八条学園騒動記
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第五百六十三話 準備に入りその一
準備に入り
文化祭前になると学園全体が文化祭モードになった、それこそ幼稚園から大学までが文化祭一色となった。
無論高等部も同じだ、マルティはクラスで劇の小道具を造りつつこんなことを言った、その手には釘とトンカチがある。
「もうね」
「もうって何だ」
「いや、こうして小道具痛食ってるとね」
こうタムタムに返した。
「文化祭だなってね」
「思うか」
「それに入っているって」
「そうだな、俺もだ」
タムタムも小道具を造りつつ応える、彼は鋸を使っている。
「そう思う」
「そうだよね」
「作業をしているとな」
「うん、けれど僕は今回特にね」
「劇で主役だからか」
「余計に意識しているよ」
文化祭、それをというのだ。
「本当にね」
「やっぱりそうだな」
「フォルスタッフやるんだね」
「ウィンザーの陽気な女房達のな」
この作品のとだ、タムタムも答えた。
「やるな」
「主役をやるなんてはじめてだから」
「緊張もしているか」
「意識していてね」
そのうえでというのだ。
「本当に、出来るかな」
「失敗してもいいだろ」
タムタムはマルティにこう返した。
「別に」
「いいんだ」
「失敗しても誰かが死ぬのか」
「それはないよ」
「罰金でも取られるか」
「それもないよ」
マルティはフックに答え続けた。
「別にね」
「ならいいだろ」
「失敗しても」
「何もならないならな、失敗を恥と思うこともな」
これもというのだ。
「笑いたい奴は笑わせておけばいい」
「大きなことを言うね」
「笑う奴は失敗しないのか」
タムタムは強い言葉を出した。
「そもそも」
「そんな人はいないね」
「そうだろ、だからな」
「失敗してもなんだ」
「命関わっているんじゃないんだ」
それならというのだ。
「いいんだ、思いきりやれ」
「そう言われると気が楽になるね」
「いざという時は思い切りが大事だ」
「それフランツにも言ってるのかな」
「野球の時だな」
「そうなのかな」
「ああ、よく言っている」
実際にとだ、タムタムはマルティに答えた。
「実際にな」
「やっぱりだね」
「あいつは天才と言っていい」
ピッチャーとして、というのだ。実際にフランツは将来プロ入りが確実視されている程の逸材である。
「しかしな」
「言わないと駄目なんだ」
「あいつは結構頭に血が上る」
「そうなんだ」
「マウンドだとそうだ、打たれるとへばらずにな」
「怒るんだ」
「それでボールが乱れる」
そうなるというのだ。
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