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戦国異伝供書

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第九十話 尼子家の謀その五

「今その様に言ったのじゃ」
「左様ですな」
「そうじゃ、だからな」
「当家はですな」
「尼子家も大内家もな」
「敵とみなし」
「何時かは凌ぎたい、そして」
 そこからさらにとだ、元就は話した。
「倒してな」
「そうしてですな」
「そしてな」
 そのうえでというのだ。
「当家を安泰としたい」
「尼子家も大内家も倒し」
「そしてな」
「家の安泰を守りますか」
「そうしたい、だからまずはな」
「安芸ですな」
「この国を手中に収めたい」
 是非にとだ、元就はこの考えも話した。そうして。
 戦の備えをした、すると。
 元就は志道にこう囁かれた。
「殿、どうもです」
「大内家がか」
「はい、急にですが」
「兵をじゃな」
「向けてくるかと」
 そうしてくるというのだ。
「どうやら」
「左様か」
「どうされますか」
「退ける」
 元就の返事は一言だった。
「その様にする」
「そうされますか」
「大内家の当主殿であるが」
 元就は新しく主になった彼、大内義隆のことも話した。
「あの御仁は文や政はともかくな」
「こと戦においては」
「どうもお好きではなく」 
 そしてというのだ。
「得手でもない」
「だからですな」
「あの方が攻めてこられても」
「大したことはありませぬか」
「間違いなく大軍で来るからこのことは問題だ」
 軍勢の数はというのだ。
「それはな、しかしな」
「それでもですな」
「総大将が戦に不得手であるとな」
「その分付け入る隙がありますな」
「そうじゃ、そこを衝いてじゃ」
 そのうえでというのだ。
「攻めてな」
「そうしてですな」
「一気に退ける」
「そうしますか」
「長く戦うつもりはない」
 元就は戦についての自分の考えも話した。
「戦は長引いていいことはない」
「兵糧も銭もその分使い」
「多くの兵を失い民も疲れさせる」
「だからですな」
「それでじゃ」
 それ故にというのだ。
「すぐに終わらせるぞ」
「大内家との戦は」
「そして尼子家が来てもな」 
 この場合もというのだ。
「やはりじゃ」
「その場合についても」
「すぐに終わらせる」
「籠城はしませぬな」
「この吉田郡山城にじゃな」
「そうしませぬな」
「それだと長引く」
 元就が一番避けたい事態に陥るとだ、元就は自分で指摘した。 
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