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戦国異伝供書

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第八十三話 和睦の間にその九

「若し大友殿が土佐の一条家のご当主殿を中村に戻されるとなると」
「その時は、ですか」
「中村に大友家に対することが出来る御仁がおられぬので」
「それで、ですか」
「一条殿は土佐に戻られますか」
「そうなりますか」
「うむ、しかし大友家の力が土佐もっと言えば四国に及ぶのは」
 このことはとだ、元親は怪訝な顔で話した。
「よくないな」
「はい、確かに」
「我等は四国を一つにするつもりです」
「それで大友家が来ますと」
 どうかとだ、弟達も述べた。
「厄介です」
「お帰り願いたいものです」
「それは」
「左様、これは今山陽と山陰で力を伸ばしている毛利家も同じじゃ」
 この家もというのだ、元親がその謀略故に警戒している家も。
「四国に来てもらっては困る」
「我等の領地となるからこそ」
「それ故にですな」
「来てもらいたくないですな」
「絶対にな、だからこの度の一条家のことはな」
 元親らはあらためて話した。
「よくないことじゃ」
「全くですな」
「では都のご本家にですか」
「そのこともお話しますか」
「そうしたい、これで一条殿がご本家の説得を受けてな」
 そしてというのだ。
「都に戻られればよい」
「その時は、ですな」
「それでよいですな」
「中村には我等が自然と入りますな」
「そうなる、だが」  
 元親は目を鋭くさせてこうも言った。
「これがじゃ」
「若し一条殿が都に戻られないなら」
「都のご本家に従わず」
「その時は」
「我等も覚悟を決めるか」
 こう弟達に言うのだった。
「土佐を一つにする為に」
「大友家のこともありますし」
「看過出来ぬので」
「それ故に」
「一条家と戦う」
 今このことを言った、それもはっきりと。
「その覚悟もな」
「しますか」
「そして実際にですか」
「一条家と」
「戦うか、大恩ある家であるが」
 このことは事実だがというのだ。
「土佐を一つにする為にはな」
「そして大友家の力を土佐に及ばさせない」
「四国には」
「その為にも」
「一条家と戦う」
 若し都に戻らねばというのだ。
「やはりな」
「ですな、では」
「その時にもですか」
「備えますか」
「そうしていくぞ、しかしな」
 ここでだ、また言った元親だった。
「やはりな」
「出来るだけですな」
「一条家とはですな」
「戦いたくないですな」
「そう思っておる」
 元親はその本音を述べた。 
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