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ロックマンZXO~破壊神のロックマン~

作者:setuna
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第三十一話 モデルVの正体

ヴァンはどことなく不貞腐れたような表情でテーブルをトントンと指で叩いていた。

エールに髪を弄られている同じ立場のジルウェも苦笑しつつも、久しぶりに見られたヴァンの年相応な表情にホッとしていた。

今まで思い詰めた表情を浮かべることが多く、最後にヴァンが笑ったのは何時だったろうか。

プレリーから一つ目のデータディスクの修復が完了したので、部屋に来て欲しいと言われたのだが、ヴァンが部屋に入室した途端にヴァンの髪が痛んでいることに気付いて椅子に座らされた。

「おい…プレリー…まだか?」

腰にまで届く金髪を触れられて落ち着かないヴァン。

この髪はモデルZXのように髪を模したコード…オプションパーツではなく、ヴァン本人の髪が変化した物なのだ。

モデルOと一体化した影響なのか、髪は例え切られようが焼かれようがすぐに元に戻ってしまう。

一度特訓中にエールに髪を斬られても一瞬で元通りになった時は流石にエールは驚いた。

「後少しだからジッとしてて…」

ヴァンの嫌そうな視線にも気に掛けず、プレリーは微かに水分を含んだヴァンの髪を丁寧に梳き、一本一本毛先まで真っ直ぐに伸びるまで櫛を動かして一つに纏めて整える。

「何かアタシだけ疎外感を感じる…」

一人だけショートヘアーのエールはジルウェの髪を弄りながらも何となくだが、疎外感を感じていた。

「そんな良いもんじゃないぞ…動く時に邪魔だし、髪を切ってさっぱりしようとしてもすぐに再生するし…モデルOのオリジナルは何で髪が長いんだよ。」

「そんな風に言わないで…それにしてもやっぱりヴァンは人間…ヒューマノイドだからか、髪質は私やジルウェさんとは全然違うわ」

プレリーとジルウェはレプリロイドのために髪は特殊な繊維で出来ているのだが、やっぱりヒューマノイドの生まれ持った髪とは違うのが分かる。

そして“お兄ちゃん”の髪は自分達と比べても特殊な繊維で出来ていたが、やはりヒューマノイドの髪とは違うのだ。

「そんなのどうでもいいよ。どうせミッションで乱れるし」

「身嗜みには気を配れって前に教えたろ?」

「それ、運び屋時代の話だろ?俺はもう…運び屋じゃないし戻れないし…」

ジルウェの注意にヴァンはそれだけ言うと顔を逸らした。

「でも少しは大事にしたら?あなたは嫌かもしれないけど、とても綺麗な髪なんだもの」

「そんなこと気にしてたらろくに動けなくなるだろ…それに俺の髪よりプレリーの髪の方がずっと綺麗じゃないか」

「え…?」

「「…………」」

部屋が沈黙で支配される。

エールとジルウェも色気より食い気のヴァンがこのような言葉を言ったことに目を見開いていた。

「ん?何だ?俺、何か変なこと言ったか?」

「「いいえ、何も…」」

「…?それよりプレリー、早く話を聞かせてくれよ」

どことなく顔が赤いプレリーにヴァンはここに呼んだ理由であるデータディスクの内容を語り始めた。

「コホン…一枚目のデータディスクはモデルVの正体についてのレポートよ…数百年前の戦争の時…世界の全てを支配しようとした一人の男がいたの。彼は野望を果たすべく、宇宙にラグナロクと呼ばれる巨大な要塞を作り、自らもその一部となって融合して…お兄ちゃんに戦いを挑み…そして敗れたの。」

