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戦国異伝供書

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第七十七話 諱その十

「だからな」
「一度旗を挙げれば」
「その時は、ですな」
「浅井家は無論共に兵を出してくれますし」
「六角家もですな」
「力を貸してくれますな」
「両家は犬猿の仲であるが」
 それでもというのだ。
「幕府の為ならな」
「六角も立ってくれるので」
「三つの家が力を合わせて」
「そうしてですな」
「三好家と争っても」
「わしが破る」
 三好家の兵達はというのだ。
「そうする」
「そしてですな」
「あの方を新しい公方に立て」
「そしてですな」
「そのうえで」
「うむ、上洛を果たせるが」
 それでもとだ、宗滴は言うのだった。
「殿がな」
「上洛されませぬな」
「あの方は必死に促しておられますが」
「それでも」
「殿はあくまで越前じゃ」
 この国のことのみを考えているというのだ。
「この国を保つことが絶対でな」
「他のことはですな」
「一切考えられることはなく」
「それではですな」
「この度は」
「そうじゃ、それでじゃ」
 そのうえでというのだ。
「この度もな」
「動かれず」
「それで、ですな」
「上洛されず」
「一向一揆ですな」
「あちらに備える」
「そればかりですな」
「そうじゃ、これではな」
 どうにもと言うのだった。
「どうにもならぬ、しかし実はな」
「実は?」
「実はといいますと」
「越前と保つことは間違っておらぬ」
 義景のこの考えはというのだ。
「別にな」
「問題はそこからですな」
「織田家が上洛する」
「その時ですな」
「当家はどうするか」
「そうじゃ、浅井殿の様に」
 まさにというのだ。
「当家もな」
「織田家と結び」
「そうしてですな」
「家を保つ」
「この越前一国を」
「そうあるべきじゃ」
 何としてもというのだ。
「やはりな」
「それで、ですな」
「今も殿に言われてますな」
「あの方に」
「お館様に」
「そうしておるが」
 しかしというのだ。 
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