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八条学園騒動記

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第五百六十四話 脚本その十

「シェークスピアって凄いってね」
「ああ、そのことだね」
「これだけ面白い名作を残せたから」
 それだけにというのだ。
「凄い人だよ」
「そうだよね」
「正体は言われているけれど」
 この論争はこの時代でも健在である、連合でもエウロパでもその人生はわかっていても正体の議論がまだ続いているのだ。
「それでもね」
「凄い人だね」
「そのことを思わずにいられないよ」
「そうだよね」
「むしろ正体まで今も議論させるとか」
「作家としてかな」
「素晴らしいことじゃないかな」
 その正体についての論争もというのだ。
「色々言われてるからね」
「話題を提供してくれているから」
「娯楽的にも学問的にもね」
「だからシェークスピアは偉大だ」
「そう思うよ」
 そうしたことまでしているからだというのだ。
「正体の議論までね」
「そこまでの作家っていないよね」
「いないよ、謎の覆面作家といっても」
 こう銘打っていてもというのだ。
「実は正体わかるし」
「そうした話はあるね、例えば」
 マルティは菅に自分の専門分野から話した。
「この国だと永井荷風とか谷崎潤一郎とか」
「明治から昭和の文豪だよね」
「二人共ね、この人達にもね」
「ああ、覆面作家だね」
「作者不詳の裏本が地下世界に出回っていたけれど」
 所謂ポルノ小説だ、そうした分野への検閲が厳しかった時代は影でそうした本も売られ読まれていたのだ。
「その作家さん達の中にね」
「永井荷風や谷崎潤一郎がいたんだ」
「そう言われてるからね」
「それも確かに覆面作家だね」
「謎のね」
「けれどわかるよね」
「文章とか作風で」
 作家のその癖でというのだ。
「二人共耽美系だったし」
「そっちの作家さんだったから」
「余計にね」
 そうなるというのだ。
「それでね」
「成程ね」
「まあシェークスピアにはそうした話ないかな」
「当時のイングランドにそうした世界があったかな」
 裏本がある様な場所がというのだ。
「果たして」
「そう考えるとないかな」
「結構際どい表現も使ってるけれど」
 これもそのシェークスピア節での中でのことだ。
「それでもね」
「あの当時のイングランドでそうした世界があったかどうか」
「その時点でね」
「シェークスピアはそうしたことはしていなかった」
「そうじゃないかな」
「していても面白かったかな」
「そう言うと読んでみたいね」 
 シェークスピアのそうした作品もとだ、二人で話してだった。菅もマルティもウィンザーの陽気な女房達について学び舞台に向かっていた。


脚本   完


                  2020・3・16 
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