| 携帯サイト  | 感想  | レビュー  | 縦書きで読む [PDF/明朝]版 / [PDF/ゴシック]版 | 全話表示 | 挿絵表示しない | 誤字脱字報告する | 誤字脱字報告一覧 | 

魔法少女リリカルなのはANSUR~CrossfirE~

しおりを利用するにはログインしてください。会員登録がまだの場合はこちらから。 ページ下へ移動
 

Ep19私だって負けてらんない~to recieve training 2~

†††シャルロッテ†††

「はよ~」

なのは達と一緒に通ってる聖祥小学校が休み日や、時には早退や遅刻などして管理局務めをやってる私は、今日と明日――土日と研修先で仕事だ。ちなみになのはとフェイトとはやてたち八神家、それにルシルもこの土日は仕事ね。

「ああ、おはよう」

洗面台で歯を磨こうとしてたルシルと朝の挨拶。私が来たことで横に退いてくれたルシルに「ありがと♪」お礼を言って、顔を洗ってから歯を磨き始める。ルシルと姉弟(ルシルは兄妹って言い張るけど)になってからもう半年だ。
私の家族として用意されたのは、生前の上司であるオペル・オメガ・シュプリンガー、同僚のシリア・ブラッディア、チェルシー・グリート・アルファリオ。そんな父、母、姉の3人とも仲良くなってくれてた。

(最初はまぁ、大戦時代じゃ殺し合う敵同士だったってこともあって、ルシルはいつもどこか緊張してたけど)

「お先」

「んー」

ルシルを見送って、私もいろいろ済ませてリビングへと戻る。時刻はまだ朝6時で、父役として用意されたオペルは仕事休みでまだ寝てる。キッチンには今、調理の邪魔にならないように長く艶やかなレッドパープルの髪をポニーテールにした、母役として用意されたシリアが立っていて、私の朝ご飯を作ってくれていた。

「おはよう、シャル」

「おはよう、シャルロッテ。もう少しで出来るから座って待っていてちょうだい」

「おはよう、姉さん、母さん」

2人にも挨拶をして、ルシルの隣、姉さんの向かい側に座る。ルシルも姉さんもトースト2枚とサラダとベーコンエッグを食べてる。私のメニューもこれだね。

「2人は今日も管理局の仕事なのよね? 2人の魔術師としての才能は理解してるけど、気を付けてね」

生前は年下だったチェルシーを姉さんと呼ぶことにも慣れてきた。そんな姉さんも、父さんも母さんも、“界律”から魔術についての知識だけは得ているから、時空管理局への入局もすぐに賛成してくれた。だけど家族として私とルシルを心配してくれてる。うん、なかなか悪くない。

「シャルロッテ、ルシリオン、お弁当を作るから持っていってね」

「「はーい」」

「お母さん、私の分も忘れてないよね?」

「はいはい、もちろん忘れてないわよ」

「ありがと♪ あーあ、私も魔術を使えたら、妹たちと一緒に異世界に行けるのにな~」

私とルシルの日常生活をサポートするためだけに“界律”から用意された父さん達は、当然だけど不要な魔術を扱えず、当人たちは没落した魔術師一族みたいに設定されてる。でも元魔術師一族の一柱としての誇りがあるようで、魔術を管理世界に役立てることが出来るって嬉しがってる。

「チェルシー、あなたは長女なんだから、しっかり良い男を捕まえて婿にしなさい」

「女子高生に言うようなセリフじゃないよ、お母さん・・・」

姉さんは美由希姉さんと同じ風芽丘学園っていう、隣街にある高校に通ってる2年生で、陸上部のエースだ。

「頭はちょっと残念だけど、運動神経や性格は良いんだからモテるでしょ? 良い人見つけなさいね」

「いろいろと聞き捨てならないことを聞いたけど、モテるのは確かだから悪い気はしない」

腕を組んで、むっふぅ~、と満足気な姉さん。ルシルと一緒に小さく笑っていると、「お待たせ~」母さんが私の分の朝ご飯を持って来てくれた。手を合わせて「いただきまーす!」をして、味わいながらも急いで食べる。

