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曇天に哭く修羅

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第二部
  刺客

 
前書き
_〆(。。) 

 
「シアンも家族で何か有ったの?」


《クリス・ネバーエンド》が尋ねると《立華紫闇》はこれまでのことを語り始める。

落ちこぼれと言われ、周囲の人間からは馬鹿にされながら生きてきたことを。

家族ですら彼を(さげす)んだ。


「俺さ、【夏期龍帝祭】で優勝したら認められると思ってたんだ。普通の家族になれるんじゃないかって。でも……」


紫闇の両親は今までのことを無かったかのように手の平を返して()びを売ってくる。

(てい)の良い金づる扱い。

兄は嫉妬を隠さなかった。

紫闇は彼等に失望し絶望。


「つーわけで縁を切ってやったよ」


クリスは頷く。

紫闇の気持ちが解るのだろう。

しかしくよくよしてはいられない。


「先ずは代表選抜戦!」

「それを勝たないとな」


クリスは自信たっぷり。

しかし今のままでは選抜戦を勝ち抜いて親善試合の代表メンバー5人に残ることが難しいという自覚を持っているはず。

姉の《エリザ・ネバーエンド》へリベンジする以前に戦いの舞台へ上がることすら夢で終わってしまう可能性が高かった。


(クリスは俺と同じだ。どれだけの否定にさらされても藻掻くことは止めないし諦めようとしない。細かな差異は有れど本質は同じ)


紫闇は心から願う。

彼女の幸せな結末を。


(何とか力になりたいが……)


◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇


「最悪の気分ね」


宿泊所の自室に戻って寝ていたクリスは悪夢にうなされて目を覚ます。

出てきたのは両親。

子供を駒としか思えない連中。

しかし夢にはもっと憎い相手が出た。

姉のエリザだ。


『本当に愚かね。自身が敗北した本質を理解できない無様で醜いクリス』


エリザは夢の中でクリスのことを外装である深緑色の細剣を以て斬り続ける。


『自分以上に対しての嫉妬・憤怒・破壊衝動といった捨てるべきものを貴女は捨てられない。何時まで経っても情けないまま』


クリスは何も出来ない。

泣くことだけ。


『貴女はそのままがお似合い。強さを得られずに弱さを抱えて生きて行くのよ。貴女が私に届くことなど無いのだから』


ベッドから起き上がったクリスはネグリジェのまま移動しようとしたが、いきなり部屋のガラスが割れる音が響いてくる。

目をやると誰か居た。

全身ダーク系の軍用スーツを着こんだ黒い仮面に両手は闇色の革手袋。

夜闇に紛れる為の出で立ち。


「来たわね」


状況と相手の様相にクリスは悟る。

大英帝国イギリスの刺客が来た。

自分を殺す為に。


◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆


硝子(がらす)の割れる音に気付いた紫闇が飛び起きた直後、爆発が聞こえてきた。


「無人島まで来たか!」


英国の刺客だと考えた紫闇。

彼はクリスの元へ駆け付ける為に爆発が起きる方へと向かっていく。


《イリアス・ヴァシレウス・グラディエ》

《矢田狂伯/やだきょうはく》

二人は島の外周を廻りながら警備しているので恐らく駆け付けることは出来ない。


「ちょっと急ぐか」


紫闇は窓ガラスを破って三階から飛び降り着地するも、そこを狙って何か近付く。

紫闇は反射で躱す。

それは空間に溶けるように消えた。


(刺客は【魔術師】だな)


銃弾が来た方向には黒一色の軍用スーツに身を固めた刺客が銃剣を構えており、再び紫闇を狙って攻撃を仕掛けてくる。

しかし当たらない。

紫闇は背中から金色に光る【魔晄】の粒子を放出して【音隼/おとはや】による高速移動を行うと連射される弾丸を尽く回避して近付く。

そして後ろ回し蹴り。

刺客は吹き飛び転がっていく。


「これが龍帝学園の[白狂戦鬼/バーサーカー]か。正面からでは勝てないな」


刺客は闇へと走り去った。
 
 

 
後書き
_〆(。。) 
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