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蚊帳釣り狸

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第四章

「これからじゃ」
「ああ、蚊帳をじゃな」
「めくってじゃ」 
 そうしてというのだ。
「そのうえでな」
「確かめるか」
「どういったものか、どうすれば化かすのを破れるか」
「そうするか」
「今からな」
「しかしじゃ」
 ここで岡田は龍馬に言った。
「めくってもめくっても蚊帳が出て来てじゃ」
「話ではそうじゃな」
「しかも戻っても蚊帳がある」
 そうしてもというのだ。
「そうしたものらしいのう」
「ああ、それはな」
 岡田は龍馬の今の言葉に応えた。
「武市さんも言ってたな」
「そうじゃな、だからな」
「それでか」
「それならぜよ」
 龍馬は岡田に笑って話した。
「前に行くだけぜよ」
「そうするんか」
「そうぜよ、以蔵さんはどうする」
「わしはもう決めてるわ」
 笑ってだ、岡田は龍馬に答えた。
「おまんと一緒におるんじゃ」
「それならか」
「おまんと一緒に行くぜよ」
「そうしてくれるか」
「例え火の中水の中でもじゃ」
 岡田は龍馬に笑ったまま話した。
「ついて行くわ」
「そうしてくれるか」
「おう、行くか」
「以蔵さんの命預かった」
 龍馬も岡田に明るい笑顔で話した。
「今はのう」
「若し狸が出て来たら任せるんじゃ」
 その狸が襲ってきたらというのだ。
「わしがな」
「切るか」
「龍馬さんに何かしてこようもんなら」
 刀の柄に手を当てての言葉だった。
「わしがじゃ」
「狸を切り捨てるんじゃな」
「そうするきにのう」
「ははは、狸は人を化かしてもじゃ」
 それでもとだ、龍馬は岡田に笑って話した。
「それでもじゃ」
「襲いはせんか」
「狸や狐は人は襲わん」
 そうしたことはしないというのだ。
「別にな」
「そうしたもんか」
「そうした話は日本では聞かんわ」
 日本の話にはないというのだ。
「どうもな」
「そうなんじゃな」
「そうじゃ、だからな」
「わしが出ることはないか」
「以蔵さんの命預かるっていうのも大袈裟じゃ」
 自分が今言ったこの言葉もというのだ。
「それで言ったんじゃ」
「そうした言葉は」
「はったりじゃ、帰ったらな」
 その時にというのだ。
「今度は鰹を食うか」
「鰹か」
「たたきでのう」
「おお、いいのう」
 鰹のたたきと聞いてだ、岡田は笑って応えた。
「ならか」
「おう、命預かってな」
「帰って鰹をじゃな」
「武市さんと三人で食うぜよ」
「ならな」
 岡田は龍馬に応えた、そうしてだった。
 龍馬は次の蚊帳をめくって前に進んだ、岡田はその龍馬に従った。そして前に進むとそこにまただった。 
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