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曇天に哭く修羅

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第二部
  怒り

 
前書き
(-.-) 

 
【龍帝学園】の生徒会長《島崎向子(しまざきこうこ)》が所有する無人島では【日英親善試合】の選手となる為に開催される【代表選抜戦】を勝ち抜く為の『合宿』が行われていた。

現在は一年の《クリス・ネバーエンド》と副生徒会長で三年の《春日桜花(かすがおうか)》が戦っているのだが、近接戦闘に関して苦手意識を持つクリスの動きがぎこちない。

合宿に同行しているクリスの幼馴染みかつ、英国(イギリス)最高の【魔術師】であり【魔神】の《イリアス・ヴァシレウス・グラディエ》はクリスが不調になっている原因を理解していた。

姉の《クリス・ネバーエンド》によって何度も何度も叩きのめされたことによるトラウマであり、イリアスもクリスが折れてしまった時にその場で見ていたのだから。


(春日桜花は剣の【魔晄外装(まこうがいそう)】だ。彼に近付かれる度にクリスの体が僅かに怯えている。だから避けられる筈の攻撃が避けられない)


闘技者として致命的な欠陥。

その弱点はクリス本人が一番痛感させられてきたことなので何とかしようと長年に渡って克服する為にチャレンジしてきた。

しかし出来ない。

それは【異能】にも影響を与えている。

彼女は様々な形状の外装を生み出すという異能を持ってはいるが、エリザのトラウマも有って近接用の武器を作ることが出来ないのだ。


(今回も駄目か……)


しかしクリスは諦めない。

今より強くなり、エリザをブッ壊し、自分の方が上になったことを証明する為に必死でもがき、運命に抗い、諦念を()じ伏せて前に進もうとしていた。


「立華君ならクリスを救えるかもしれない。何せクリス以上の地獄を乗り越えて来ているはずだからね」


◇◇◇◇◇◇◇◇◆◆◆◆◆◆◆◆


合宿5日目の訓練も終了。


「なあクリス。エリザと何か有ったのか?」


紫闇はイリアスの頼みも有って彼女のことを気にかけ観察していたのだが、クリスはこの5日間で全く成長が見られなかった。


「昔ボコボコにされてたの。そして刷り込まれた。こいつは私にとって『越えられない壁』なんだって。だからこそブッ壊してやりたい」


クリスは小さい頃からずっと家族の中で出来損ないという扱いを受けてきた。

故に努力の日々を送る。

だがエリザには勝てなかった。

挑んでは負け、泣きべそをかく。

そして弟分だった《レックス・ディヴァイザー》に慰められるの繰り返し。


「強いわよエリザ。もしかしたら普段の(・・・)ハルトに匹敵するかもしれないわ。まあハルトがその気なら瞬殺でしょうけど」


普段の《江神春斗(こうがみはると)》ということは、以前に紫闇が戦った時と同じくらいの強さを持っているのだろうか。

もしそうなら紫闇が見たエリザの試合映像では二割も出していなかったことになる。


(だとしてもエリザがあの時の俺が出した【禍孔雀/かくじゃく】を魔晄防壁だけで受け止めてノーダメージに済ませられると思わない)


風の絶対防壁も使えば別だが。


「私の親はエリザ打倒への努力と執念を一切認めず日本との人質留学に出しやがったわ。ったくやってらんないわよホント」


人質留学とは同盟国同士で行う交換留学の一種で両国の架け橋が目的とされる。しかし実態は人質の送り合いであり、表向きは普通の留学。


「何だよそれ」


紫闇は正気を疑う。

双方の貴人要人を交換し、理解していた間での問題が起こった万一の時、その人物を人質にして相手の国を脅す為に使うわけだ。


「私はそいつに選ばれた。ま、捨て駒だから価値なんて無いし、もしも事が起きたならイギリスは私に構わず日本ごと攻撃するわね」


イリアスもクリスの件には腹を立てており、彼が祖国に対して悪感情を持つ一因になっているが、別にそれだけがイギリス国内で暴れたり日本へ亡命した理由ではない。


「人ん()のことに口出ししたかあ無いんだが、お前の両親()最低だな」

 
 

 
後書き
_〆(。。) 
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