八条学園騒動記
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第五百六十六話 アンの絵その一
アンの絵
アンが菅とマルティに見せた絵、それはというと。
彼女の絵で描いたフォルスタッフを中心としたポスターだった、そのポスターを見て。
菅はすぐにだ、アンに言った。
「可愛いね」
「そうした感じにしてみたの」
「フォルスタッフ卿もポスター全体も」
「だからそうし風にね」
「描いたんだ」
「確かにフォルスタッフ卿ってとんでもない人だけれど」
それでもとだ、アンは菅に話した。
「憎めなくて愛嬌あるから」
「その愛嬌を前面に出してなんだ」
「描いてみたのよ」
そうしたというのだ。
「あえてね」
「そしてそれがね」
「正解だったのね」
「そうだったと思うよ」
「正解ね」
「このポスターかなりいいよ」
まさにとだ、菅はアンに話した。
「だからね」
「これでいいのね」
「僕はいいと思うよ」
無表情だが確かな声での返事だった。
「これでね」
「脚本担当としてはね」
「そうなのね」
「後はクラスでどうかだけれど」
「じゃあ聞くわね、けれどね」
「けれど?」
「これアン一人で描いたね」
菅はアンにこのことを指摘した。
「そうだよね」
「ええ、そうよ」
その通りだとだ、アンは菅に答えた。そしてそのうえで彼女は菅に対して落ち着いた顔でこう話した。
「ルビーは今他のお仕事してるでしょ」
「舞台の絵を描いていて」
「だからね」
それでというのだ。
「今はね」
「アンが一人で描いたんだ」
「そうよ」
実際にというのだ。
「私はね」
「じゃあルビーに見せたのかな」
「見せたわ、最初にね」
描いてすぐにとだ、アンは答えた。
「そうしたわ」
「それでルビーはどう言ったのかな」
「最高にいいってね」
その様にとだ、アンは菅に笑顔で答えた。
「言ってくれたわ」
「それは何よりだね、ルビーが言ったら」
それでというのだ。
「いいと思うよ」
「そうなのね」
「うん、後はクラス委員長で舞台も喫茶店も取り仕切る立場のギルバートがどういうかだけれど」「あれっ、そういえばギルバートいないね」
マルティは菅から彼の名前を聞いて述べた。
「そういえば」
「ギルバートならホームルームの時から実家に帰ってるわよ」
アンがマルティのその疑問に答えた。
「何でも親戚の人が亡くなって」
「それでなんだ」
「今はね」
「いないんだ」
「そうよ、っていうか知らなかったの」
「言われて気付いたよ」
そのことにとだ、マルティはアンに答えた。
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