| 携帯サイト  | 感想  | レビュー  | 縦書きで読む [PDF/明朝]版 / [PDF/ゴシック]版 | 全話表示 | 挿絵表示しない | 誤字脱字報告する | 誤字脱字報告一覧 | 

何故四番に

しおりを利用するにはログインしてください。会員登録がまだの場合はこちらから。 ページ下へ移動
 

第二章

「他にいるのにな」
「リーもいればソレイタもな」
「加藤もいるだろ」
「それに栗橋でもいいしな」
「そうした連中じゃなくてか」
「落合か」
「落合が四番か」
 観客達は首を傾げさせつつ言うばかりだった。
「確かにいいバッターだけれどな」
「バットコントロールがよくてな」
「どのコースのボールも打つしな」
「相当いいバッターなのは確かだぜ」
「長打力もあるし」
「けれどな」
 それでもというのだ。
「はじめてオールスターに選出されたんだぞ」
「実績もこれからだろ」
「それなのに田淵とか他のバッター差し置いてか」
「落合か」
「西本さん思い切ったことするな」
「あの人の打順はいつもいいと思うけれどな」
 それでもというのだ。
「今回はな」
「ああ、どうなんだろうな」
「思い切りがよ過ぎるだろ」
「オールスターはお祭りでもな」
「落合打ってくれるか?」
「どうだろうな」
 誰もが落合の四番に驚いた、そして何故かと思った。それは落合自身が一番強く思っていて打順が発表されてもだ。
 ベンチの西本に怪訝な顔で尋ねた。
「あの、本当に俺で」
「ええんや」
 西本はその落合に笑って答えた。
「わしが決めた、そやからな」
「俺はですか」
「ああ、どっしりと構えてな」
 そのうえでというのだ。
「バッターボックスに立ってや」
「そのうえで、ですか」
「打ってくれたらな」
 それでというのだ。
「ええわ」
「そうですか」
「とにかく今日の四番はお前や」
 パリーグのそれはというのだ。
「頼んだで」
「それじゃあ」
 落合は戸惑いを隠せないままだった、それでだった。
 西本の言う通り四番で試合に出た、しかし。
 彼はノーヒットだった、観客達はその彼を見て話した。
「流石にな」
「いきなり若手が全パの四番とかな」
「無理があるよな」
「ノーヒットでもな」
「当然だよな」
「というかな」
 彼等は言うのだった。
「西本さん何で落合を四番にしたんだ」
「それだよな」
「あの人にしては珍しい采配ミスか?」
「そうかもな」
「今回はちょっとな」
「どうかと思うな」
「まああの人でも間違える時はあるな」
 ここでこうした言葉も出た。
「時としてな」
「まあ落合は確かにいいバッターだしな」
「今年首位打者獲るかも知れないし」
「選んだのは別にな」
「驚いたけれどそんなに間違ってないかもな」 
 彼等は色々と話した、それで落合自身試合の後で知人達にぼやいた。 
ページ上へ戻る
ツイートする
 

全て感想を見る:感想一覧