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ようこそ、我ら怪異の住む学園へ

作者:エギナ
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其の壱 四番目の鬼神様
  第二話 四番目の鬼神様

 あの日、元宮は死ぬはずだった。
 何故なら、四番目は願いを叶える鬼神様と呼ばれる怪異であるから。

 ———だが、死ななかった。





「…………う、うわあぁぁあああ‼︎」


 元宮が包丁を振り下ろす。だが、その包丁は四番目の頭に食い込むこともなく、空を切る。
 その後も何度も何度も四番目を切りつけようとするが、全てその刃が四番目を切ることはない。


『何をしているの、愚か者。私はそもそも実体がないから、切れるわけがないでしょう?』


 四番目が足を振り上げる。そして元宮の頭蓋を砕こうとして———すり抜ける。
 元宮はようやく包丁を振る手を止めて、立ち止まる。やがて包丁を床に落とし、頭を抱え……そして。


「えぇぇぇぇぇぇぇえええええええええええええええ⁉︎⁉︎」


 と、叫んだ。





 ———それが昨日の話。


『おお、来たね元宮少年』


 今日は四番目に呼ばれて、元宮は再度図書室の奥へとやってきた。
 そこには当然のように四番目が居て、元宮は顔を顰めた。


「……なんで殺してくれないんですか」
『ん? 少年が面白いからだよ。それより、頼みたいことがあるんだけど———』

「ふざけないでください‼︎」


 声を荒げた元宮に対し、多少なりとも驚いたようで。四番目は目を見開いて硬直している。


「願いを叶えてくれるって……そう聞いてたのに、なんで叶えてくれないんですか! それに四番目の悪鬼は人の命を奪ってるって……‼︎」


 そこで、彼は言葉を止めた。いや、止めるしかなかったというのが正しいか。
 彼の喉元には錆びた刀が添えられていて、あと少し動かせば喉を裂き、首を飛ばすことだってできる。


『———それは私のこと?』


 段々と刀が喉に食い込んでいく。一ミリ、二ミリ……


『面白い噂だね、少年。君はそれを信じるの?』


 もう少しで死んでしまうという恐怖から、元宮の体が震え始める。三ミリ、四ミリ……


『私はこの刀で沢山の命を奪ってきた。勿論君の命だって奪うことは可能だ』


 と、そこで刀を押し込む手が止まる。
 四番目は大変面白そうに元宮の顔を覗き込む。恐怖で真っ青を通り越して真っ白になった彼の頬に手を添え、そして言う。


『聞こう。君はこれでも死にたいと思う?』
「……………………い、い……え」


 震えた声が静かに響く。それを聞けば、四番目はパッと刀を抜いた。


『……ぷっ、あはははは‼︎ 面白いね、やっぱり!』


 急いで喉を触る元宮。だが、その手に血はついていない。というか血はおろか、傷さえついていない。
 腹を抱えて笑う四番目に対し、動揺する元宮。彼女は刀を彼の前に差し出した。


『こんな錆びた刀じゃ人なんか斬れない。阿呆か、元宮少年……って嗚呼、人間だから結局は阿呆だったね‼︎ あっはっは!』


 遂に、元宮は頭を抱えて蹲った。 
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