夢幻水滸伝

「他の勢力にもな」
「勝てるわね」
「この世界の太平洋と地下世界の覇者は我々だ」
　リーは言い切った、そうしてだった。
　無何有郷の進路そして速度はそのままとした、このことは日本も把握していて芥川は斥候に出ていた滝沢と正宗からその話を聞いて言った。
「戦の常道を冷静に守ってるな」
「南洋は」
「そうだというのですね」
「そや、こうした時はな」
　まさにというのだ。
「焦ったらあかん」
「それで、ですか」
「南洋もそう動いていますか」
「そや、けれどその速度で来てくれるなら」　
　それならというのだ。
「こっちの考え通りや」
「はい、それではですね」
　丁度軍師としてその場に来ていた雅が言ってきた。
「彼等が私達の近くに来た時に」
「こっちは用意を整えている」
「左様ですね」
「そしてな」
「そのうえで、ですね」
「こっちが仕掛ける」
「用意を整えたうえで」
「そしてな」
　そのうえでというのだ。
「戦に入ってな」
「勝ちますね」
「そうする、ええな」
「ではこれよりですね」
　正宗が芥川に問うた。
「我々は」
「そや、もう千歳ちゃんも用意出来てる」　
　風水師である彼女もというのだ。
「今からやるで」
「それでは」
「またこれは」
　今度は滝沢が言った。
「突拍子もないですが」
「そう思うやろ」
「誰も考えつかない様な」
「そこをあえてやらんとな」
「敵の意表を衝かねばですね」
「兵の数で劣ってるからな」
　だからだというのだ。
「それでや」
「敵の意表を衝くのですね」
「それで僕もかなり考えたからな」
「それでこの策ですね」
「リーもシェリルも頭がええ」　
　このこともだ、芥川は考えの中に入れていた。敵を知っているということだ。
「それでや」
「普通の策ではですね」　
　雅も二人のことを知っていて言った。
「二人には通じない」
「しかも大軍を相手にするんや」
　このこともだ、芥川は指摘した。
「そやったらな」
「思い切った奇策ですね」
「それを使うんや、二人共確かに頭がええ」
　リーもシェリルもというのだ。
「四智星だけあってな、それは僕も同じやが」
「それぞれタイプが違いますね」
「リーは学問と政でな」　
　彼はこの二つに秀でているというのだ。
「シェリルちゃんは術や」
「そちらですね」
「二人共それぞれ僕より上や」
「リーさんの学問、その教養ですが」
　正宗も言ってきた。
「太平洋及び地下世界の星の方で随一ですね」
「学者だけあってな」
「左様ですね」
「見事な学者や、もうそれこそや」
　こと学問そしてそれを学んで得る教養はというのだ。
「リーには誰も勝てん」
「芥川さんでも」
「僕なんか足元にも及ばん」
　こと教養においてはというのだ。