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リリなのinボクらの太陽サーガ

作者:海底
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越冬のダイヤモンド

 
前書き
こんなに遅くなるなら、もうちょっと描写を減らした方が良いかもしれませんね。 

 
ミッドチルダ北部 地下水路

避難所を見てるからわかっちゃいたけど、水路はあちこち老朽化していた。壁に強い衝撃を与えたら水が入ってきて崩壊するかもしれないから、気を付けて行こう。

「ん、戦闘はできるだけ回避?」

「ここを制圧しに来たんじゃないからね。目的地はもっと先で、二人しかいないんだから力は温存していこう」

ただ、真っ暗な通路に赤い非常灯のみがポツポツと点いて、ぼんやりとしか見えない暗闇になっているのは、無駄にホラー仕様だった。フィクションでも怖い演出だったそれが現実になると、ここまで背筋がゾッとするものなのね……。

『暗がりに紛れてアンデッドがゆっくり……ゆっく~り近づいて……』

やめて、イクス。それ怖いから。

とはいえ、ここにいる敵は想定以上に少ない……というか少な過ぎた。いるのはスライムが基本だがチラホラ見かける程度、マミー、グールは隅々まで探せばようやく一体見つかる程度という……。他の奴はどこかに移動したのかな? 移動したのならどこへ?

どことなく不安要素は漂うが、今回はスルーすれば全く戦わなくていいので、時間も考慮してここは突っ走ることに専念した。という訳で現在、水道管に沿って薄暗いが直線だけの通路を体力の都合も考えてそこそこの速度をキープして走り、気付けば大体2時間ぐらい経った。

『時速50㎞付近で走るペースを2時間維持できる辺り、シャロンの体力……あと肺活量って本当にすごいですね。アスリートかマラソンランナーになれば殿堂入りするんじゃないですか?』

「これはイクスの強化魔法込みだから、アスリートの人から見ればドーピングしてるようなものでしょ。素だけで走ったら時速20㎞に届くかってぐらいだし」

『20? いや、あなた普通に30は超えてるんですが……』

「ところで、20と30って数字は女性にとって妙に存在感があるよね」

『今は歳の話はしてませんよ。というかそれ言い始めたら私はどうなるんですか?』

「永遠の15歳?」

『私は聖剣使いではありませんけど見た目より年齢若干盛ってくれたんですねありがとうございます。とにかく話を戻して……強化魔法を使っても体力は変わらないので、ペースが落ちないのはシャロン自身の力ですよ』

「まあ……ありがと」

「ん、ずっと気になってたんだが、シャロンは昔から体を鍛えてたのか? その体力もだが、戦士でもスポーツ選手でも無いのに身体能力が常人よりはるかに高い。流石に何もしていないってことは考えられないが……」

「一応、アクーナにいた頃から何も特別なことはしていないはず。アクーナだと一抱えほどあるサイズの墓石を持ち上げては細かい場所を丁寧に掃除したり、人間サイズの水瓶を毎日10個以上、一里の距離をこぼさないように往復で運んだり……」

「『…………』」

そういう訳でアクーナでは水が貴重だったから、鍋物料理は贅沢品だった。サバタさん達が来た時の鍋は私なりのおもてなしだったのだ。まあ、クリアカンにはあった水道がアクーナまで引かれてなかったから、別の水源から汲み上げるしかなかったのだが……この辺を突っつくと今の次元世界で問題になっている差別意識などの方向に話が発展するのでここで切り上げておく。

「あと、サン・ミゲルだと正門の修理のために石や材料を運んだり、時計塔の補修に登ったり、割れたり壊れたりしたタイルを新しいのに取り換えたり、図書館の本の整理や虫干しの手伝いをしたり、皆のご飯を用意したり……」

「ストップ。ちょっとストップだ、シャロン」

「ん?」

何故だろう……ケイオスが若干呆れた目を私に向けていた。イクスも精神世界から、うわぁと言いたげな感情のこもった顔を向けている。何かおかしなことでも言っただろうか?

「えっとな、シャロン……この話はここまでにしよう」

「なんで?」

「シャロンの身体能力が妙に高い理由はもう十分わかった。あぁ、そんだけ働いてれば体力ぐらい付くって……」

「はぁ……まあ、いいけど」

思えば私、いきなり異世界で暮らすことになった経験は他人より多いのだろう。全然嬉しくないけど。暇になれば異世界レビューでも書いて、その世界の住みやすさとか点数で表してみようかな?

『必要に駆られたせいでもありますが、シャロンがやたら多芸なのは色々やってたからなんですね。他にも裁縫や語学などもやってますし……もし私がまだガレアを収めていた時代にシャロンがいれば、皆の相談役として手厚く迎え入れていたでしょう)』

「相談役って……」

『嫌でしたか?』

「ううん、相談役が嫌って訳じゃない。ただ、ベルカ的に弱者は上官として認めない感がありそうっていうか、部下の奇襲を返り討ちにできるガチムチな体格を持ってないとダメそうっていうか……多分、私のようなのは皆受け入れないだろうなぁって思って」

『いや他国はともかく、ガレアはそんな下剋上上等の国では……』

「本当にそう言い切れる?」

イクスと出会った戦艦に残されていた日記や今まで彼女から聞いた話を思い返した所……ガレアもあながち否定できないように感じた。イクスもほぼ同じような考えに至ったらしく、見えないけどふっと彼女の目元に影が差したような感じがした。

『スイマセン、ガレアも十分ベルカってました』

ベルカが修羅とほぼ同じ意味扱いな件。そう考えると、下剋上で有名な日本の戦国時代はよく時代として成立できたなぁと思う。阿修羅系剣士だらけの日本を平定して長い安寧の時代を構築した徳川は、本当に尊敬に値する。

『おや? シャロンって実は江戸時代リスペクトしてます?』

「リスペクトしてるつもりはないけどね。でも指揮官としての目標は、柳生但馬守宗矩さんと松平信綱さんだから……これってリスペクトしてると言えるのかなぁ」

地球の日本、江戸時代・徳川三代将軍、徳川家光。この時代にいた傑物で“鼎の脚”と呼ばれる方々。一応、春日局さんも忘れてはいないけど、今回の話には関係ないので置いておく。

『指揮官の目標、ですか?』

「うん。特に柳生但馬守宗矩さんは二つの意味で目標にしてる」

『二つ?』

「一つは今言ったように指揮官、宰相として大局を見渡せる能力。もう一つは……心の平定」

「心の平定?」

「私の中には、気を抜けば私の精神を一瞬で飲み込むほどの強い負の感情……憎しみ、トラウマ、そして報復心がある。平時は世話になってきた人達のおかげで抑え込めているけど、それが何かの拍子で発露した場合、怒り狂って暴走したり、冷静さを失ったり、恐怖で動けなくなったり、自棄を起こすなどの異常をきたすと思う」

「ん……マスコミに迫られた時、シャロンはトラウマが発露して動けなくなっていた。その異常の片鱗は既に見られていたか」

「緊急時や戦闘中にそんなことが起きれば、きっと取り返しのつかないことが起こる。でも報復心とは一生付き合うものだから、せめて負の感情に飲まれないようにはしたい。だから精神を鍛えるにはどうすれば良いかを考えた結果、今まで読んだ本から“兵法家伝書”にたどり着いた。あの本には今の私に……ヒトが成長するために必要な要素が全て込められてると思う」

元々二刀流使いの祖として学ぶことがあると思って宮本武蔵著“五輪書”を読み、そこから同じ時代にいた剣聖、柳生宗矩の著書“兵法家伝書”に興味を示したのが読んだきっかけだった。二刀流がどういう形で有利になるかは状況にもよるので何とも言えないが、一方であの本には剣以外の視点でもためになる事ばかり書いてあった。流れで二刀流を使っていたが私に合ってたのは……柳生さんの考え方だった。

平常心をもって一切のことを為す人。これを名人と言うなり。報復心に抗う方法は、偉人の剣聖から学んだ。それだけの話だ。

「偉人の在り様を尊び、自らを高みに至らすための礎とする……。それが本来の歴史を学ぶ意義……彼らの意志を受け取ることなのに、今の時代でオリヴィエは……」

ケイオスが今思い返しているのは聖王、オリヴィエ・ゼーゲブレヒトのことだろう。ケイオスは彼女を殺めたけど、それが本意ではなかったのはわかっている。彼女が死ななければならなかったのは、彼一人の責任じゃない。時代が……彼にそうさせたんだ。

そして、時代と言えばもう一つ……要となる物がある。次元世界じゃ4年前のファーヴニルの目覚め、ニダヴェリールの消滅。それに伴って起きたエネルギー資源不足。その中心となる物質……。

「魔導結晶……それがなぜ、あんな所に?」

通路を走りながら色々話していたら、途中でガラス張りの海底トンネルに入り、そのガラスの外の海底で私達はこの……こぶし大程度の小ささだが赤く発光する結晶が所々に生えている光景を目の当たりにした。量だけで言えば大したことないが、これはこの世界に魔導結晶が自生していることを証明していた。

「あれ、本物?」

「うん、ずっとニダヴェリールで見てきた私が見間違えるわけがない。色が違うのは世界が違うからか、作られた過程が違うからか……いや、そんな事よりどうしてこんな海の底で魔導結晶が生成されている? ミッドチルダの魔導結晶はもう採りつくしたからこそ、ニダヴェリールや他の世界から奪ってくるしかなかったはずなのに……」

