンはこうした者達の話を出した。
「エウロパのね」
「うん、エウロパ程邪悪を極めた国はないね」
 菅はアンに応えた、連合は悪の話をするとここに落ち着くことが多い。
「本当に」
「そうよね」
「もうその悪事はね」
「十字軍にしろ異端審問にしろ」
「植民地とか侵略とかね」
「悪を極めてるわね」
「シェークスピアもあっちの人だけれど」
 イングランドつまりエウロパの者だというのだ。
「やっぱりね」
「悪と言えばエウロパね」
「まさにそうだね」
「あの連中こそね」
「本当に悪だよ」
「そうよね」 
 こうした話をしてだ、そしてだった。
 三人で今度は脚本の話を詰めていった、二年S1組の文化祭の準備は確かに進んでいた。それは劇だけではなかった。


アンの絵   完


                 2020・4・2 
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