戦国異伝供書
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第八十三話 和睦の間にその十
「出来る限りな、まあ先の話じゃ」
「今はですな」
「やはり安芸家とのことですな」
「まずは」
「うむ、和睦の期限となれば」
その時が来ればというのだ。
「動くぞ」
「ではそれまでに」
「こちらは用意を整え」
「安芸家のことも調べる」
「敵を知らねばな」
そもそもというのだ。
「戦になっても勝てぬな」
「はい、到底」
「敵のことを何も知らないでは」
「それでは勝てる筈もありません」
「戦はそれからじゃ」
だからこそというのだ。
「安芸家のことを隅から隅までな」
「まさにですな」
親泰が応えた。
「そこまで調べて」
「そしてな」
「戦に挑みますな」
「安芸家の領地の山や川、街や村のことにな」
それにというのだ。
「城の場所や形、大きさもな」
「そうしたところまで、ですな」
「調べ兵の数や家臣達のこともな」
そうしたこともというのだ。
「全て調べてな」
「そのうえで」
「戦うのじゃ」
「こちらを整えると共に」
「相手を手の中にある様になるまで調べるのじゃ」
その安芸家のことをというのだ。
「よいな」
「さすれば」
「して兄上」
今度は親貞が言ってきた。
「安芸家を徹底的に調べ」
「戦をするがな」
「調略は」
「それが使えるならな」
「それならですか」
「使いな」
そしてというのだ。
「そうしてな」
「弱めますか」
「それが出来ればな」
「ではその様に」
「していく、しかしな」
元親はこうも言った。
「わしが思うに安芸家への調略はな」
「難しいですか」
「一条家程乱れてはおらぬ様じゃ」
今見る限りではというのだ。
「ならばな」
「それで乱すことは出来ず」
「それでな」
「正面から戦うしかないですか」
「そう見ておる」
元親としてはだ。
「どうしてもな」
「左様ですか」
「それでじゃ」
元親はさらに話した。
「戦は正面からあたることになろう」
「それではこちらが有利ですな」
親益は長曾我部家と安芸家の兵の数から話した。
「やはり」
「うむ、そうなればな」
「左様ですな」
「しかし兵を多く死なせたり傷つけたりすることはな」
「よくないですな」
「数を頼りに正面からぶつかるよりもじゃ」
「頭を使い」
親益は兄の目を見つつ言った。
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