そう、ミッドで調達できるならニダヴェリールの大地があそこまで凌辱される必要は無かった。必要なのに枯渇していた資源だから、管理世界の人は我先にと奪いつくした。それがここで復活したとなれば、何が起こるか想像に難くない。確実に彼らは掘りつくすだろう。ここで無くなっても他の場所にはまだあると思い込み、それこそミッドチルダという星の隅々、地下どころか内部まで探し出し……あ。

「そうか……ファーヴニルだ……。ミッドチルダにファーヴニルが封印されたから、星が封印を守ろうとして魔導結晶が生み出されるようになった……!」

『ファーヴニルが封印された土地では魔導結晶が生成されるとなれば、封印を維持する力の価値は恐ろしいことになります』

「ん、管理局や管理世界の人間にそれを知られてしまえば次元世界のどこにいても、シャロンは狙われる。この世界に……安住の地は無い」

「元よりそれがわかってるからこそ、世紀末世界に帰ろうとしてるんだけどね。でも……もし、それが叶わなかった場合、私は……」

心が絶望に濡れ、この身を闇に染め上げることも、厭わなくなるだろう。そうなったら私はもう私じゃなくなる。いるのは別の何かだ。

『(やはり……危ういですね。もし……シャロンに最悪の結果が訪れそうになったら、私は冥府の炎王としての力を振るわねばならないでしょう。その力を向ける相手が、ヒトにとっての真の敵であればよいのですが……)』

「ん……封印するからシャロンが狙われるのなら、いっそ倒した方が良いんじゃないか? その方が後腐れなくスッキリできるだろうし」

「確かにその通りなんだけど、生命の原種である絶対存在(エターナル)には生も死も無いから倒せない。世紀末世界の人達でさえ、封印するしか対処法がない化け物なんだ」

『生も死も無い……原種……? それってメソポタミア神話のティアマト神みたいなものですか?』

「言われてみれば、生命の母とか色んな要素が似てるね。まあ、あんなのが出てきたら今の人類に太刀打ちできるとは思えないけど」

というかこの世界の地球の絶対存在(エターナル)って、本当にティアマト神かもしれない。そもそも絶対存在って何なんだろう? 原種、生命の母、系統樹の根幹。表現は色々あるけど、その大地に生命が存在することが彼らの存在を意味するのなら、命のある惑星ごとに必ず一体いることになる。世紀末世界でも地球にはヨルムンガンド、月にはヴァナルガンドがいた。じゃあもっと広大な次元世界ではどうなのか……例え無人世界でも命が存在しているなら……文字通り各世界ごとに一体存在しているのかもしれない。

「ミッドチルダにはファーヴニル以外にも絶対存在がもう一体いる、なんてことにならなければ良いけど……」








「おぉ、出口だぁ……!」

魔導結晶を見つけてから更に走り続けて、ようやく出口の扉が見えてきた。ずっと赤くて薄暗いホラーな通路を長時間まっすぐ走ってきた訳だから、永遠に出られないんじゃないかという不安に苛まれて、自分の思った以上にメンタルが疲弊していた。というか子供なら絶対チビるような場所なんだから、ハッキリ言ってこの通路は二度と使いたくない。

「ん、もう一回通らないとシェルターに帰れないんじゃ?」

「そうなんだけど……! 陸路で離島まで来れたんだから便利な通路だとは思うけど……! 次に通る時は最低限灯りを改善してほしい……」

もしくはどこぞの長い梯子を上る時みたく、主題歌か何らかのBGMでも流してほしい。もう一回通れって言われたら、絶対気が滅入る。しかし移動時間を考えると、それもあまり有効とは言い難い。現に移動しただけで、日の光が沈みかける時間帯になっていた。

「やっぱり移動時間は早急に解決すべき問題だ。これじゃあ拠点攻略やミッションの度に、移動だけで大半の時間が潰れる。効率や体力節約の面でも何とかしないといけない」

スキップトラベルみたいなことが出来れば良いんだが、そんな都合の良いシステムが現実で出来る訳も無い。

「車やバイクといった乗り物を使うのは?」

「無理。酔う」

「聞くだけで嫌な顔をするって、そこまで酷いのか。酔い止め薬を試したことは?」

「あるにはあるよ。でも意識がボーっとするから、反応が遅れやすくなる」

「それは薬の性質上、仕方が無い」

『転移魔法か転送装置はどうですか?』

「どうだろう……多分、酔うかもしれない。次元世界に行く時、ザジさんの転移魔法で移動中に吐いたし……」

そういやあの時の吐しゃ物はどこへ行ったんだろう? どことも知れない場所に落ちたならまだしも、人にかかってしまった場合はホントごめんとしか言いようがない。

『う~ん、これは相当ですね。とはいえ他人任せでは酔うけど、自分でやった場合は平気というパターンかもしれません。シェルターに戻ったら一度、運転や転移魔法を試してみませんか?』

運転はともかく転移魔法かぁ……世紀末世界じゃ、転移は頻繁に使われてたっけ。おてんこさまは言わずもがな、ザジさんはひまわり娘の修行で使えるようになったらしいし、サバタさんも暗黒転移を多用してたし、使い手は結構いるんだよね。いざという時の切り札にもなるし……使って平気そうなら私も覚えてみようかな。

「ただ、次元世界で転移魔法を覚えることに関しては少し気を付けた方が良いかも」

「なんで?」

「社会の性質上、転移魔法の使用は厳格にせざるを得ないんだ。例えば現政権に不満があったり、クーデターを目論む人が、国のトップや政治家、要人のいる場所に一瞬で転移できるとしたら、どうなると思う?」

「間違いなく暗殺するな」

「要は国民の怒りを買えば皆が殺しに来る訳で、見方を変えればむしろ良い薬になるかもだけどね。とにかく転移魔法を使えるなら、その気になれば総理大臣や大統領だってぶった斬れる。だから管理局法でも転移魔法の使用許可はかなり厳格に決められていて、局員は都度申請が必要なんだとか」

「ん、言われてみれば思い当たる。転移魔法を使える魔導師は割といるが、管理局員が使う所は滅多に見ない。元々使えたが管理局員になってから一度も使ってないという話もよく聞く。しかし転移装置なら次元航行艦に搭載されてるし、どこにでもあるんだが?」

「そりゃ転移装置はトンネルや飛行機と役目は一緒だもの。行く場所がわかっていれば、警戒する必要も無いでしょ。転移魔法は行く場所が使い手の意思次第でいくらでも変えられるから、警戒度が桁違いになるのも当然の話だよ」

故に転移魔法を覚えるなら、管理局には知られないようにしておくべきだろう。いざという時に備えて……。

さて、話を戻してここはかなり北に寄った土地だ。おかげで空気がひんやり冷えて、エクスシア・ドレスではかなり肌寒く感じる。はぁ~しまったなぁ、防寒着の用意をせずに来てしまったのは失敗だった。一応走ってきたことで体は温まっているが、雪相手だと一気に体温を下げてしまう。とりあえず見た目が不格好にはなるが、持参していたFOXHOUNDコートを重ね着した。……意外にも防寒機能に優れていたらしく、寒さは大分マシになったが……あまり長居できないことに変わりはない。

よし、扉を開けよう。

ガチャ。

ひゅ~。

「海底の長いトンネルを抜けると雪国であった……」

「文学的出だしはともかく、そこは国境じゃないのか?」

「ミッドチルダに国境があったのは、数世紀も昔の話だよ……うぅ、さむっ」

『確かにベルカの時代なら国境はありますよね。そもそもミッドチルダでは管理局の台頭によって、国境という概念が消えてますもの』

なお、他の管理世界も国などの概念は一応残ってるけど、それは元々あったのが管理世界化したことで消滅、というより吸収された影響だ。管理局が弱体化している今、再び独立して国を復興させようと目論む人も多少いると思う。しかし……国境を引き直すとなったら、それもまた争いの原因になると思う。戦争のない時代になっても、一度国際的な場で線を決めた後でも、彼らは虎視眈々と広げようとする。前時代的思想って言えばそれまでだが、国境やそれと同じ意味を示す単語、それに伴う争いはいつの世も残り続けるだろう。

だってヒトは……世界はそういう風に出来ているのだから。救済を願っても、誰かを救っても、痛みを知っても、恐怖が刻まれても、意思はひとつにつながらない。

人間は敵を作ることに関しては天才だ。無いなら自分で作ってしまえ、という考え方があるのは知っているが、それはプラスだけでなく、マイナスでも適用されている。むしろマイナスの方でやってしまう人の方が圧倒的に多い。しかもそれで作り出した敵を攻撃して自らの在り様を安定化させているのだから、ヒトがアイデンティティを保つには敵が必要だ、という言葉は否定できないだろう。否定できるのは世間を知らない愚か者か、もしくはヒトの業の何もかもを承知の上で可能性を信じ抜く大馬鹿野郎ぐらいだ。

まあ、今はこんな事を考えるより優先しないといけないことがある。それは……、

「日が完全に沈んで凍える前に、研究施設へたどり着かないとね……急ごう」

とはいえ、雪の上を急ぐのは中々困難だ。無鉄砲に走ると足を滑らすし、時間が経てば靴が濡れて一気に体温を奪われる。やはり地道に進むしかないか……海から島内部に向かう冷たい風で体温が限界になりそうなら爆炎ダッシュで強行突破するけど、それやったら目立つしエナジーも一気に減るから出来るだけ控えたい。
なお余談だが、ジャンゴさんやサバタさんは半袖にハーフパンツという恰好で、なおかつ夜中でも平気で雪の上を走り回れるが、あれ実は我慢していただけらしい。サバタさん曰く、『白き森でジャンゴを待っていた時は寒さとも戦っていた』とか。うん、場所変えれば良かったんじゃないかな? 裏事情的に仕方なかったのかもしれないけど。

とか思ってると、道中で私達は面白いものを見つけた。

――――くぇ~! くぉ~!