「それが以前プレリーが言っていたプレリーのお兄さんの最後の戦いか」

プレリーが話してくれた昔話で、プレリーの“お兄ちゃん”が最後の戦いで消息不明となったと言っていたが、最後の戦いがそれなのだとヴァンは悟った。
 
「ええ、お兄ちゃんが一部と融合した男を倒したことでラグナロクは崩壊して、その破片は流れ星となり世界中に降り注いだ…その時の光景は私も覚えているわ」

「それじゃあ、モデルVは…」

モデルVの金属部分の基となった物に気付いたエール。

「そう、その男の意志が宿ったラグナロクの破片…それがモデルVだったのよ。」

それを聞いたヴァンは嫌な予感を感じた。

降り注いだ破片が一つだけとは限らない…もしかしたら…。
 
「そしてお姉ちゃんはモデルVに対抗するためその研究データを基に、お兄ちゃんを含めた英雄達の力を収めたライブメタルを作って…」

「作って…その後は?」

「分からない……このディスクの内容はここで終わっていたから…二枚目に続きがあるのかもしれないし…」

ヴァンが続きを促そうとするがプレリーの表情は暗く、首を横に振った。

「そう…なんだ…ねえ、モデルX、モデルZや他のみんなもプレリーのお姉さんのこと知らないの?」

「…ごめん、何も覚えていない…僕らが作られた直後の記憶データは消されているんだ…」

「俺も初代司令官については人間であり、俺達を作った存在であることしか知らない…後は俺達全員が感覚的にあいつの人となりを覚えているくらいだ」

エールの問いにモデルXが申し訳なさそうに言う。

一番初代司令官との繋がりが深いプレリーの“お兄ちゃん”が基となったモデルZでさえ感覚的にしか覚えていないと言う。

これでは他のライブメタル達の答えも期待出来ないだろう。

「残るデータディスクの修復を待つしかないってことか」

「ええ、でもお姉ちゃんはきっとどこかで生きてる…私はお姉ちゃんを信じるわ…お姉ちゃんならきっと…最後の最後まで諦めたりなんてしないだろうから」

「司令官…」

ジルウェはそれを聞いて、本当にプレリーは強い人だと思う。

本当なら今すぐにでも初代司令官の捜索に行きたいだろうに。

「…強いなプレリー」

「ありがとう…でもヴァン…あなたのおかげよ」

「え?」

「エリアFで私がお姉ちゃんのことでショックを受けていた時、あなたが言ってくれたじゃない…“最後まで諦めるな”って…あの言葉のおかげで私…最後まで諦めずに頑張ろうって思えたのよ。ありがとう、ここまで来られたのもあなたがいてくれたおかげだわ」

「プレリー…そうか…」

「……ねえ、ジルウェ…アタシ達、思いっきり邪魔じゃない?」

「そうだなぁ…退散するか…」

見つめ合う二人に気付かれないようにジルウェとエールは部屋を後にしたのであった。

「でも、ジルウェ…何かあの二人ってお似合いじゃない?」

「ヴァンと司令官がか?まあ、ヴァンも無茶するような奴だから…あいつには司令官みたいな包容力のある人が良いのかもな」

「でも、プレリーのファンがうるさそうだよ」

エールもこのガーディアンベースに所属してからプレリーにはファンがいることは知っている。

流石にロックマンであるヴァンに難癖をつけるような者はいないと思うが…。

「まあ、とにかく俺はヴァンの幸せを祈るか。エールも早く良い人が見つかると良いな」

「むっ…………ジルウェの馬鹿」

鈍感な先輩に小さい声で悪態を吐くエールであった。

そして残されたヴァンとプレリーは、エールとジルウェがいないことに気付いた。

「あれ、先輩とエールがいないぞ…せっかくみんなで食おうと菓子を持ってきたのにな」

取り出した袋にはキャンディ、一口サイズのチョコレート、スナック菓子がたんまりと入っていた。

「ヴァン、それって遊園地のクレーンゲームの景品よね」

「まあ、腐ることはなくてもあのまま放置しとくのも勿体ないからな。どうせなら俺達の腹に収めようと」

「スナック菓子…初めて」

スナック菓子に興味津々なプレリーにヴァンは一つプレリーに差し出した。

「スナック菓子食べたことないのか?」

「飴やチョコレートは食べたことはあるけど、スナック菓子は初めて食べるわ」

サクサクとスナック菓子を食べていくプレリー。

ヴァンはチョコレートを口に運びながら、後でサルディーヌに分けてやる分を考えていた。 
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