「あんまり慌てなくていいぞ、シャル。フェイト達との集合時間までまだ余裕がある」

「判ってないな~。女の子は、出掛けるにもいろいろ準備が要るんだよ~」

「10歳の子供がなに言ってんだか」

「んにゃ~、食べてるのに頭をグリグリするな~」

食べ終えた食器をキッチンに置いて戻ってきた姉さんが、「生意気だぞ~」って私の頭を鷲掴んでぐわんぐわん揺らしてきた。

「あはは。ごめん、ごめん。洗面台、先に借りるね~。お母さん、ごちそうさま~」

そう言ってダイニングから出てった姉さんを見送り、ルシルも「ごちそうさまでした」食器を母さんの元まで持って行くと「手伝うよ」ってお弁当を作ってくれてる母さんの隣に立った。

「あら、ありがとう、ルシリオン。それじゃあお願いしようかな」

食器を洗い始めるルシル。だから私も慌てて食べ終えると食器を流し台の中に置いて、ルシルの隣に立って「ごちそうさま! 手伝う!」洗い終えた食器を布巾で拭き始める。

「あらあら。ちゃんと飲み込まないと。はしたないわよ、シャルロッテ」

今なおモグモグしてる私の様子に苦笑する母さん。それから私とルシルは、お弁当を作る際に使った調理器具なども洗い終えて、母さんから「ありがとう、2人とも」ハグと頭ナデナデのご褒美を貰った。

『こういうのも悪くないでしょ、ルシル?』

『まあ・・・あぁ、そうだな。うん、悪くない』

私もルシルも本当の両親からはあんまり愛情を注がれなかった。だから高町家から家族愛を貰えて、本当に嬉しかった。ルシルも、フライハイト家で少しでも家族愛を感じてくれたら嬉しいな。
朝ご飯とその片付けを終えて、集合場所のハラオウン邸に向かうために最後の準備も済ませる。私は向こうで着替えるための陸士隊制服や貴重品を入れたスポーツバッグ、ルシルも制服に貴重品、あとミッドに滞在するための1週間分の着替え。

「よし、準備万端! ルシル、そろそろ出ようよ」

「ああ、そうだな」

「あ、ルシリオン、ちょっと待って。忘れるところだったけど、ナカジマさんへのお土産用意したから、持って行ってね。いつも息子がお世話になっていますと伝えてちょうだい」

玄関で靴に履き替えようとしていたところで、母さんが慌てて持ってきたビニール袋をルシルに手渡した。ルシルは「ありがとう、母さん」って、1度床に降ろしたスポーツバッグの中にお土産を入れた。

「「いってきまーす!」」

「いってらっしゃい、気を付けてね」

「いってらっしゃーい!」

慌てて2階から降りてきた姉さんも見送りの挨拶をしてくれた。母さんと姉さんに見送られながら私とルシルは家を後にする。今日は日曜で、しかも早朝っていうこともあって人の少ない道を歩く。

「なのは達も、今家を出たってメール来たよ」

携帯電話に送られてきたメールの内容を伝えると、「フェイトからも、準備が終わったからいつでも家に来てくれていい、と来たぞ」隣を歩くルシルもそう伝えてくれた。そしてちょっと遅れて、「はやて達も、これから家を出るって」メールが来た。

「途中で合流できるかもな」

「うん。ところで・・・。また1週間と家を空けるんでしょ。その間、フライハイト家(わたしたち)だけじゃなくて、フェイトにもメールなり通信なりしてコミュニケーションを取りなさいよ? あの子、ルシルから連絡こないって寂しがってるんだから」

ルシルはミッドの首都防衛隊で研修をしていて、予定では局の宿舎で寝泊りする予定だったんだけど、エイミィのミスで予約失敗。だから今月は研修先の部隊員であるナカジマ准尉のご厚意で、准尉の家に先週からお世話になってる。

「フェイト、あなたの研修の邪魔にならないようにって、遠慮してるんだから。ああもう、いじらしい、可愛い! ・・・ルシル。フェイトを泣かせてみなさい、私、絶対に許さないから」

幼い子供の幼い恋心。なんて愛おしい感情。私はフェイトの想いを応援したいって思ってる。相手は堅物ってこと以外にもいろいろと問題を抱えてるルシル。人間だった頃も、“界律の守護神テスタメント”の時にもルシルには恋人がいたから、フェイトの想いにも気付いてるはずなんだけどね。やっぱりルシルの闇を晴らさないとダメか~。