「あ、リヴァイアペンギンだ」

「ん、わかるの?」

「昔、次元世界用の動物図鑑で見た」

この辺りにはリヴァイアペンギンが生息しているようで、私の姿を見た一羽がよちよちと腹這いで近づいてきて、目の前で立ち上がると鳴きながらお辞儀した。なんか礼儀正しいな、この子。
ちなみにリヴァイアペンギンの名前はリヴァイアサンから来ていて、見た目も地球の皇帝ペンギンとよく似ていた。もしかしたら地球のが密航などで持ち込まれただけの同種である可能性がある。ま、私は動物学者じゃないので、そこら辺を調べるつもりは無い。

しかし……この辺りには戦艦でも落ちたのだろうか? ペンギン達がたむろしているこの場所には、魔導炉の残骸に上半身だけ残った自販機、ズタボロになったデバイス修理ポッド、量産型デバイスの破片など、とにかく様々なものが海の上に漂っていたり、雪の上に黒焦げの状態で転がっている。いくつかは遮蔽物や障害物などに利用できそうではあるが……耐久性はそんなに無いだろう。

『あの時間と位置、そして周回軌道から計算すると、これらは管理局本局から放り出されたものでしょう』

「ん、つまり大気圏突入でも燃え尽きずに落下した残骸か」

「でも残骸ってここまで残るの? 衝撃の跡もあまり残ってないし、ちょっと多い気がする」

『恐らくコンテナに匿っていたり、物質に保護や保存、中には封印の魔法をかけていたことで超高温に耐えられたんじゃないですか? ロストロギアも保管庫の中にあったようですし、衝撃緩和など魔法を施していたと考えた方が納得しやすいでしょう』

なるほど……確かに納得できる。でも流石に大気圏突入の衝撃を受けて、なお機能が生き残ってるものはほとんど無いだろう。あるとすれば、それこそ防御力や保管に特化したロストロギアぐらいか……。

『おや? あれは何でしょう?』

イクスが何かを見つけた。視界共有してるから、イクスの感覚を頼りに私の意識をそちらに向け……首を傾げる。

「……宝箱?」

海の上にプカプカ浮いていたのは、世紀末世界でもよく見られたデザインの宝箱だった。しかし色は焦げて黒ずんでいるので、元の色はわからない。

ところで世紀末世界じゃ、赤箱に太陽の果実が入っていることが多かったが、それって拾い喰いの範疇に入るとか、太陽の果実ってそもそも太陽樹が無いと作れないはずじゃとか、あんな所に放置しといて腐ってないのはどうしてだとか、疑問は尽きなかったりする。ま、ツッコむのも野暮ってものか。

「というか次元世界で宝箱を見つけるなんて普通思わないよ……」

『あれ、回収します?』

「いくら浅瀬とはいえ、この寒い環境で海の中に入る気にはなれないなぁ。興味はあるけど……」

「ん、じゃあ俺が行こうか? ギア・バーラーの体には温度変化の影響は出ない。液体窒素ぶっかけられても凍ったりしないし、溶岩の中でも平気で動けるから」

『どこの溶岩水泳部ですか!?』

というか液体窒素ぶっかけられる状況ってあるの? 一応似たような状況としては、昔管理局員のギル・グレアムが闇の書に掛けようとしていた永久凍結魔法が考えられるけど……要するに温度が関わる魔法はギア・バーラーには効かないってことかな。

「水泳部云々について一つ言っておくがイクスヴェリア、俺は泳げない」

『え、実はカナヅチなんですか?』

「正確には浮力が無いせいで沈む。だから海に落ちると水圧に耐えながら海底を移動するしかなくなるから、陸に戻るまでが結構大変。これはギア・バーラー共通の性質だ」

『そ、そうなんですね……』

「これは意外な弱点、かな?」

「でもカナンが泳げるかはわからない。アイツ、今の身体はサイボーグだから」

「あ~そっか。まあ、彼女に関しては置いておこう」

でもそういう事情があるなら、ケイオスを海に行かせるのは避けた方が良いのかもしれない。浅瀬でも万が一ってこともあるし、あの宝箱は……。

1:放置していく。
2:やっぱりケイオスに回収させる。
3:濡れて寒くなるのは承知の上で自ら回収する。
4:ペンギンに回収を頼んでみる。

『いや、4はおかしいでしょう。ペンギンに頼むって、シャロンは動物と話せるんですか?』

「話せないけど、試すだけなら良いでしょ。という訳で……」

ちょうど最初に出会ったリヴァイアペンギンが正面から私の顔を覗き込んでいたので、かがんで目線を合わせる。そして、お願いという意思を込めてペンギンの鳴き声を真似してみた。

「くぇ~、くぇくぇ」

こぉ~!

「くぉ、くぇくぉ~」

くぇ~!

何度か話しかけるものの、ペンギンは首を振って頼みを聞き入れてくれなかった。『そこまで協力する理由は無い』って言ってるように思う。確かに何の恩義も無い以上、敵意を向けてこないだけでも十分マシか。

くぇ!

「ん? くれるの?」

くぇ~!

『これでもあげるから機嫌直して』って言ってるような口ぶりで、ペンギンは小さくて赤い宝石みたいなものをくれた。その後、ペンギンはクールに去っていった。

『……ゾハル反応探知……』

一瞬、宝石が点滅してそんな声が聞こえてきた。ゾハル反応ってことは、私の持ってるゾハル・エミュレーターに反応したのかもしれない。ってことはコレ、機械(デバイス)

「まあこれは後で調べるとして……ケイオス、悪いけどお願いしてもいい?」

「ん、任された」

という訳で結局ケイオスに陸地まで宝箱を引っ張ってきてもらった。彼の脚や靴が氷と海水で濡れて寒そうだが、確かに本人は何ともないようだ。

で、宝箱の方なんだけど……鍵はかかっていなかった。ただ問題は、中にトラップが無いかだ。世紀末世界にもミミックがいるし、地球の日本の昔話にある竜宮城の玉手箱みたいに老化したら私、ガチ泣きすると思う。そういう意味では某動く城の主人公は凄い鋼メンタルしてると思う。

「そんなに警戒するなら、俺が開けようか?」

「ううん、ケイオスには周囲を見張っててほしい。なんかのんびりしてるけど、一応ここ敵地だし、伏兵がいてもおかしくないから」

「ん、了解」

ひとまず私は民主刀を抜き、宝箱の蓋の隙間にそぉ~っと差し込んで左右に移動させる。……うん、ビックリ箱的な仕掛けは無さそうだ。なら警戒は解かないがそろそろ意を決して、私は宝箱の蓋に手をかけて、そぉ~っと中を覗き込む。

ガチャ。

「うぅ~……」

―――匣の中には美女(アインス)がぴったりと入ってゐた。

「……………」

そっと蓋を閉める。

思わず目蓋をこすった私は、今見たのが幻覚にしてはマヌケじゃないかと半分遠い目をしていた。うん、きっと疲れて幻覚を見たんだ、そうに違いない。

無垢なペンギンたちが私の周りを囲む中、そう無理やり思い込みつつ、改めてもう一度蓋を開ける。

「ぐすっ……え、君は……」

「…………」

涙目の彼女と見つめ合う事、十数秒。目の前の銀髪美女も何が何やらで混乱しているのか、色んな意味で赤面しつつ……、

「あ、ちょ、ちょっと待って……こんな情けない姿で再会するって聞いてない……!? え、え~っとこういう時は確か……た、宝箱だと思った? 残念、アインスちゃんでし―――」

バタンッ。

いやいや。いやいやいや、無いから! あり得ないから! なんでこんな宝箱にリインフォース・アインスが入ってるの!? ドッキリ!? ドッキリ企画でも動いてんの!? こんな僻地でローカル局がインパクト求めすぎてトチ狂った企画でも催したの!?

ガタガタガタ!

おぉ、中ですっごく暴れていらっしゃる。でも蓋を押さえてる手からは、持ち上げる感覚が伝わってこない。ってことは、この宝箱は中から開けられない仕組みなのかもしれない。

ガチャ。

「うぅ~! もう一度閉じ込めるなんて酷いじゃないか……!」

「あなたが悪ふざけじみた登場をするからでしょ……」

「好きでやったんじゃない、生き延びようとしただけなんだ……」

「いや、それは察してる。問題はその後。誰の入れ知恵か知らないけど、怨恨がある相手からあんなおちょくるような台詞言われたら、喧嘩売ってるようにしか見えないから」

「うん、肝に銘じておくよ……」

そうだ、私は悪くない。むしろ何もしないだけマシだと思うんだ。だって私と彼女の関係は、もう一度閉じ込めて海に流したっておかしくない間柄だ。ハッキリ言って、彼女は出来る限り会いたくない相手なんだから。

にしてもアインスって、他者からさも当然のように知らない事を教えられたら、本当にそうなのだと真に受けてしまうタイプなのかもしれない。真面目系天然キャラっていうか……下手したらR指定のある催眠術にかかって変な常識植え付けられる展開が……あれ? これって闇の書の事を考えるとあながち間違いでもないような……あ、これ以上は止めとこう。薄い本のネタにしかならない。

「ふぇ……光?」

「そうだよ、マリエル。やっと外に出られたんだ」

「お、おぉぉおおおおお!! 外だ、外だぁあああああ!!」

ひゅ~。

「ってさぶぅ!!? ここ、どこですかぁ~!?」

なんか局員服を着た女性が騒がしくもアインスと一緒に宝箱から出てきた。こっちは彼女のことを知らないので一応マリエル・アテンザって名乗ってもらったが、管理局員だからあまり関わろうとは思えなかった。

それはそれとしてヒト二人は体積で見ても明らかにキャパオーバーだから、やはりこの箱には収納に関する特殊な効果があるのだろう。遠近法がおかしくなったような光景だが……実は世紀末世界じゃ珍しい光景では無かったりする。多分この宝箱は世紀末世界では量産品で、その内の一つが次元世界に流れ着いたとか、そんな感じじゃないかな。

―――くぇ~?

