八条学園騒動記
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第五百六十六話 アンの絵その三
「そうだね」
「そうよね」
「これが人間の心がないとね」
「そう思わないわよね」
「親戚で何かと世話して気にかけた人が倒れて」
菅はアンにある話をした、勿論マルティも聞いている。
「それでどうにかなってる時に」
「その時になのね」
「話を聞いてもそれで、で特に何もしないで」
そしてというのだ。
「お亡くなりになってもお葬式に出ても」
「出るだけまし?」
「その後の。仏教だったからお葬式の後でお食事になったけれど」
参列者達でだ、こうした葬式の行事はこの時代も健在なのだ。
「それでもね」
「それで何かやったの」
「うん、亡くなった人の家族でもないのに上座に上がって」
そうしてというのだ。
「偉そうにしていたのよ」
「何か酷い人ね」
「自分が喪主みたいに振舞ったんだ」
「何もしていなくても」
「そうした人いたんだ」
「また酷い人ね」
「随分お世話になった人なのに倒れても何もしないで」
無反応そのものでというのだ。
「お葬式の時に偉そうにしたんだ」
「上座に上がって」
「呼ばれもしないのにそこに行ってね」
そうしてというのだ。
「喪主みたいに振舞ったんだ」
「それってあれよね」
アンはここまで聞いて話してくれた菅に述べた。
「お葬式のいいとこ取り」
「亡くなった人に何もしないでね」
「それは酷いわね」
「亡くなったことについて何も思わないで」
「悲しいとも残念とも」
「それで偉そうにするだけだったんだ」
「もうそんな人は」
アンは心から思った、そしてその心から思ったことを述べた。
「人の心をなくしてるわね」
「まさに人でなしだね」
「そうよね」
「こうした人でもないとね」
「大切な人が亡くなったら」
「やっぱり悲しいって思ってね」
そうしてというのだ。
「落ち込むよ」
「そうよね」
「落ち込まない人は」
それこそとだ、菅は話を再開した。
「そんな人と一緒だよ」
「そうよね」
「それでその人でなしの人今はどうしてるのかな」
マルティは菅にそのことを尋ねた。
「恩知らずで冷たくて図々しくて尊大でずるい人なのはわかったけれど」
「もう誰からも見放されてね」
菅はマルティにその人物のその後の話もした。
「元々働いてないしそれで尊大で文句ばかり言ってたから」
「ああ、そんな人だと」
マルティも聞いてわかった。
「見放されるね」
「誰からもね」
「それでだね」
「今は家もなくしてね」
そうなってというのだ。
「野垂れ死んだよ」
「そうなったんだ」
「うん、どうしようもないって匙投げられた結果ね」
誰からもそうされてというのだ。
「そうなったよ」
「自業自得かな」
「皆そう言ってるよ」
「人でなしになったから」
「だからね」
それだけにというのだ。
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