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八条荘はヒロインが多くてカオス過ぎる

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第二百六十三話 一番凄い人その三

「一時期北海道に来てるから」
「ああ、徴兵されるのが嫌で」
「北海道は徴兵免除されてたからね」
「だからだったね」
「北海道に来てるのよ」
「そうだったね、ただね」
 僕はその漱石さんについても述べた。
「あの人徴兵されたか」
「されなかったっていうのね」
「当時の徴兵って通ったらかえって凄かったから」
 それで兵隊さんになる方がだ。
「クラスで一人か二人位だったから」
「他の人は全部落ちてたのよね」
「甲乙丙丁の四段階で」
 この辺りの基準は時代を感じさせる言葉だ。
「甲でね」
「一番上でよね」
「しかも品行方正じゃないと通らないから」
「滅茶苦茶厳しかったわね」
「あの人確か肺が悪かったから」 
 このせいでだ。
「まずね」
「徴兵には通らなかったわね」
「通ってもね」 
 例えそうなってもだ。
「すぐに除隊とかね」
「なってたのね」
「志賀直哉さんは徴兵通って兵隊さんになったけれど」
 それで誇らしげに写真に撮ってもらっていたりする、軍服姿の若き日の志賀さんはかなりのイケメンだ。
「耳が悪いって言われて」
「それでなの」
「もうね」
 入隊してすぐだったらしい。
「ご本人凄く嬉しそうだったのに」
「除隊させられたのね」
「もうとにかくね」
 日本軍の採用基準はだ。
「採用される方が凄かったから」
「そんなのだったから」
「漱石さんだとね」
「徴兵検査通らなかったのね」
「まずなかったと思うよ」
「そうなのね」
「実際坊ちゃんでもね」
 というか漱石さんの作品自体がだ。
「徴兵に通ってる人出ないよね」
「そういえばそうね」
「戦前の作家さんでもね」
 その人達全体を見てもだ。
「志賀直哉さん以外にはね」
「兵隊さんになった人いないの」
「本当にまず甲種合格で」
 身体検査でそれにならないと駄目だった。
「品行方正じゃないとね」
「なれないから」
「もうなる方が凄かったから」
「じゃあ漱石さんは北海道に行かなくても」
「大丈夫だったよ」 
 一説には若くして結核だったというしそうした人が徴兵検査を通過するとはどうしても思えない。結核で軍隊に入れる筈がないからだ。
「僕が思うにね」
「じゃあ取り越し苦労だったのね」
「結果から見るとね」
「そうだったのね」
「それでも漱石さん日露戦争については」
 この戦争についてはというと。
「確か支持していたよ」
「反対じゃなかったの」
「色々妙な癖もあったけれどね」
 どういう訳か商売している人を批判する癖があった。
「それでもね」
「あの戦争については」
「やっぱりせざるを得なかったから」
「そうした戦争だったから」
「支持していたよ」
「あの戦争大抵の人が支持してたのよね」
「与謝野晶子さんもね」 
 君死に給うことなかれの詩の人もだ。 
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