「そうだね、不思議だね~」

私はペンギン達と目を合わせて心を落ち着かせようと努力する。だってこんなタイミングでアインスと再会するなんて思っても見なかったから、心の準備が不十分だった。現在進行形で頭の中がざわざわしている。

別に彼女に対して今更復讐しようとは思ってない(単に諦めただけとも言える)が……かといって和解してもいないから未だに確執が残っている。でもこれ、最初から会わなければ再起しなかった問題だから会いたくなかったのだ。

「あ、そうだ! シャロン、この辺りで私達の他に生存者は……」

「ここに来るまで誰も見てない。だから……正直、望み薄だと思う」

「そうか……予想はしていたが、残念だ。あの状況で私達が助かっただけでも、むしろ幸運なのだろう。では次に主達、管理局に所属している八神はやてや騎士達の状況は知っているかい?」

「知ってると言えば知ってるけど……知らないと言えば知らない」

「どういうことだ?」

「私達が最後に彼女達の姿を見たのは、敵の端末兵器に捕まって連れ去られていた所だから、その後の安否はわからない」

「なに、主達が捕虜にされたのか!? いつ!?」

「昨日。でも騎士連中が一緒なら、今頃脱走を果たしてるかもしれないし、捕まったのもトロイの木馬的な作戦の可能性だってある。まずは情報を集めて、それからどうするか決めたら?」

「……そうさせてもらうよ」

と、アインスが家族の安否を確認してきた一方で、ケイオスはマイペースに宝箱の中を調べており、何やら服の型紙に似た資料を取り出していた。ちょっとしわくちゃなのは、二人が中にいたせいだろう。

「シャロン、良いものがあった。入ってたのは性能こそロストロギア未満だが強力な装備品の開発資料の山で、コイツは“クロススーツ”って装備の作り方が書かれてる」

『あぁ、懐かしいですね。それはガレア特殊部隊の女性用制服です。隠密や諜報活動を任せていた部隊の戦闘服なので、現代風で言うならガレア製スニーキングスーツです。しかし何百年も経ったというのに資料が全然劣化していませんし、もしかしたらこの宝箱は中に保存している物体の劣化を抑える効果があるのかもしれません』

ってことは食品の保存にも使える訳で、ダンジョンで手に入れた太陽の果実が新鮮なのは、そういう理由があったのか。

「まあ、作るだけならいつでも可能だが、性能の強化と同様に金と材料が必要だ。要はグレード1の状態から順に性能を良くしていくものだ」

『あと裁縫技術だけじゃなくて、素材の加工技術も必要でしょう。裁縫はシャロンも出来ますが、本格的なものを作るなら服飾メーカーに協力してもらった方が良いでしょうね』

服飾メーカー……ベルリネッタ・ブランドとかかな。折を見て発注できないか聞いてみよう。

「この開発資料は……指輪シリーズ? へぇ、この“パワーリング”って、着けるだけで力を上げられるのか。地味だが便利だな」

「私としてはこの“アヴォイドリング”ってのに心惹かれるけどね。生存率上がりそうで」

「あ、これは良いな。“エアステップシューズ”、空中に足場を生成する。飛行魔法を使えない人向けの靴だ」

空中に足場……確かに使えそうだ。あれば空中戦が可能になるし、海や空の上に乗り物を使わずに移動できる。雪や泥みたいに足場が悪くても、走るのに支障が出なくなる。軽く考えるだけで、これだけのメリットはある。

「ただ、作るなら“足場生成”に関わるスキルのデータが必要だ。魔導師みたく魔法陣を足場にするのとは原理が異なるからな」

「足場生成ねぇ……」

なぜか知り合いにそのスキルの持ち主がいるような気がするが、今作るって訳じゃないので、人探しはまた今度。

「ん? これは……葉巻だ。この銘柄は聖王家も御用達の高級品で、多少の仕様変更はされているが現代でも同等のものが生産されてたはず」

「な、なんでタバコが宝箱に……この宝箱の持ち主はヘビースモーカーだったのかな?」

『えっと……タバコと葉巻は色々違うんですが、まあ喫煙者じゃなければ同じものにしか見えないでしょうね』

「で、シャロン、これいる?」

「いらない。そもそも私まだ未成年だし、葉巻持ってたらマズいでしょ」

『確かにシャロンが使うのは問題でしょうけど、誰かにあげる物として持っておくことは構わないんじゃないですか? ほら、ご機嫌取りの道具があると交渉とか色々やりやすくなるでしょうし』

「大人相手に渡り歩くならイクスの言う通り、持ってて損は無いかもな。葉巻一つで変わるかは状況次第だが」

「え~」

ケイオスから葉巻を受けとった私の顔は困惑に満ちていることだろう。にしても葉巻をもらって喜びそうな人といえば、私に思い当たるのは世紀末世界にいるハテナさんか、アウターヘブン社CEOリキッドさんか、地球で一度会ったプリスキンさんぐらいだ。ハテナさんは次元世界じゃ会えないから、葉巻を渡すとしたら後ろの二人が妥当だろう。

カチャカチャ……。

「ここをこうして……」

何やらマリエルが何か小さい筒状の物体を取り出して、空に向けている。あの赤い筒、どこか発煙筒を彷彿とさせるけど……って発煙筒!?

ひゅるるるる~……ポンッ!

咄嗟に静止の声を上げようとしたが間に合わず、マリエルはその筒のスイッチを押して、空に長く残る花火のような光源を打ち上げる。

「ふ~、これで後は救助が来るのを待って―――」

「何してくれちゃってんのぉおおおお!!??」

「ええぇ!? わ、私怒られるようなことしましたか!?」

「したよ! 思いっきりしちゃったよ! 何でアレ打ち上げちゃったの!?」

「え? 今みたく遭難した時や、要救助者などの対象を発見した時、無事を知らせる時などの用途で自分の居場所を仲間に知らせるためですけど……。ああやって光と信号を発するので目視でもレーダーでも場所がわかる上、緊急向きってことで管理局員は全員携帯するよう厳命されていて……」

「ここ敵地! 潜入がバレたら何が起こるか想像つくでしょ!?」

「は、はいぃ!? ってことは……」

刹那、遠方から刺すような殺気がこちらへ届き、全身の神経が活性化した。

『シャロン……見つけた……! 泣けっ! 泣いていいんだ! さあ、声を上げて泣いてみろ!! おぉぉぉおおおおおおおッッ!!!』

これは……泣き声?

直後、遠方から超高速の光源がこちらへ飛来してくる。回避のために体が反射で横に動いたが、それよりも先にケイオスが狙撃をはじき返した。

「ん、あからさまなタイミングだ」

「狙撃! 全員伏せろ!!」

アインスが必死の形相で叫びながら、マリエルの頭を押さえつつ雪原に突っ込む。

「うわっ、つべたい!? さぶい!!?」

「マリエル、お願いだから今はちょっと黙っててくれ」

「い、今にも凍えそうなんですが~!?」

「あ~もう、わかったよ。温まる炎が欲しいなら、物陰で出してあげるから……!」

マリエルの文句に若干の苛立ちも込めてアインスが静止の言葉を送る。確かに防寒着も無いのに雪原に伏せるのだから寒い事この上ないが、それでヘッドショットされて死ぬのと比べたら辛くても我慢するしかない。

一方、ケイオスは身構えたまま遠方を観察していたが、次の攻撃が来ないので私は次の行動に繋ぐべく一手動かすことにした。

「……今から物陰に移動するから、護衛お願い」

「ん、了解」

こういう時は慎重に動くより、迅速に動くべき。もたもたしてたら逆に狙いを定められる。そう思って姿勢を低くしつつ、周囲に転がる瓦礫に身を隠したのだが……意外なことに何もなかった。まさか一射だけで撤退したとは思えない以上、警戒は緩めないが。

「さぶい……はやく出してくださいぃ……」

「慌てないで、今点火するから」

別の瓦礫の影ではしきりに暖を要求するマリエルにアインスはそう言って宥めつつ、魔法で小さい炎を出した。

「ふぅ、温まりますぅ……」

狙われてるというのに、呑気なものだ。しかしこの状況でもマイペースでいられるって考えると、実は結構大物なのかもしれない。

「ケイオス、狙撃手ってどう対処すればいい?」

「基本的にはこちらも狙撃で対抗するか、ステルスでやり過ごすかだ。しかし俺達と相手の攻撃可能距離に大きな差がある以上、どう動こうが相当不利な状況であることは認めざるを得ない。あと、マキナは一人でこなしていたが狙撃手は本来、観測手と二人組で行動するものだ。つまり……」

