八条学園騒動記
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第五百六十五話 歌劇も観てその六
「本当にね」
「いいんだね」
「そうだよ」
こうマルティに話した。
「そうしたものだよ」
「そうなんだね」
「作品全体を理解すれば」
そうなればというのだ。
「台詞も余計に頭に入るし」
「フォルスタッフ卿のそれも」
「いいんだ」
「そうなんだね」
「あらすじはもう完璧に頭に入ってるよね」
「うん、最初から最後までね」
マルティは菅にはっきりとした口調で答えた。
「もうね」
「いいね、じゃあね」
「それならだね」
「このまま作品全体を観て」
そしてというのだ。
「やっていこう」
「それじゃあね」
「そう、それと」
「それと?」
「最後もね」
この時もというのだ。
「覚えておいてね」
「ああ、作品の」
「最後がよかったら」
それでというのだ。
「最高によくなるからね」
「終わりよければっていうね」
「その言葉の通りだから」
「舞台は」
「というかどんな創作でもね。日本の小説家だけれど」
こう前置きしてだった、マルティに話した。
「太宰治だってそうだったし」
「走れメロスの」
「うん、その人もね」
「最後がいいんだ」
「最後の一文がね」
「そんなにいいんだ」
「物凄く印象に残るんだ」
太宰治の作品の特徴の一つである、その文章は読みやすく実にいいものであるが最後の文章が特に印象に残るのだ。
「それでね」
「最後がどうか」
「僕はその太宰の作品読んで思う様になったから」
それでというのだ。
「今回もね」
「そう言うんだね」
「そうだよ、何かシェークスピアの作品って最後がそれでいいかなって作品もあるし」
「そうかな」
「ほら、マクベスなんて」
この作品がとだ、管は例えを出した。
「そうじゃない」
「マクベス倒されて終わりだね」
「暴君が死んで万歳ってね」
「そんな結末だね」
「けれどそれでいいのかな」
菅は半分マルティに半分自分に問う様にして言った。
「果たして」
「っていうと」
「だからマクベスは確かに悪いことをしたけれど」
それでもというのだ。
「王位簒奪して邪魔者は殺していって」
「奥さんと一緒にね」
「そのことは事実だけれど」
「それでもなんだ」
「どうしてマクベスがそうなったのか」
「それがないっていうんだ」
「何かそれで終わるには」
暴君が倒されて万々歳で、というのだ。
「何かが足りない」
「そう思うんだ」
「僕はね」
マクベスという作品についてはというのだ。
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