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八条学園騒動記

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第五百六十三話 準備に入りその十一

「入れ墨入れていてヤクザ屋さんみたいな恰好をしてね」
「入れ墨か」
「しかも変なイヤリングまでして」
「高校生で入れ墨か」
 タムタムは顔を強張らせてマルティにこう返した。
「もうその時点でな」
「おかしいね」
「もう入れ墨入れるなんてな」
 この時代の連合ではだ。
「それぞれの民族の風習でないとな」
「ヤクザ屋さんとかチンピラのものだね」
「犯罪者の前科の証明に入れるしな」
 悪質な者にはそうするのだ、犯罪者の人権を考慮しない連合ならではのやり方だとエウロパでは批判されている。
「そうしたな」
「質が悪い人の証明みたいなものだね」
「本物だな」
「自分で自慢していたよ」
 ペーパータトゥーでなく、というのだ。
「大金はたいて彫ってもらったって」
「そうか、本当にそれだけでな」
 タムタムは確信を以て言い切った。
「そうつがどんな奴かわかる」
「反社会的人物かな」
「高校生でもな」
 まだ学生だが、というのだ。
「ヤクザだ」
「そうした人だね」
「ヤクザなんか店に採用するとな」
「駄目だね」
「実際に一日で、だったな」
「もうどうしようかって話になって」
「犯罪やらかしてだな」
 マルティは先程の話を思い出しつつ述べた。
「いなくなったな」
「そうなんだ」
「本当にな」
「そんな人は雇うべきじゃないね」
「だからヤクザだぞ」 
 入れ墨を入れていることからだ、タムタムは言うのだった。
「そんなことは常識だろ」
「実際本当に地域でも最底辺の最底辺の」
「ドキュン高校か」
「その中でも特にだったから」
「ペーパーテストは名前だけ書いてか」
「面接は会って」
 それだけでというのだ。
「終わっていたんだ」
「言ったら何だが馬鹿なことしたな」
「その三人以外は皆まともだったけれど」
「というか三人も変なの入れたな」
 タムタムは三人以外はという言葉をそのまま逆に言った、三人しかではなく三人もと言ったのである。
「それは問題だろ」
「そうなるんだね」
「ああ、しかしな」
「しかし?」
「一日でいなくなったのはよかったな」
 その特に悪かった輩がというのだ。
「まだな」
「流石に一日でどうしようかってなったしね」
「それでだな」
「うん、今は教訓としてね」
「店でもか」
「ちゃんと試験を見て」
 そしてというのだ。
「面接でも見ているよ」
「それが常識だな」
「それで常識に戻ったら」 
 すると、というのだ。
「今はおかしな店員さんもいないでね」
「平和にやっていってるか」
「凄くね」
「それは何よりだが」
「常識だね」
「幾ら何でも入れ墨は駄目だ」
 それを入れている様な人間はとだ、タムタムは言った。そのうえでマルティにこんなことも言った。
「フォルスタッフも大概な人だが」
「入れ墨は入れていないね」
「あれで品性もあるからな」
 そもそも騎士という貴族階級にある、女好きで酒好きで無反省で図々しい人物だが人として備えるものは備えているのだ。
「だからな」
「入れ墨なんてないね」
「そうだ、だからだ」
 それでというのだ。
「それは論外だ」
「そういうことだね」
「入れ墨にはそれだけのものがある」
 タムタムは言った、そしてだった。
 鋸を使っていった、それは職人の動きには到底及ばないがそれでも中々のものであった。マルティと共にそれは真面目な人間のものだった。


準備に入り   完


              2020・3・9 
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