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八条荘はヒロインが多くてカオス過ぎる

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第二百七十話 神戸に戻ってその十六

「そしてこの度もです」
「お袋は助け出されたんですね」
「そうなりました、そしてそのことを一番喜んでおられるのは」
「やっぱり親父ですね」
「今宵の私のお酒はあの方に捧げたものです」
 僕と一緒に飲んだトカイはというのだ。
「では今宵はお風呂の後は」
「寝られますね」
「はい、朝早く起きましたし」
「四時半でしたからね」
「私は三時に起きました」
「まさか」
「はい、起きてすぐに鍛錬をしました」
 いつもの十一キロの木刀を千回か二千回振ってヒンズースクワットも同じだけするあのハードなものをだ。
「そうしてシャワーを浴びて」
「僕を起こしに来てくれたんですか」
「はい」
 その通りという返事だった。
「ですからヘリの中ではよく寝ていました」
「行き帰りの」
「義和様にお話させて頂く時以外は」
「そうだったんですか」
「鍛錬は毎日欠かさないから鍛錬です」
「だから今日もですか」
「させてもらいました、そして明日も」
 当然といった口調での言葉だった。
「励ませてもらいます」
「そうですか」
「必ず」
「凄いですね」
 僕は素直に感嘆の言葉を漏らした。
「それはまた」
「それが武道です」
「毎日鍛錬してこそですか」
「身に着き心もです」
 こちらもというのだ。
「鍛えられ高みに達するのです」
「そうしたものなんですね」
「ですから今日もです」
 早起きしてというのだ。
「そうさせて頂きました」
「旅行の時と一緒ですね」
「如何なる日でもです」
「鍛錬は、ですか」
「忘れない様にしていますので」
「明日もですか」
「そうさせて頂きます、ただ」
 ここで畑中さんはこうも話した。
「明日は休暇ですので」
「だからですか」
「ゆっくりと休ませて頂きます」
「鍛錬の後は」
「お風呂に入り」
 今の様にというのだ。
「そのうえで」
「わかりました、今日の疲れをですか」
「そうしてです」 
 そのうえでというのだ。
「また明日です」
「学校に行ってですね」
「日常に戻られて下さい」
「日常っていいですね」
「はい、戦いの日々よりも」 
 畑中さんが言われると説得力があった、戦争を経験してきた人だけに。
「そちらの生活の方がです」
「やっぱりですね」
「いいものです、ですから」
「僕もですね」
「日常に戻られて下さい」
「今日からですね」
「日常も色々ありますが」
 それでもというのだ。
「今はです」
「日常に戻ることが大事ですね」
「そうです、では」
「お風呂に入って」
「身体と心を休めお酒も抜いて」 
 実際にお酒はどんどん抜けている、お風呂はこうした時とてもいい。
「そしてです」
「明日学校に行ってきます」
「では」
「はい、今はお風呂に入っています」
 僕は畑中さんと一緒にワインのお酒を抜いた、そのうえでこの日は寝た。僕が十七年生きてきた中で一番長い一日だったけれどその一日がようやく終わった。


第二百七十話   完


                  2020・2・1 
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