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真恋姫を駆けた男

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母の死

~真紅狼side~
今、曹家の親しい者だけ集めて葬儀を開いてる。
様々な人が来ていた。
生前、義母さんに世話になった者、義父さんの部下、近くの豪族などが来ていた。
その者たちは義母さんにお辞儀した後、義父さんそして華琳に礼をしたあと、俺に対してはひそひそと話していた。
内容は想像できた。


「奴を引き取ってから、彗琳さんの体調がおかしくなった」
「奴は疫病神だ」
「アイツが殺した」


のだと謂われの無い中傷だった。
が、別に何を言われようが俺は一向に構わなかった。
今から始まったわけではないのだ。この類は。
四年前から、謂われ続けてきたものであった。たまに義母さんの中傷もあったが、義母さんは「大丈夫ですよ」と優しい顔をしていた。
だから、せめて今日ぐらいは中傷も批判も無い一日を過ごして欲しかった。


だが、それをブチ壊すグズがいた。


地位がちょっと高い豪族だった。その豪族は以前義母さんに叱られたことがあってそれを根に持っていたらしい。義母さんが死んだことを良いことにたくさん暴言を吐いた。


「ようやく死んでくれたぜ、この女。」
「・・・・・・・・・・・・・・・」
「こいつが拾ったっていう、クソガキが不幸をもたらしてくれたおかげでよう。」


一気に視線が俺に集まるが別に構わない。問題はコイツをどうやって“殺す”かだ。


「だいたいこの女大した地位もないのに生意気なんだよ」


と言いたい放題だった。
義父さんも言い返せなかった。まだ曹家はこの豪族よりも若干位が低いためだ。
そこに華琳がその豪族の立ちふさがった。


「母上に謝れ!」
「あん?なんだクソガキ誰に口を聞いてるんだ!!」


バシッ!


「きゃあ!!」


華琳は豪族による裏拳で思いっきり壁にぶつかり、蹲っていた。
その後の行動でこの豪族の未来が決まった。


「子が子なら、母親も母親だな「ドガッ!」」


義母さんの棺に足蹴りを放った瞬間、俺はスイッチが入った。
~真紅狼side out~


~華琳side~
母上が死んだ。
皆は義兄さんのせいだと噂しているが、元より母上は身体が弱かったのを知っていた。だから、本来は義兄さんのせいではないのだ。
だけど、その内の一人の男が母上を侮辱し、故人に暴力を振るった。
それを私は許すことが出来なかった。


「母上に謝れ!」
「あん?なんだクソガキ誰に口を聞いてるんだ!!」


バシッ!


「きゃあ!!」


ひと思いにひっぱたいてやろうと思ったけど、敵わなかった。
さらに母上を侮辱した時、義兄さんが動いた。
・・・何かを纏って。
~華琳side out~


~真紅狼side~
「・・・・・・・・・・・」


ゆっくりと俺は歩み寄る。
片手には『七つ夜』と書かれた短刀を持ちながら・・・。
豪族は調子に乗っているせいか気が付かない、この場が一人の少年から溢れるほど滲み出る“死”のオーラで包み込まれていることを。
少年の顔を長く見てきた者しか・・・いや、それすら分からないかもしれない。
少年の眼が“真紅”から“蒼”に変わっていたことを。


「・・・・・殺す」


この呟きを聞きとれた者はどれほどいようか。
すでに真紅狼は姿を消していた。


気が付いた時には、豪族の目の前にいた。


「・・・斬る」


――閃鞘・七夜――


「・・・ハハッ・・ハ?」


ザシュ!


「ぐぁ!?」


そこからの光景は酷いものだった。簡単に人を殺せるほどの力があるのにそれをせず、豪族を嬲っていた。


「ぎゃああああ!!!」
「・・・・・・・・・」


もうすでに男の姿は満身創痍だった。
至る所に切り傷があり、全身から血が流れ出ていた。
しかも、片足のアキレス腱を切っており、まともに動けるものではないのに真紅狼の嬲りは止まらず、もっと加速していった。
・・・が、すでにコイツに興味が無くなったのか、仕留める気だった。
だが、そこに歯止めをかけたモノが居た。


「止めろ、真紅狼!」
「・・・・・・・・」
「彗琳はそんなことを望んでいないハズだ!!」
「・・・・・・・そんなこと俺には関係ない。俺が殺したいから殺す。ただそれだけだ。」
「・・・義兄さん」
「・・・・」
「義兄さん、もう止めてください。母上も怒ってくれたことには感謝してるはずです。」
「・・・・・・・(スッ」


真紅狼は構えてた短刀を降ろし、元に戻った。


「分かった・・・止めにしよう。・・・だが、ケジメは付けさせて貰う。」
素早く短刀を構え、痛みに呻いていた男の元に突っ込んだ。


「極彩と散れ・・・・」


たった一瞬だったが、その間の出来事は真紅狼本人しか知らない。
ただ、違ったとすれば、真紅狼の立ち位置だけだが、そのあと事が動き出す。


ゴトッ・・・・


「「「「「え?」」」」」
「ぎゃああああああああああああ!!!!」
あまりの痛みにのたうちまわっている豪族。


「受け取れよ、アンタへの手向けの花だ」


真紅狼はそう言い残し、壁によっかかっていた。


「お、俺の腕があああああああ!!」


豪族の右腕は綺麗さっぱり両断されていた。
真紅狼は豪族とすれ違った際、肩の付け根からバッサリと「死の線」をなぞって斬ったのだ。
その腕は二度と使い物にならないように。


こうしたあと、豪族は急いで自分の土地に帰っていった。
騒然とした葬儀も終え、真紅狼は家に帰り、旅を出ることを決意した。
だが、その前に一週間ほどゴミ掃除に手間がかかり、出立するのに遅れ、華琳に発覚されることとなった。
~真紅狼side out~ 
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