ようこそ、我ら怪異の住む学園へ
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其の壱 四番目の鬼神様
第一話 鬼神様の噂
———貴方は知ってる?
学園に伝わる四つの噂。
炎に焼かれ死んだ悪鬼の噂。
その悪鬼が怪異となりて人間に化けているとか……
大地に飲み込まれ死んだ悪鬼の噂。
その悪鬼が怪異となりて校舎を操っているとか……
月に照らされ死んだ悪鬼の噂。
その悪鬼が怪異となりて影に潜んでいるとか……
兵士に殺され死んだ悪鬼の噂。
その悪鬼が怪異となりて命を奪っているとか……
危険な怪異だけど、なんでもその四つの噂の怪異は違うんだって。
なんでも願いを一つ叶えてくれるんだ。
願い? そんなバカなことがあるか。
そもそも会っただけで死んでしまう。
ふふ、それもそうね。でも教えてあげるわ、“四番目”の噂。
———図書室のどこかにある隠し扉。その奥に写真が飾られてる部屋があるの。
そこの一つ。綺麗な兵隊さんの服を着た女の人が写っている写真に向かって、ある言葉を言うの。目を瞑ってね。
そうすると、一つ願いを叶えてくれる代わりに、何か大切なものをとられてしまうの。例えば……貴方の身体とか。
願いを言った後すぐに目を瞑ったまま、包丁で写真を突き刺す。そうすれば“鬼神様”はやってくる———
って、あら。また一人、試す人がいるそうね。
またお話を聞きにきて頂戴。いくらでもお話しましょう?
「『四番目の鬼神様、どうか私の願いを叶えてください』」
薄暗い図書室の奥の部屋。
埃を被った額縁の前で、青年は目を瞑り、両手を強く握りしめながら言った。
「———僕を殺してください」
青年は包丁でボロボロの写真を一突きする。ザクッと音を立てて、包丁は突き刺さる。
そこで、青年は目を開けた。しっかりと写真に包丁が刺さっていることを確認した後、溜息を吐く。
「……やっぱり、噂は嘘だったのかな」
『なんで?』
青年が声の方向を向く。
刹那、大きく開いた襟から覗く白い肌が朱に染まる。悪鬼が青年の首筋に噛み付いたのだ。
『私を呼んだのは君かい? 随分と痩せこけた人間だねぇ血は上等なモノだが』
腰まで伸びた黒髪に、漆黒の瞳。真っ赤に染まる口元から生える、鋭い牙。
軍服を纏ったソイツこそ、噂の四番目の鬼神様。
『少年、名前は?』
小さい声で、青年は「元宮」と呟く。
彼、元宮は写真から包丁を抜いて、四番目へとそれを向ける。そうすれば、彼女は口元に大きく笑みを浮かべた。
『……ふふ、あははははは‼︎ 気に入った、元宮少年。いいよ、殺してみな、あの隊士のようにねえ!!』
元宮は床を蹴り、四番目との距離を詰めた後、包丁を振り下ろした。
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