敵はもう一人いる。

ケイオスが私にそう示唆した直後、アインス達が隠れていた瓦礫が爆発した。咄嗟にシールドで防御した彼女を尻目に、もう一人が現れたのだと判断してすぐに身構えた私達の目には、グライダーを装備した強化服の女性らしき存在が浮かんでいた。新手の登場に一層気を引き締めねば、と思ったが……、

「え? 戦う前なのにボロボロ……?」

グライダーなんて故障しかけているのか時々片方のエンジンが止まってるし、強化服だって所々が大きく破損している。既にLIFEが4分の1まで削れているような感じだ。しかもそれは昨日今日につけられたのではなく、まるで数年もの長い時間ほったらかしになってるような感じだった。もしかして過去に誰かと戦った時のダメージが、補給や修理をせずにそのまま残されているのかもしれない。

「おまけに何だろう、あの光……」

「ん、何か見えたのか?」

「あのグライダーの女性の頭部。変な光の塊が糸のように絡みついてて……」

「光の塊……? 俺には見えないな」

「イクスは?」

『ごめんなさい、私にも見えません』

視界共有してるのにイクスには見えていない? じゃああの光は私にだけ見えているのか? 心臓みたく鼓動している所から巨大な寄生虫を連想するが、とにかくエネルギーか何かを送り込まれてる感じがするし、斬るか抜き取ってみたら弱体化しそうだ。

「さあ怒れ、怒るんだシャロン! 感情を露わにしろ! もっと怒っていいんだ! 怒りは怒りを産む! さぁ! 怒って見せろ!」

そのまま手に持ったグレネードランチャーをこちらへ発射し、空中を飛び回って小型の何かをばらまきつつ、驚いたことに地面の中を泳いでいった。なるほど、こっちは観測手の役目も果たしつつ……、

『さあ、涙だ! 思いっきり泣け! 泣きわめけ! 哀しい……哀しくて死にそうだ!』

狙撃手の射線上におびき出させてくる訳か。

そして次の瞬間、またしても狙撃が襲来。グレネードランチャーで瓦礫が破壊された直後に撃たれたが、今回は来るとわかっていたから自力で回避した。ちなみにアインスはマリエルを抱えて私とは別方向に退避、物陰に隠れている。ペンギン達も既に海の中へ逃げてるから、もう巻き込まれる心配はない。

「……ケイオス、確認だけどさっきあいつにばらまかれた物って……」

「機雷だ。あからさまだけど有効だ」

グライダーの女性がグレネードランチャーや機雷で逃げ場を無くしていき、飛び出した所を狙撃手が撃ち抜く。戦略としては理に適っている。普通の部隊なら瞬く間に壊滅していることだろう。

まあ、このまま手をこまねいていたら、遠からず私達も全員お陀仏だ。片方に専念するともう片方に背中から攻撃されるから、戦うなら両方相手する必要がある。行動に移るなら早くしないといけないけど、どうする……?

1:ケイオスと協力して敵を倒す。
2:攻撃をやり過ごしつつ、敵基地に向かう。
3:情報に無い敵が出現した以上、安全を喫して撤退する。

まず、3は一応案として出したはいいけど、今は推奨できない。追跡されて地下水路を爆破されたら色んな意味で終わるから、撤退は敵に見つかっていない時じゃないと危険すぎる。2も危険フェイズのまま移動し続けるようなものだし、たどり着けたとしても相当のダメージを負う。とても敵基地攻略の余裕が残るとは思えない。よって必然的に1を選ぶことになる。

「ちょっと待て! まさか君も戦うのか、シャロン!? それなら私も―――」

「ごめん、いらない」

「え……? 私……これでも戦力になるよ? 危機的状況だからこそ、力を合わせて―――」

「信じられない」

「背中を預けられるような信頼関係が築けていないってことは十分わかってる。でも命がかかってる以上、今だけでも良いから過去の事は一旦置いといて……」

「ッ……! ねぇ、私達の過去って、あなたにとってはそんな簡単に棚上げできるものなの? そんな言葉を安易に言えるなら、あなたの贖罪の意思も所詮は建前だったの?」

「ち、違う! そんなつもりは……!!」

アインスが否定の言葉を告げようとしてくるが、この一瞬は彼女よりグライダーの女性の方に意識を向けた。話で長々と留まっていれば、狙ってくるのも必然。瓦礫をグレネードランチャーで爆破されるが、その寸前に私は側転で別の瓦礫へ身を隠した。

「シャロン! 大丈夫かい!?」

「一応ね。……さっきから協力協力言ってるけど、アインスはマリエルを守る気はないの? 管理局員だろうと非戦闘員なんだから、彼女は私以上に非力だ。誰かに守ってもらわないと簡単に命を落とすよ」

「それはそうなんだけど……」

「敵を倒すために力を使うのと、弱者を守るために力を使う。どっちが贖罪らしいか、行動で見せてよ。あと正直に言うけど、あなたが近くにいると戦いに集中できなくなるから、今は離れていてくれた方が安心できる」

「………………わかった、今回は大人しくしておくよ」

子犬のようなしょんぼり顔でアインスは引き下がった。確かにアインスに協力してもらったら頭数という意味でも戦力は増えるが、私の場合は主に精神的な部分でデメリットが多いから、むしろマイナスに働いてしまう。彼女の協力を受け入れるにも、ある程度の時間が必要なのだ。

「それじゃあ……待たせたね、ケイオス」

「ん、問題ない。やるか」

互いに頷き、まずは周囲の地面を泳ぎ回るグライダーの女性を倒すことを決める。地面を泳いで奇襲を仕掛けてくる彼女の戦法はかなり厄介だが、それはどこから現れるか予測がつかないからだ。故に戦術面において本来、彼女のイニシアチブは同じ能力を持っていないと覆しようがない。そう、本来は……。

「私にだけ見える光の塊のおかげで、位置がバレバレなんだよね。ケイオス、あの小さい瓦礫の右側の地面にターゲットがいる」

「ん、了解」

指示を受けたケイオスはそのポイントに向けて素早くメイスを叩きつける。私というドライバーを得て万全の状態となったケイオスのパワーをまともに受けたその地面は、コンクリートが砕けるような破砕音と共に陥没、ごく小規模のクレーターを形成した。

「直撃こそ避けたようだけど、地面を伝わって振動は届いた。となれば……」

ボンッ!

地面の中にいてもケイオスの攻撃力なら届いてしまうと理解したグライダーの女性は、壊れかけのエンジンを犠牲にしてでも急いで地上に出ようとする。片方のエンジンが爆発して上にきりもみ回転しながらやっとのことで地上に出てきた彼女は……、

「もう攻撃が下手だなんて言ってられないよね……!」

瓦礫と刀を手に迫る私と目があった。そう、次は私の番!

「ッ!?」

単純かつ効果的な策にはめられた事に気づいた彼女は逃げようと反応するが、その反応速度は私の動きと比べてはるかに緩慢だった。

狙撃防御のために引っこ抜いた瓦礫をグライダーの女性に向けて投擲し、爆発しなかったもう片方のエンジンに衝突、飛行用の推進力を完全に失わせた。なお、瓦礫を投げたことで今の私は狙撃手から丸見えなのだが、そっちはケイオスが私へ向かう弾丸も一緒に弾きつつ猛スピードで狙撃手へ接近していったため、こちらに狙撃が届く心配は無かった。

という訳で……斬撃モード!

斬斬斬斬!!

これぞ四刀一閃。斬るべき場所を数ミリもずらすことなく、機械の如く正確に刀を振り抜いた。そして私が斬り飛ばしたのは、光の塊から伸びていた糸。

「斬―――奪ッ!」

“ハールートの紋章”を手に入れた。

左手で彼女の頭にこびりつく光の塊を掴み、引き抜いて握り潰した。が、その瞬間、砕けて粒子状になった光が私の中に入ってくる。同時に私の頭から全身にかけて、血液がまるで氷水に置き換わったかのような凄まじい寒気と……『怒り(レイジング)』の感情が流れ込んできた。

『怒れ……怒れ……! 世の歪さに怒れ……不条理に怒れ……理不尽に怒れ……全てに怒れ!』

「あ、ああ!? あああああぁ!? い、怒りが……! 抑えてた報復心が、心を浸食してくる……!」

『いけない!? 気をしっかり持って! シャロン!!』

イクスの呼びかけが聞こえた気がしたが、それよりも私は怒りの精神浸食に意識を向けざるを得なかった。今気を抜けば、それこそ我を忘れて暴れかねない。斬奪した戦争(レイジング・レイヴン)の記憶に連なる感情……禍々しき惨劇の断片は、報復心の封印を決壊させたのだ。

「ど、どうしたんだ!? 明らかに尋常じゃない様子だよ!?」

「ッ!!」

心配で声を上げたアインスだが、その声のせいで私の記憶に宿るニダヴェリール大破壊の怒りが連鎖反応を起こし、衝動的に刀を向けてしまう。それを見ていたアインスはいきなり武器を向けてきたことに、大いに困惑した。

「シャロン……どうして……」

「あなたのせいなんだ……! 全部あなたのせいだ!! あなたさえ……あなたさえいなければアクーナは……!! ―――ぐっ!?」

ダメだ……これは真実を知らなかった時の怒りだ。過去の怒りに心を囚われるな、相手を間違えるな私! この怒りを向けるべきは、そこじゃない!

