八条学園騒動記
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第五百六十六話 アンの絵その十
「実はね」
「そこも違っているんだね」
「うん、ただね」
菅はこうも言った。
「暴君は血筋に関係ないからね」
「それはその人のやってることだね」
「それでなるから」
だからだというのだ。
「マクベスもリチャード三世もね」
「悪性を敷いて沢山の人を殺したなら」
「暴君になるよ」
「そうなんだね」
「ただこれも史実ではね」
「違うんだね」
「うん、イギリスの暴君といえば」
菅が挙げるその人物はというと。
「ヘンリー八世だけれどね」
「あの人最低よね」
アンが嫌悪に満ちた目できっぱりと言ってきた。
「まさに」
「アンはあの人嫌いなんだ」
「大嫌いよ、浮気して離婚しまくってでしょ」
「それで前の奥さんに冤罪かけて処刑したりね」
「他にもそれは止めた方がいいって忠告した人処刑したり」
「人を処刑することが多い人でお金の使い方も悪かったよ」
即ち浪費家だったというのだ。
「色々とね」
「それじゃあ好きになる筈ないじゃない」
「そういえばイギリスの王様でヘンリーって人少なくない?」
マルティがここでこのことを指摘した。
「その人は八世だけれど」
「この人以降出てないよね」
ヘンリーという名のイギリス王はというのだ。
「確かに」
「それってつまりは」
「うん、どうもね」
「ヘンリー八世の評判が悪過ぎて」
「以後この人の名前の人は王様に即位出来ないみたいだね」
「そうなのね、やっぱり」
「あの王家には今もヘンリーって人がいるけれど」
名前自体は使われているというのだ。
「けれどね」
「王様にはならせてもらえないのね」
「どうも実際にね」
「名前が駄目なのね」
「そうみたいだよ」
実際にというのだ。
「これがね」
「そうなのね」
「とにかくね」
「ヘンリーって名前の人はそれから王様になっていないのね」
「長男さんには絶対に付けていないから」
そのヘンリーという名前はというのだ。
「チャールズさんやウィリアムさんやエドワードさんやジョージさんはいても」
「ヘンリーさんはいないのね」
「ご長男にはね、次男さんにはいるよ」
「普通長男さんが継ぐから」
「結構露骨だよね」
「そうよね、王位を継ぐ可能性が少ない人の名前とか」
「とにかくヘンリー八世が評判悪いことは事実だし」
このことは紛れもない事実であるとだ、菅はアンに話した。
「それでだと思うよ」
「まあね、暴君だしね」
「どう見てもね」
「というかね」
アンは菅と話していてここでこう言った。
「ヘンリ―八世ってね」
「どうしたのかな」
「テューダー朝でエリザベス一世のお父さんよね」
「うん、そうだよ」
その通りだとだ、菅も答える。
「あの人がね」
「シェークスピアはエリザベス一世の頃の人だけれど」
「それでシェークスピアはどうもテューダー朝支持していたけれど」
「その王朝の人が暴君とか」
「皮肉だよね」
「そうよね」
「けれどね」
それでもとだ菅はさらに話した。
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