夢幻水滸伝
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第百二十三話 台風の中へその十四
「そちらのお芋もよく食うでごわす」
「ジャガイモもいいだがや」
坂口は今は薩摩芋を食べつつ北原に応えた。
「あれはあれで美味しい料理が多いだがや」
「全くだな、肉じゃがもそうだしな」
「カレーには絶対に入れるだがや」
「そしてドイツ料理でもな」
「よく使うだがや」
それでというのだ。
「それで食うだがや」
「そうだな、チーズやバターと合うのがいい」
室生は笑ってこうも言った。
「確かにかなりいける」
「全くだがや」
「おいどんとしてはでごわす」
北原は薩摩芋をさらに食べつつジャガイモについても言及した。
「肉じゃがが一番でごわす」
「そちらか」
「あとはタラモサラダもよかでごわすな」
「鱈子を入れたサラダだな」
「あれも好きでごわす」
「ああ、鱈子を入れたマッシュポテトだぎゃな」
タラモサラダと聞いてだ、坂口はこう応えた。
「あれは確かに美味いだがや」
「あれはマッシュポテトか」
「違うだぎゃ?」
「そう言われるとな」
どうかとだ、室生も否定せずに返した。
「そうだな」
「おみゃあもそう思うだぎゃな」
「全くだ、ただ」
「ただ?」
「やはり違うとは思う」
タラモサラダとマッシュポテトはというのだ。
「私としてはな」
「鱈子が入っているからだぎゃな」
「そうだ、似ていることは事実でもな」
「マッシュポテトはマッシュポテトでだぎゃな」
「タラモサラダはタラモサラダだ」
そうなるというのだ。
「私はそう思う」
「そうだぎゃな」
「何といってもジャガイモも痩せた土地で育つでごわす」
そこがいいとだ、北原は言うのだった。
「それが実によかでごわす」
「そこほんまに重要だぎゃ」
「全くだ」
坂口も室生もそこは同意だった。
「米や麦が育たない場所でも育つ」
「それがいいだがや」
「おいどんは薩摩と大隅ば治めていたでごわすが」
北原はまだこの世界に来たばかりの時のことも思い出していた、今ではもう懐かしいことになっている。
「この二国はこの世界でも桜島が噴火してばかりでごわす」
「それで火山灰が、だぎゃな」
「そうでごわす、長年降り積もって」
そしてというのだ。
「火山灰の土地になってるでごわす」
「だからだぎゃな」
「土地は痩せているからでごわす」
「芋は有り難いだぎゃな」
「まさに主食でごわす」
薩摩そして大隅ではというのだ。
「それでどれだけ助かっているか」
「まずは食べないとな」
室生もその現実を指摘した。
「だからだな」
「そうでごわす、土地は痩せていても」
「食べることは必要だ」
「だからでごわす」
「芋はだな」
「これ以上はないまでに有り難い作物でごわす」
「それで主食にしているな」
室生もわかっていることだった。
「そうだな」
「そうでごわすよ」
「そうだな、ではな」
「今はでごわすな」
「おやつとして食べよう」
「ええおやつだがや」
坂口も言った、そうしてだった。
三人は薩摩芋も食べて楽しんだ、そのうえで英気を養っていた。決戦が近いことはわかってたがそれでも楽しむことは楽しんでいた。
第百二十三話 完
2019・7・23
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