八条荘はヒロインが多くてカオス過ぎる
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第二百六十五話 冬の嵐の前その十七
「肝心の医学でね」
「脚気でやらかしてるからね」
「しかも変にドイツ崇拝強くて」
「子供さんの名前もね」
「今で言うキラキラネームで」
「舞姫ってあの人のお話よね」
「その説あるしね」
若くして死んだお友達の話という説もある。
「医師として、人間としては」
「駄目過ぎる人でしょ、だからね」
「別にいいんだね」
「脚気のことも舞姫のことも酷いから」
「だから福岡に行ってもだね」
「あの人のことはいいのよ」
かなり嫌そうな顔での言葉だった。
「というかお勉強出来てエリートのお医者さんで文学者でもあるから素敵とか目をキラキラさせてる人はね」
「絶対にそうした一面も見るべきだね」
「それは何も知らないからよ」
森鴎外ではなく森林太郎という人のことをだ。
「人間としては評判悪かったっていうし」
「色々とね」
権威主義で凄く上から目線で両親には絶対服従で頑迷で出世欲が強かったみたいだ。こう書くと本当にいい人じゃない。
「だからだよね」
「私としてはね」
「そうだよね、あの人については」
「正直どうでもいいわ」
「福岡でもだね」
「福岡に思い入れあったとも思えないし」
あの人にとっては赴任地の一つに過ぎなかったというのだ。
「だからね」
「あの人のことはよくて」
「ラーメン食べて」
博多のそれをというのだ。
「あとホークスの試合観ればね」
「いいんだね」
「そう思うわ」
僕にこう話したところで詩織さんはカレーを食べ終えた、そして僕もだった。
ハヤシライスを食べ終えた、そうして二人で食べた後の食器を下げて食堂を後にした。今思うと嵐の前の憩いの一時だった。
第二百六十五話 完
2019・12・24
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