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八条学園騒動記

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第五百六十二話 劇の題目その七

「もう普通にね」
「太ってる風に見えるわね」
「実際に舞台でもそうしてるし」
「舞台のフォルスタッフ卿は」
「歌劇の方でもね」
 ヴェルディのそれでもというのだ、この場合はファルスタッフという名前で作品名もこのタイトルになっているがストーリーはほぼ同じだ。
「そうしているから」
「いいのね」
「というか舞台だと普通にやってるでしょ」
 今度は七美がコゼットに話した。
「メイクで」
「そういえばそうね」
「ええ、ただね」
「ただ?」
「シェークスピアの作品って本来はね」
 七美は真剣な顔で話した。
「男の人だけで上演するのよね」
「ああ、歌舞伎みたいに」
「今の歌舞伎は女の人も演じるけれど」
 時代の流れでそうなったのだ、その為市川團十郎や松本幸四郎といった名代も女性が継ぐこともある。
「昔はそうだったし」
「それじゃあ本格的にしたら」
「女の子抜きになるのよね」
「今時そんなの気にしなくていいよ」
 マルティは言った。
「別に」
「そうよね、ただ今気付いたけれど」
 七美はそのマルティに言った。
「あんた痩せたわね」
「うん、実はね」
「前は太ってたのに」
「前の体形だったらそのままフォルスタッフだったかな」
「というか今も出来そうね」 
 メイクをすればというのだ。
「そのまま」
「じゃあ僕が主役かな」
「やってみる?」
「皆が言うなら」
「決まりかしら、主役は。けれど」
 七美はマルティにあらためて言った。
「あんたまたどうしてなのよ」
「痩せたかだね」
「気付いたら痩せてたけれど」
「部活で減量したんだ」
「柔道部の?」
「うん、サンボ部でもね」
 こちらの部活でもというのだ。
「階級落とすこと決めて」
「減量したの」
「二十キロ減らそうとしたら」
 それでというのだ。
「この体形になったんだ」
「お腹へっ込んだの」
「ただ体重は減っても」
 それでもとだ、マルティは自分から話した。
「実は筋肉はついたから」
「かえって」
「こうなったんだ」
「今みたいになったの」
「脂肪はすぐ減ったね」
「それで脂肪の分の体重は」
「案外軽いからね」
 こちらはというのだ。
「実は」
「そうよね、脂肪はね」
「だから脂肪がなくなって」
「二十キロ分?」
「そんなに減らなかったんだ」
「その分筋肉がついて」
「そうなってね」
 そのせいでというのだ。
「目標まで減らせなかったよ」
「そうだったの」
「残念ながら」
「脂肪は落ちると」
「かえって筋肉がつくよね」
「ダイエットでも身体動かしてると」
「それで脂肪はね」
 どうしてもというのです。 
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