「うわああああああッ!!」

衝動に耐えるべく叫びながら刀を地面に突き刺し、頭を冷やそうと呼吸を繰り返す。心の平定、か……もし柳生さんの心得を学んでなかったら、今頃怒りに飲み込まれてただろう。

「ギリッ……! ググ……! ぜぇ……ぜぇ……!」

「……もう、大丈夫?」

「な……何とか……ね」

「落ち着いて話せるなら教えてくれ。今のは何だったんだ?」

「誰かの感情がトリガーとなって、報復心に直接揺さぶりをかけてきた。仕掛けてきたのは『怒り(レイジング)』……最も復讐に近い感情だ」

「復讐……。では、さっきの言葉は本心?」

「否定はしない、そう思ったのは本当だもの。あの大破壊が起こらなければ私もマキナもこんな目には遭わなかったと、運命を呪ったこともある。でも……それはもう過去だ。真実を知ってる今は、矛先が違うって頭では理解してる」

「頭では、か……。確かに事情があったとはいえ、実際に手をかけたのは私だ。そう簡単に割り切れる問題じゃないのは重々わかってるよ」

「加害者にどんな事情があろうと、直接の関係が無い限り、被害者にとっては何の意味もないし、慰めにもならない。私のような人にとっては、理不尽しか感じないんだ」

「ああ……だから気が済むまで罵っても構わない。例え自分の意思ではなくても、それだけのことをしたのだと自覚はしている」

「あなたの言う通りに罵った所で、それはあなたの『罪悪感を感じたい』って甘えに応えてるだけ。私には何の意味も無い。厳密に言えば多少の鬱憤を晴らす効果はあるんだろうけど、根本的には何も変わらないんだよ」

「じゃあ……私はどうすれば良いんだ。何をすれば……君は許してくれる……?」

「甘えないで。それを私に訊くって事は、テストをカンニングするも同然のズルだよ。本当にその気があるなら、自分で考えて」

「自分で考える……難しいな」

「お互いにね。あれはあなたの意思じゃない、それがわかっているから私だって落とし所を探している。操られていたから責任はありませんので仲良くしましょう、なんて言って簡単に済む話じゃないもの。そんな事を言えるのは、無責任な第三者のみだ」

「そうだね……お互い、色々考えなくてはならない。そうしないと、この気まずい関係はいつまで経っても続くから」

「傷つき、傷つけられて……また傷つける。誰かの報復心を増やすことを、この世界は何度だって繰り返す。闇の書のこと、きっとあなた達だって理不尽は感じていた。こんな事はしたくないって、ずっと思ってた」

「ああ……思っていた」

「理不尽は誰にだって襲ってくる、人為的だろうが偶発的だろうが関係なく、平等に。争いが争いを呼ぶのは、不幸が次の不幸を生んでいるが故の産物だ。なら本当の敵はその理不尽、次の不幸を生み出すものだ。怒りで目を曇らせて、目の前にいる敵と味方以上の存在に気づけなくなったら、理不尽を消すなんて夢物語もいいとこだよ」

怒りは力と快感を生み、怒りの前には敵と仲間がある。だが目先の結果に囚われず、怒りの先へたどり着けば、敵味方以上の存在……同志を見つけることが出来るようになる。

「リインフォース・アインス、私は決してあなたを許しはしない。アクーナの皆のためにも、あなたを許す訳にはいかない。でも、目指す方向が同じなら……共に生きることは許せる」

その果てにある道を示すべく、数年越しの成長した顔を改めて見せてあげると、アインスはえも言われぬ嬉しそうな顔を見せてくれた。

報復心―――『怒り(レイジング)』を克服した。

にしても、報復心に宿っていた強い感情を目覚めさせられたおかげで、本能的に理解した。報復心を抑えている内に、私は報復心の中に紛れていた自分の願望も見失っていたらしい。願望が無ければ、心は停滞し、いつしか諦観が浸食する。認めよう、私の心は諦観に支配されていた。

諦観を感じることは誰だって多々ある。先の見通しが立たない生活、裏切ってばかりの官僚、ありとあらゆる命を脅かす未知の存在、そんなのをどうにかしたいと思っても自分一人じゃ変えようがない。変えようと行動を起こせば、邪魔が入る。だからどれだけの年月が経ってもヒトの本質は進化せず、石器時代から全く変わらない。

私の願望、私が何をしたいのか……明日の希望無き次元世界に、何を訴えたいのか。それは……変わることのできないヒトの運命への憤りだ。私の何もかもを破壊した闇の書から始まる、善意と悪意の交差、悲劇への連鎖。なぜ始まり、今まで続いてしまったのか。どうして世界から悲劇が無くならないのか。

時が経っても断ち切れないヒトの業……いつか誰かが断ち切らないといけない。だが断ち切ろうにも、生半可な方法では到底叶わないし、やり方だってわからない。それでも必要なものはわかっていた。

……力だ。自分が折れないための、周りを変えるための、世界が相手だろうと屈しない絶対的な力だ。怒りの心(レイジングハート)に支配されて手に入れる力は、確かに強力ではあるが絶対ではない。全てにおいて征服し得ない、屈しない……純潔の心(ダイアモンドハート)がそれを為す。最終的に世に仇なす者になり果てようが、必要なら手に入れてみせよう……。

『シャロン、今のでかなり精神的に疲労していますが、大丈夫ですか?』

「一応……大丈夫。それよりイクスの方に影響は?」

『私に影響は無いですけど、私のリンカーコアを通じてシャロンの中からエナジーとも異なる力を感知しています。詳しくはわかりませんが、シャロンにしか見えない光の塊を斬奪したのでしょう? それ以降、シャロン自身のエナジーが急に増幅しました。傍から見ればバッテリーを増設されたような感じです』

つまり取り込んだ光の塊……“ハールートの紋章”は私を文字通りパワーアップさせたってことらしい。確かに、元々私のものだったように体へ馴染んでるし、グライダーの女性のように意識を乗っ取られるような感覚はもうしない。

―――どぉおおおおん!!

そういえば戦闘中だったことを思い出すが、狙撃が全く来ず、背後に巨大な質量が墜落したかの如き轟音から、おおよその戦況は察した。事実、振り向いたら当然の結果と言いたげなすまし顔でケイオスが無傷で立っており、足元には敵の狙撃手であろう巨大な鋼鉄の塊にしか見えない狼型のパワードスーツが倒れていた。恐らくSランク越え魔導師の砲撃にも平気で耐えるぐらい強靭な防御力を誇っていたのだろう全身の装甲は、見る影もないぐらいボッコボコにひしゃげており、右腕部と右脚部の装甲は過去に何かが貫通したように丸く抉れていた。

ケイオスが重装甲さえ凹ませる高威力攻撃を執拗に加えたのはパッと見でわかるが、この丸く抉れた部分に関してはちょっとわからない。私の知ってる魔法で該当しそうなのはユーリのエンシェント・マトリクスなのだが、遠距離の相手に使える魔法では無かったはず。

プシュー!

狼型パワードスーツの搭乗口が開き、そこから茶髪のショートカット少女がこぼれ落ちてきた。この子はさっき倒したグライダーの女性……気を失っている水色のロングヘアー少女と似た雰囲気をしており、二人ともクアットロ達と同じような青いぴっちりスーツを着ていた。

「もしかして、この二人もナンバーズ?」

「ん、片方は見覚えがあるからそうだろう。で、どうする? 俺達に攻撃してきたって事は裏切り者だし、今のうちにトドメ刺しとく?」

「いや……しなくていい。帰還後、改めてクアットロ達に事情は尋ねるけど、恐らく本人達に攻撃の意思は無い。何者かによって、意思を封じ込められているんだ。だから……」

予想通り、こっちの少女にも光の塊が絡みついていた。ケイオス達には見えてない以上、これは私が斬るしかない。

「その意思を解放する!」

二度目の斬撃モード!

斬斬斬斬斬!!

五刀一閃。今回は尻尾の分もあったので、一回多く斬った。

「斬―――奪ッ!」

“マールートの紋章”を手に入れた。

抜き取った光の塊が霧散して私の体に吸収される。今回は二度目ということであらかじめ心の準備をしていたつもりだったが、受け取った戦争(クライング・ウルフ)の記憶に連なる『哀しみ』は心の堤防を大きく揺るがしてきた。

『泣け……泣け……! 救われなさに泣け……無力に泣け……運命に泣け……全てに泣け!』

「ぐっ……! う、あぁ……!! あぁあああああ!!!!」

私に対して『哀しみ』は驚くほど浸透性が高く、耐え切れずに頭を抱えてその場で崩れ落ちて泣き叫んでしまった。その上、先の『怒り』からさほど時間をかけずに受け取ったため、あまりの情報量で脳の許容限界を超えてしまった。

「うぁぁああ――――あ」

直後、頭の中が焼き切れるような痛みを受け、目の前が真っ暗になって意識が遠のいていった……。










ミッドチルダ北部、旧アレクトロ社研究施設
物資搬入口

「よし、どうにか見つからずにここまで来れた」

シャロンが気絶してから15分後、アインス達は彼女達が攻略する予定だった施設で身を隠していた。そこは奇しくも4年前、サバタが潜入を開始した地点であった。

とはいえ、あれだけドンパチやっていたので、施設にいたスケルトン達に戦闘地点はバレており、アインス達が身を隠すまでの陽動としてケイオスが外で大立ち回りを演じている。ギア・バーラーとしての力を見せつけて敵の注意を引き付けている間に、シャロン達を安全な場所へ匿うようにしたのだ。……出てくるスケルトンを片っ端からホームランしていく光景はある種壮観ではあったが。

