夢幻水滸伝
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第百二十六話 ドラゴンと陣その六
右手首を切り落とされた、玲子は地面に転がった己の手首を見て言った。
「はじめてだよ」
「手首を切られたことはか」
「ああ、やっぱり凄いねあんた」
「もう一つ言っておく」
ここでテレサが言ってきた。
「私の今の攻撃をかわせたのは自分がはじめてや」
「へえ、そうなのかい」
「そうだ、鎌ィ足で切り刻まれるか」
「さっきので真っ二つだね」
「そうなっていた」
玲子の前に着地して述べた、玲子はその間に右手首を拾って切られた部分に付けて術で回復させている。
「これまではそうだった」
「それがだね」
「右手首だけで済んだ、しかもだ」
ここでだ、テレサは。
口から血を垂らした、そのうえで玲子にこうも言った。
「今一撃を浴びせるとはな」
「それでだったけれどね」
「右手を切られたか」
「攻撃をかける瞬間が一番の狙い目なんだよ」
まさにその時がとだ、玲子はテレサに答えた。
「まさにね」
「それでか」
「あんたの腹に拳を打ち込んだんだよ」
切られた右手でというのだ。
「術、それも瀕死の術を込めてね」
「そうしたな」
「一か八かでやって」
「右手を切られてもか」
「やったね、これでだね」
「私の負けか、術を使おうにも」
それで体力を回復させようにもとだ、テレサは話した。
「もう私の気力は尽きている」
「一騎打ちの中でね」
「自分もその様だが」
「今右手をくっつけたので終わりだよ」
玲子の気力も尽きているというのだ、右手はしっかりと動いていて全く問題ない。
「あたしもね、けれどね」
「体力はまだあるな」
「半分位だけれどね」
「自分に瀕死の状況で闘おうともな」
「負けるっていうんだね」
「そうだ、私の負けだ」
ここでテレサは完全に認めた。
「勝手にするがいい」
「じゃあさっさと戦場を離脱するんだね」
「それでいいのか」
「いいってあんた負けたんだろ」
玲子はテレサにこう返した。
「だったらね」
「それでいいのか」
「負けたらそれでいいんじゃないかい?」
「首は取らないのか」
「いや、勝ったらそれで終りだからね」
玲子は朱槍を右手に笑って返した。
「だからね」
「私が戦場を離脱してか」
「終りだろ、じゃあね」
「そうか、ではな」
「あたしは軍勢同士の戦に行くからね」
「他の者の助太刀はしないか」
「しないよ」
笑ってだ、玲子はテレサに答えた。
「皆勝つからね」
「確信しているか」
「そうだよ、じゃあね」
「戦が終わった時にか」
「また会おうね」
「いい心意気だ、自分と闘ってよかった」
テレサは玲子の心意気を聞いて笑って返した。
「満足して戦線を離脱しよう」
「そうするんだね」
「負けてもこうした気分で離脱出来るなら」
それならというのだ。
「これでいい」
「そうかい、じゃあね」
「また会おう」
「戦が終わったら飲むかい?」
「いいな、楽しみにしている」
テレサは玲子に笑って応えた、そうしてだった。
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