八条学園騒動記
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第五百六十三話 準備に入りその九
「二人共ね」
「肩叩きしたか」
「うん、短期じゃなかったけれど」
「そうしたか」
「いや、本当にね」
「その二人も酷かったんだな」
「何かとね」
そのドキュンだけでなくというのだ。
「そうだったよ」
「人は忙しい時でも見るべきだな」
「それがうちの家がわかったことだよ」
「そうだな」
「もうドキュンとかね」
「どうにもならない奴はだな」
「面接の時点で」
それこそというのだ。
「落とすべきだね」
「筆記試験はしたか」
「それ名前書けたらね」
「合格にしていたか」
「うん、それもね」
しっかりと、というのだ。
「そうしていたか」
「それは駄目だな」
「余計にだね」
「どうせそんな連中は筆記試験も出来なかったな」
「そのドキュンも後の二人も」
「やっぱりそうか」
「それでも本当にその時少しでも一人でも多くの人手が必要で」
そうした極めて多忙な状況だったからというのだ、マルティはフックにその時のことを思い出しつつ話した。
「猫の手でも借りたくて」
「文字通りのか」
「実際の猫の手は借りれないしね」
「あれは邪魔なだけだ」
タムタムは猫の手にはこう返した。
「本当にな」
「うち犬いるけれど」
「犬は番犬になるな」
「うん、いるだけでね」
「そうだな、しかし猫はな」
「忙しい時は」
「邪魔なだけだ」
タムタムはまたこう言った。
「本当にな」
「そんなものなんだ」
「そうだ、うちは猫が三匹いるが」
「邪魔なんだね」
「忙しい時にこそ起きてきてな」
猫はよく寝る生きものである、日本語の猫という言葉の語源は『寝る子』から来ているという説がある程だ。
「手を出してきてな」
「ああ、前足だね」
「仕事の邪魔をしてくる」
「そうなんだ」
「だからだ」
「猫の手も借りたいっていうのは」
「あれはそこまで忙しいということでだ」
そうした例えで、というのだ。
「実際にはな」
「猫の手は邪魔なものなんだ」
「あんな邪魔なものはない、邪魔過ぎてだ」
それでとだ、タムタムは話した。
「一時作業を中断してな」
「そうしてなんだ」
「猫を持って空いている部屋に放り込んでだ」
「ああ、そこに閉じ込めるんだ」
「作業が終わるまでな」
それまでというのだ。
「そうしたくなる」
「そんなものなんだ」
「それが猫の手だ」
それだとだ、タムタムは話した。
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