ようこそ、我ら怪異の住む学園へ
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其の参 鏡の世界
第十九話 別世界の噂
「———元宮くん。ねえ、本宮くんてば」
気付けば、僕は寝てしまっていたようだ。四限目の授業の途中までしか記憶がない。
ヒロトさんもアイカさんも授業に来なくて、ついつい眠くなっちゃったんだっけか。
そういえばここ最近、鬼神様にも会ってない気がする。
顔をあげれば、そこには朔楽ちゃんが居て、声をかけていたのが朔楽ちゃんだと分かる。
「珍しいね。本宮くんが居眠りなんて。とりあえず、一緒にお弁当食べよ?」
「あはは、そうだね……」
何故、僕が女の子と仲良くできるか。しかも、クラス一美少女の朔楽ちゃんと。
理由は単純。僕達が学級委員同士だから。
……はぁ、学級委員なのに居眠りなんて、失格だあ。
でも仕方ないじゃないか。
昨日、去り際に鬼神様が呟いた言葉が気になって寝れなかったのだから……!
『お昼の時間です。今日は皆さんに、学校の怪談を一つ紹介したいと思います』
「あ、始まったね。ウチの学校名物の『お昼の怪談話』。今日はなんだろ」
一週間に一度、怪談好きの放送委員会の先生が考えたこの時間がやってくる。
基本的にこの時間の放送は、新聞部からのお知らせや、生徒会や先生からの話だったりで、退屈なものばかりなのだが、木曜日だけはこの怪談話と決まっている。
これだけは僕にとっても楽しみなんだ。
『今日の噂は———「鏡の世界」』
———新校舎の四階から屋上へ上がる階段を上ったところにある、大きな大きな古い鏡。
普段は変哲もない、ただ古びた鏡。特徴とすれば、大きいことと古いことだけの、ただただ普通の鏡。
でも満月の夜だけ、その鏡はただの鏡から別のものへと変わってしまいます。
『全てが反対の、おかしな異世界への扉……にね』
———現実に不満を抱いている貴方。満月の夜、そこに立ってみてはどうですか?
その世界では全てが反対……つまり、貴方の不満も幸せに変わりますから。
さあ、貴方はどうしますか?
短いその話でも、ゾッとする部分はたくさんある。
うるさかった教室は静まりかえり、「こえー……」と何人もが呟く。
『これで今日の話はおしまい。また来週……』
今日は鬼神様のところに行ってみようかな。
もしその鏡が本当に異世界への扉になるのだとしたら、鬼神様が壊そうとしているかもしれないし。
「あ、私この話知ってるよ。最近では試しに行った人達が行方不明になってるって……」
「え、それ本当に?」
「うん、そうらしいよ。お兄ちゃんが言ってた」
朔楽ちゃんがそういうと、それが聞こえていたのか更に周りが静かになる。
……そうだとしたら、間違えなくそれは鬼神様が黙っていないじゃないか!
しっかりと噂を変えに行かなくちゃ、だな。
そう決意して、俺は早めに弁当を平らげた。
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