「マリエルも巻き込んじゃって悪いね」

「電力が来ていたのでエレベーターを動かせたのは幸いですね。セキュリティが古いままなのは技術者視点からすれば不用心だと思いはしましたが、いきなり襲われたのも元はと言えば私のせいですからね。これでも迂闊だったと反省してるんです。それにアインスさんこそ、“三人”も運んで大変だったんじゃないですか?」

「ご飯食べて映画見て寝てるからね。三人ぐらいお茶の子さいさいだよ」

微笑みつつアインスはしゃがんで抱えてきた三人……シャロンとナンバーズの少女二人をゆっくりと床に降ろした。その後、しゃがんだままアインスは涙の筋が残るシャロンの頬にそっと手を添える。

「こんな事になってしまったけど……君が生きてて良かった」

「にしても、まさか廃棄された施設を敵が再利用していたなんて、全く気づきませんでした」

「どうやって気づけたのかはさておき、これからどうしようか」

そうアインスは悩まし気に呟くが、そもそも護衛対象がいる以上、迂闊に動くわけにはいかない。ケイオスが戻ってくるか、シャロンが目を覚ますまで、ここで隠れているのが最善だと判断していた。

「う……ここ、は……?」

「いたた……キッツイなぁ~も~……」

そんな時、さっきの襲撃者の二人が先に目を覚ました。咄嗟に警戒するアインスだが、今の彼女達からは敵意が一切なくなっていた。

「あ……身体が、動かせる……!? 自由になれた……本当に、自由を取り戻せたんだ……! やっと……私、やっと……!」

「ぷっはぁ~! 久しぶりなせいか、空気がすっごく美味いぞ~!」

茶髪の方は涙を流して自由を噛みしめており、水色の髪の方はしきりに深呼吸を繰り返していた。その様子からアインス達は、シャロンの『意思を封じ込められていた』という言葉が真実であったことを理解した。

「喜んでる所すまないけど、君達は一体何者なのかな?」

「あ、えっと……名乗り忘れててごめんね。私はディエチ、こっちは……」

「セイン! 今後ともよろしく!」

「あ、こちらこそよろしく。それで、君達はどこまで状況を把握してるんだい?」

「状況? えっと……ごめん、身体の自由を奪われてから世界で何が起きてたのか、何もわからないんだ」

「あたしもなんだよね~。いわゆるタイムスリップ感というか、ポルナレフ状態というか。あ、でも自分の身体を勝手に動かされてたことはわかってたよ」

「要するに今までの出来事は記憶に残ってない、ということで合ってるかい?」

「そう……なるかな。ただ、すごく辛くて哀しい記憶を見ていた、ということだけは覚えてるよ。内容はどうしてか全部忘れてるけど、もし覚えてたら心が壊れてたんじゃないかと思うぐらい酷い記憶だったと思う」

「こっちは辛いのは同じだけど、ずっとイライラムカムカさせられてた気がする~!」

「なるほど……『哀しみ』と『怒り』の残滓はあるが、本人達に影響は無い。あの時のシャロンの異常な様子の取り乱しようから、恐らくは……」

と、アインスは彼女達を苦しめていた原因を吸収したらしいシャロンに視線を下ろし、複雑な表情を浮かべた。もし、シャロンの能力が悲劇の“吸収”を可能にすると心無い者に知られたら……彼女に面倒事を押し付けて無理やり解決させようと仕向きかねない。アインスとしては、そんな真似は決して許す訳にはいかない。なぜならば、

「兄様に悲劇を吸収されて救われた私だからこそ、守らなくてはならない。マキナに続いてシャロンまで、兄様の後を追わせないためにも……」

「あの……私達の自由を取り戻してくれたのは、そこで気を失ってる人なの?」

「その通りだ。ただね、私には見えないせいでわからなかったが、君達を助けた方法は精神にかなりのダメージを受けるらしい。二人を救った時、反動で様子がおかしくなるばかりか、こうして意識を失うほどの負担があるようでね……」

「そう……無理、させちゃったんだ。ごめんね……でも、助けてくれてありがとう」

「も~、辛いなら辛いって言えばいいのに。どれ、お礼がてらにセインねえさんが膝枕してあげよう」

意外と和やかな二人の様子に、アインスはどことなく親近感を覚えた。意思を封じ込められて望まぬ戦いを強いられてきた、という点では、自分達も同じだったからだ。意思の牢獄から解放してくれたのが月下美人である、というのも共通点であるが。

「ひとまず事情がわかった所で、君達はこれからどうするつもりかな?」

「そうだね……私達が世間から見てどういう扱いになってるかわからないけど、せめて家族に一目会いたいな。それからは助けてくれた恩返しとして、彼女に力を貸してあげたい」

「あたしもあたしも! まあ、迷惑かけたことでアウターヘブン社の支社長に謝っておきたいけど、この子もアウターヘブン社所属だからその辺は早く済みそうだし、当分は協力に専念しようと思ってるよ~」

「……だ、そうだよ?」

アインスの問いかけるような返事に、ディエチとセインはいつの間にか降り立ったケイオスの存在にたった今気づき、驚きの声を漏らした。

「お、お前なぁ、いきなり現れたらビックリしちゃうだろ~! あたし、正直言ってそんなにビックリ耐性ないんだからな~!」

「全く気付かなかったのは気が抜けてたという意味で反省するけど……それはそれとして不意に現れるのは女子的にはちょっと怖いよ」

「……? なんで怒られてるんだ?」

女子向けの配慮が足りなかったからじゃないかなぁ。

「ん、どこか納得がいかないが、それよりも現状報告。出てきた敵53体は全部片づけた。残敵は不明だが、施設内にいた奴のほとんどは片付けたと見ていい」

「なんで53体なのかはさておき、お疲れ様と労っておくべきかい?」

「いらない」

「う、ズバリ言うね……結構グサッと来たよ」

「シャロン以外の奴から労われても特に嬉しくない」

「あ~、そういう事かぁ……ちょっとしょんぼり」

「で、話を戻すが、あんた達二人の意思は理解した。じゃあ早速だが、情報収集を手伝ってもらいたい」

「それならあたしの得意分野だ! 任せろバリバリ~!」

「ん、潜入任務にマジックテープは致命的だな、敵味方等しく」

「確かにセインなら任せても大丈夫だけど……そのはずなんだけど、どうしても一抹の不安が拭い去れないね。一応、実績はあるのに……」

「なんだと~? あたしお姉ちゃんだけど、結構メンタル貧弱なんだからな~!」

「彼女が髑髏事件で見せた実力は知っている。だから能力だけは信頼している」

「だけって何だよだけって~!」

無神経な一言にむくれるセインだが、ケイオスはさっき能力だけでも信頼できる相手を始末しようとしていた。シャロンがあらかじめ止めていなければ、セインは今頃……と思うと、彼の切り替えの早さにゾッとするアインスであった。

「で、あんたの役割だが……」

「うん……私に出来ることなら何でもやるつもりだよ?」

「何も無い」

「え……」

そんな!? と効果音が響きそうな涙目で落ち込むディエチ。ドヤ顔をするセインとorzなディエチを眺めつつ、ケイオスは肩をすくめて理由を話す。

「さっきあんた達が使ってた武器は全て壊れたから、今は丸腰だ。装備を現地調達しない限り、戦闘要員としてはみなせない。だから何も無い」

「まあ、そうだよね……。セインと違って私のISは銃火器が無いとダメだし……でも手に入ったなら任せて。私のISは銃火器にエネルギーを送って火力を上げるものだから、例えばレールガンがあったらものすっごく役に立てるよ」

「ん、なるほど……電池か」

「待って、私電池じゃないよ!? いや確かにそれっぽいけど、私のアイデンティティーが揺らぐから電池扱いはやめて!」

今の台詞でアインスは、レールガンを抱えてるケイオスの背中に、気を付けの姿勢で真顔のままくっついてるディエチの姿を想像し、失礼だと察しながらもつい吹き出しかけた。なお、戦闘機人に関してアインス達はよく知らないので、ISの事はレアスキルのようなものだと認識している。

「(というかリンカーコアも役割を単純化すれば電池と同じかもしれない……。世の魔導師は皆必死に否定するだろうけど)」

「ん、これで潜入部隊の再編成は終わった。だが、改めて確認しておくことがある」

「私達の事かな?」

「ああ。あんた達が管理局に所属している以上、これ以上アウターヘブン社の作戦に付き合う必要は無い。さっきは戦闘に巻き込まれないようにここまでシャロンを連れてきてもらったが、これからは俺が背負うからあんた達は仲間の所に帰っても構わない。どうする?」

