八条荘はヒロインが多くてカオス過ぎる
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第二百六十二話 夜の屋上でその五
「代々大地主で秋田の地方財閥で」
「お金持ちだったの」
「それで県会議員も出していて」
「名門なのね」
「その家の娘さんと八条家の生まれでも破天荒な遊び人の親父だと」
何しろ中学生の時から有名な遊び人だったらしい、そして今は遊びの達人とさえ呼ばれている。こんな達人はいらないと思う。
「駄目だってね」
「なったの」
「婚約者とかはいなかったらしいけれど」
あくまで聞く限りではだ。
「それでもね」
「お父さんは駄目って言われて」
「それでも親父とお袋相思相愛で」
お袋が言うには破天荒で浮気三昧でも持っている心がいいから好きになったとのことだ。
「それでね」
「お母さんのご実家の反対を押し切って」
「親父一人の力でね」
八条家の力とか使わなくてだ、親父は八条家の人でも家の力は使わない。
「結婚して神戸までお袋と行ったんだ」
「それで神戸で結婚したのね」
「そうなんだ」
「駆け落ちみたいね」
「実際それに近かったみたいだよ」
八条家の人達つまり僕の親戚の人達から聞いた話だ。
「どうも」
「それで結婚したから」
「秋田の方にはね」
「行ったことがないのね」
「どうも大地主で地元の有力な家でも」
今でも秋田で相当大きな企業を経営していて資産もかなりらしい。
「いい家じゃないらしいし」
「悪いこともしてるの」
「何かあっちのヤクザ屋さんの元締めでもあるらしいから」
秋田の方のだ。
「裏にも顔が利くとかね」
「そっちにもなの」
「結構黒い部分もあるらしいから」
このことも親戚の人達に教えてもらったことだ。
「だからね」
「義和は秋田には行ったことがないのね」
「お袋秋田の話しなかったし」
全くだ、僕に話したことは全くなかった。
「親父は余計にね」
「秋田のことはなのね」
「もう一切だったから」
「そうだったの」
「香織さんが秋田の人でも」
それでもだ。
「僕も秋田の話しなかったね」
「色々あってなのね」
「そうなんだ」
「それでだったのね」
「そのお袋もね」
「確か行方不明よね」
「そうなんだよね」
学校から帰ったらいなくなっていた、そして探せど探せど姿は見付からない、まさに神隠しに遭っている。
「これが」
「何処にいるのか」
「一切なんだ」
「わかっていないの」
「本当に行方不明で」
「何もなのね」
「今何処で何をしているか」
それこそだ。
「わかっていないんだ」
「そうなのね」
「生きていればいいけれど」
心からこう思っている。
「本当にね」
「やっぱりそう思うわよね」
「うん、けれど」
「行方は全くわからないのね」
「そうなんだ、ただ親父はね」
「今もなのね」
「必死に探してるから」
お袋をだ。
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