夢幻水滸伝
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第百二十一話 台風その十一
「フィリピンの東で発生しようとしてる」
「あちらで、ですか」
「そや、それでな」
「我々はこれからですね」
「そこに向かってな」
そのフィリピンの東にというのだ。
「そしてや」
「台風の目の中に入って」
「そしてや」
そのうえでというのだ。
「あの中からな」
「私が台風を操りますね」
「そや、そこは頼むで」
「わかりました」
千歳は中里に答えた、そしてだった。
彼と又吉のところに駆けてきた、小人族なので二人の間に来ても大きさは膝のところにも届かない位だ。
だがそこから術で宙に上がって中里の横に来て言うのだった。
「やらせてもらいます」
「台風操れるだけの力あるな」
「実際操ったことあります」
「蝦夷に台風が来た時にやな」
「蝦夷は台風は殆ど来ないですが」
それでもというのだ。
「来る時は来てです」
「そしてやな」
「蝦夷まで来るとなると」
そうした台風はというのだ。
「結構強いもので」
「そやからやな」
「その台風を操って風の力を弱めて雨の力も程々にして」
「台風の恵みだけをやな」
「蝦夷に来てもらったこともありますから」
そうした経験があるからだというのだ。
「ですから」
「そうか、ほなな」
「はい、台風のことは」
「任せてもええな」
「他にも日本はこの世界でも災害が多いので」
「地震やら雷やらな」
「火事もですね」
「何でもあるな」
中里も言うことだった。
「ほんまに」
「そうしたものも操って災害をなくすか最低限に抑えてきまして」
「台風についても」
「必ずです」
「操ってくれるんやな」
「はい」
こう中里に答えたのだった。
「お任せ下さい」
「そうさせてもらうで、ではな」
「これからですね」
「戦まで時間があるさかい」
それでというのだった。
「ちょっと休むか」
「そうですね、緊張してばかりでもいけません」
又吉も真面目な声で答えた。
「ですから」
「今はな」
「休みこともいいですね」
「ちょっと寝て来るわ」
こう言ってだった、中里は自分の寝室に入ってそこで寝た、彼が睡眠に入っている時井伏と山本は食堂の中で二人でお好み焼きを食べていた。
安芸のお好み焼きを鉄板の上で次々に焼いて食べる、二人でそうしている中で井伏はふとだった。
自分達の席の近くに来た石川にこう声をかけた。
「こんなも食うか」
「遠慮は無用じゃけえ」
石川に顔を向けて声をかけた。
「お好み焼きはどんどん焼くけえ」
「食うか」
「ええですね、ほな」
石川は二人に笑顔で応えて言った。
「今から」
「食うけえ」
「大坂風でもええけえ」
「わし等そっちも食うけえ」
「あれはあれで美味いけえのう」
「ほな今から」
石川は二人に応えてだった、四人用の席だったので空いている席二つのうち一つに座ってだった。そのうえで。
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