「そんな冷たい事言わないでくれ。ちゃんと最後まで付き合うよ」

「っていうか、帰り道がわかりませんよ。アインスさんにお願いして空を飛んで帰ればいいのかもしれませんけど、途中で襲われたら抵抗のしようがありませんし……」

「ん、理解した。なら引き続きシャロンを預ける。管理局員とはいえ、手伝う気があるなら活用させてもらう」

ここで「何も無いと言わず、初めから私に彼女を任せてくれれば良かったんじゃ……?」と言わない辺り、ディエチのささやかな気遣いがうかがえた。

「さて、任務を再開する前に、一度ミッド支部に連絡を取る。途中経過を報告するのと、この施設のどこを調べればいいか、シオンと相談しておきたい」

「うんうん、経過報告は仲間の進捗確認のために必要だよね~。わかるわかる!」

CALL。

『おや? ケイオスが連絡してくるとは、シャロンの身に何かあったのかい?』

「戦闘で色々あって意識を失っている。命に別状は無いから、しばらくしたら目を覚ますはずだ」

『無事なら良いが、あまり彼女に無理させないでね。ところでいつの間にか同行者がたくさんいるけど―――』

『ほう、潜入部隊と通信しているのか、シオ―――んなぁ、ディエチ!? セインもいるだと!? お、お前達、一体どうしてってそんなことより体は何ともないのか!?』

「え、トーレ? なんでトーレがそこに?」

「パニクってるトーレなんてめっちゃ珍しいからもうちょい見てたいけど、お~い! 元気~!?」

『どうしたんスか。トーレ姉がらしくないほどに興奮してるっスねぇ……って、あるぇぇえええええ!!!!??』

『あらあらあら……少し目を離してるうちに、そういう展開が起きてたのねぇ』

「ウェンディにクアットロ……! 良かった……皆、元気で……!」

「さっすがウェンディ、リアクション芸に磨きがかかってるぅ~! クアットロはいつも通りつまんない反応してるなぁ」

『あ~家族の再会で積もる話もあるが、それは皆が帰ってきてからにしてやろう。今は任務の話を優先するべきだ』

『チンクの言う通りね。ほら二人とも、モニターからさっさと離れる!』

『あ~れ~』

「……指示は出ていなかったが、ナンバーズは帰還していたんだな」

『戻ってきたのはついさっきなんだけどね……こほん。では、クアットロとチンクが二人を引っ張っていった所で、改めて任務の説明をしようか。潜入部隊は指定座標で確認された反応の正体を調査、それが敵の重要設備であるなら破壊も視野に入れて行動してほしい』

「ん、それでこの施設のどこを調べればいい?」

『端末を通じて至近距離サーチを行った所、反応のあった場所は本棟の地下、それもかなり深い。構造図に無い場所ってことは、間違いなく施設の外に続いてる』

「外とは?」

『その研究施設はあくまで通過点、地下にはもう一つのダンジョンが存在しているってことだよ』

「もう一つのダンジョン……研究施設は制圧したも同然だから、残るはその未踏査領域か。了解、これより潜入部隊はダンジョンの攻略を開始する」

通信切断、そしてすぐに移動を開始するケイオス達。ちなみに本棟に向かうまでの間に多くの寄り道があり、銃火器が無いか探しに行って文字通りすっからかんになってる倉庫の前でディエチがorzしてたり、アインスがかつてマキナの捕まってた部屋に行って鬱になったり、セインが基本的な設備は残ってるのにプロジェクトFやSEED関連の装置がごっそり無くなっていることに違和感を感じたりしたが、ともあれ一行は本棟の大広間で地下に通じるエレベーターの前に到着した。

「ん……このエレベーター、ボタンは地下4階までか。それより下に行くには……」

「どしたの? 早く行こ~よ?」

「下への行き方を確認しているから少し待て、セイン。……なるほど」

面倒くさそうにケイオスはエレベーターの床にある脱出用の非常パネルを開けた。そこから頭を出し、壁に付いているはしごを視認すると元の場所に戻ってきた。

「最下層に行くにはこの非常用のはしごを使えとのことだ」

「うわぁ、ずっと手入れされてないせいで錆びだらけだ。ちょっと体重かけたらポッキリ折れちゃいそうだね」

「では私が一回乗ってみるよ。飛行魔法が使えるから折れてもすぐに対処できるからね」

ということで安全確認のため、アインスがそのはしごに足をかける。一段、二段と降りたり昇ったりを繰り返し、

「うん、これなら大丈夫そうだよ」

「本当に? 密かに飛行魔法を展開して、折れないようにしていないか?」

「してないって……」

「そうか、ならそのはしごは最低でもあんたの体重分は耐えられると考えて良いのか。確かアウターヘブン社の情報網によれば、あんたの体重は「ピー!」……なんで遮る?」

「いきなり乙女の個人情報をバラそうとするからだ! そもそもなんで知ってる!? アウターヘブン社の諜報部は変態か!?」

「変態かどうかは知らないけど、管理局員の個人情報は大体把握している。例えばレジアス・ゲイズが実は痔を患っていて最近は胃潰瘍も併発しているとか、ゲンヤ・ナカジマがコスプレ好きでクイント・ナカジマを趣味に染めたとか、リンディ・ハラオウンが極甘党なのは苦味に対する味覚が敏感過ぎるからだとか、まあ簡単に上げるだけでこれだけ出てくる」

「確かにすごい個人情報だけど言う必要は無かったのでは!?」

ケイオスの性格だと何の気なしに他人の秘密をバラしかねないと思ったアインスは、できるだけ早く常識を彼に教えてやってほしいと、手綱を握るシャロンに願った。

「一応確認したが、はしごの状態を考えると行くのは少人数が良い。全員が行く必要も無いし、誰が残るか決めようか?」

「とりあえず私は残るよ。気を失ってるシャロンを危険な場所に連れて行く訳にもいかないし」

「あ、私も残ります。私はデバイス技術者であって、ダンジョン攻略や戦闘は本来管轄外なので……」

「私は……ついていくよ。今のままじゃ私、本当に何もしてなくて不安だから……」

「社畜精神乙! ま、あたしはサボれるなら思う存分サボりたい派だけど、役に立てるなら立ちたい気持ちもあるし、一緒に行くよ」

「決まりか。じゃ、俺とディエチとセインははしごを降りて未踏査領域に向かう。アインスとマリエルはシャロンと共に待機、本来の指揮権はシャロンが持ってるから以降の行動は彼女に訊いて」

「それは承知したが……ケイオス、行く前に一つ質問していいかな?」

「何だ?」

「君も知っての通り、私は闇の書の管制人格……つまりシャロンやマキナとの関係は加害者と被害者、彼女達を不幸の運命に陥れた元凶だ。そんな私にシャロンの命を預けて本当にいいのか? まあ、さっき敵から隠れる時に尋ねるべきだったし今更だとは思うけど、安全が確認できている今のうちに訊いておきたい」

「……。…………。……シャロンの意思だ」

「?」

「ギア・バーラーにはドライバーの心が流れ込むことがある。彼女の心が言っている……『リインフォース・アインスと新しい関係を築かなくては』と」

「新しい……関係……」

「報復心の先にあるもの……シャロンはシャロンなりにそれを掴もうとしている。彼女の意思がそうなら、俺はその意思に応える。で、彼女と直接話したあんたもあんたなりに応えようとしている。だから預けた」

「そう……それを聞かされたら、応えない訳にはいかないね」

「ただし、シャロンの意思が変われば、俺はこのギア・バーラーの力をあんたに向けることになるかもしれない。せいぜい気を付けることだ」

そう言い残し、ケイオスは一足先にエレベーターの下へ消えていった。ディエチとセインも後に続いていき、大広間にいるのはアインスとマリエル、まだ目を覚まさないシャロンの3人のみとなっていた。

「それじゃあ私達は彼らが戻ってくるまで、安全そうな場所で待つとしよう」

「了解です。できれば暖房付きの部屋がいいですね」

 
 

 
後書き
赤い宝石:ペンギンが見つけていなければ海の底でした。
アインス:はやて達はアルビオンに注意されたが、彼女とシャロンはもう行動しているという扱い。
開発資料:MGSV TPP より。装備品はゼノギアスより引用しています。
クロススーツ:ゼノギアス エリィ初期装備。デザインは彼女の服をそのままイメージしています。
エアステップシューズ:ゼノギアス シタン初期装備にステップシューズという回避+2の効果を持つ装備品があり、それに空中で足場生成の効果をプラスしました。
葉巻:実はこの作品において、シャロンは最も多くのスネークと関わっています。リキッドから社会的な居場所をもらい、ソリッドから生き方を諭してもらい、ソリダスから刀を通じて自由の勝ち取り方を教えてもらいました。ヴェノムは彼の在り方からして無理ですが、最初にして最後の一人はこの時点ではまだ存命なので……。
ザ・レイジング;中身はセイン。2年前の戦いでレヴィがダメージを与えていたので、シャロンでも倒せるぐらい弱体化していました。
ザ・クライング:中身はディエチ。実はステルス迷彩を付けてたが、ユーリの攻撃で壊れました。そのおかげで今回ケイオスがすぐ見つけ、あっという間に撃破しました。
ハールート:ゼノギアス 四柱神の一体。天よりふり注ぐもの を使います。
マールート:ゼノギアス 四柱神の一体。フュエルドレイン を使います。



マ「こんな状況でもやるよ~、マッキージムで~す!」
フ「普段、筋トレマッソーな弟子フーカじゃ」
マ「さて……今回は謝っておきたいことが一つあってね。実は声帯虫関連の展開がこの後に控えているんだけど、このご時世で感染症絡みの話をやるのはハッキリ言って不謹慎だと思うから、もしかしたら途中でご都合主義が働く可能性があるってことを先に伝えておきたいんだ」
フ「でも予定通りに進める可能性もあるかもしれないから、その時はその時で気分を害した場合はごめんなさい」
マ「ちなみに今、MGSV TPPの死してなおも輝くをプレイしたら、内容は変わって無いのに普段と違う感覚を味わえるよね。そしてヴェノムやマザーベースの人達がどれだけ凄いことを成し遂げたのか、今なら実感を伴って理解できると思うよ」
フ「今の世界を思うと、監督まさか予知しとったんかのう?」
マ「流石に飛躍してる気はするけど、ゲームを通じて危険性を教えてくれてた以上、あらかじめ備えておくことは出来たのかもしれない。色んな意味でメタルギアは大切なことを教えてくれるよね。じゃ、今日はここまで!」 
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