「わ、判った。時間を見てフェイトにもメールを送っておく・・・」

「よしっ! 約束だからね♪」

少しでもルシルとフェイトを近付けさせないと。いつ“界律”から本契約が下りるかも判らないし、ルシルの好感度を上げる必要がある。

「おーい、シャルちゃん、ルシル君!」

脇道から私たちを呼ぶ声。そっちに目をやれば「はやて!」と「シャマル」と、外出用に子犬フォームに変身してる「ザフィーラ」の2人と1頭?が手を振りながら私たちの元に駆けて来て、私たちは「おはよう!」の挨拶を交わした。

「はやての足も、どんどん良くなってきてるね」

「そやろ~? リハビリは大変やったけど、走れるくらいに回復したからな」

はやてが短い距離をダッシュ、そして戻ってきた。長い間、車椅子生活を送っていたはやてだったけど、今は車椅子も杖も必要ないくらいに自由に歩けるし、走れもする。走る速さならなのはより速い。陸士訓練校で鍛えたなのはにすら勝てるんだから、はやての地力に感服するよ。

「シグナムとヴィータは、向こうで合流なのか?」

「そうなんよ。2人は優秀やからね。わたしら八神家の保護責任者になってくれたレティ・ロウラン提督が、少しでも管理局従事の期間が短くなるように便宜を図ってくれて、シグナムとヴィータ二仕事を回してくれるんよ。そやけどその分、2人と一緒に過ごせる時間が減ってしもうてな」

「私は医務局の医務官、ザフィーラは警護課の要人護衛官なんだけど、シグナムとヴィータちゃんよりははやてちゃんのお側に付けるんだけど・・・。それでもやっぱりはやてちゃんを独りきりにしちゃうこともあって・・・」

「大丈夫やって、シャマル。みんながうちに来る前も、わたしは独りやったし。それに、みんなが居らん日はすずかちゃんやアリサちゃんのお家でお世話になってるし」

シャマルが心底困ったように右手を頬に添えて嘆息1回。そんなシャマルに笑顔を向けるはやて。本当は私やなのは達も、ひとり留守番するはやてを泊まらせることは出来るんだけど、私たちが局の仕事に行ってる間は結局はやてを独りにしちゃうからね。一般人なすずかやアリサの家に寝泊りする方がはやてのためになる。

「でも寂しいんです~」

「よしよし」

えーん、って泣いてる仕草をするシャマルの頭をはやては撫でて、「わたしも寂しいけど、頑張らなアカンよ」胸元から剣十字のペンダントを取り出した。

「リインフォースがくれた未来や。今は寂しくても、精一杯生きてかな・・・な」

半年前に旅立った“夜天の書”の管制人格、リインフォース。はやてが紐を通してペンダントにしてる剣十字は、“夜天の書”の表紙の装飾だったもので、アインスの形見のようなものだ。シャマルがその剣十字を見て、「はやてちゃん・・・。はい、そうですね」寂しそうに笑った。
それから改めてハラオウン邸のあるマンションへと向かって、その姿が視界に入り始めた頃・・・

「あ、シャルちゃん! ルシル君、はやてちゃん、シャマルさん、ザフィーラ!」

マンション前に居た「なのは!」が大手を振って私たちを出迎えてくれた。私はなのはに駆け寄って、「おはよう、なのは!」朝の挨拶とハグをすると、「にゃはは! おはよう、シャルちゃん!」ハグを返してくれた。

「なんやシャルちゃんはホンマになのはちゃんが好きなんやな~♪」

「うん、好き!」

「私も、シャルちゃんのこと好きだよ~♪」

なのはは、私にとって初めての友達だ。生前では友達なんていなくて、みんな同僚って関係だった。“テスタメント”になってからも、友達なんてものを作れるような契約を受けたこともなかった。だから、なのはのことが本当に大事なのだ。

「でもちょっと悲しいです。フライハイトちゃん、なのはちゃんにはハグするのに、うちのはやてちゃんにはしてくれないから」

「そうやな~。ちょう寂しいな~」

「~~~~っ! はやてとシャマルも大好きぃぃ~~~!」

シャマルとはやての言葉に私はハッとして、なのはから離れて2人をハグ。最初にはやてをぎゅうってすると、「わたしも好きやよ~♪」はやてもぎゅうってしてくれた。そして次はシャマルに抱きつく。

「私も好きですよ、フライハイトちゃん」

「ふあ~。なのはにもはやてにも無い、大人の女性特有の柔らかさと良い香りが~」

「あらあら」

シャマルのおっぱいに顔を埋める。これまたほとんど経験したことのないこと。シャマルが私の頭を優しく撫でてくれたから、生前では死ぬまで手に入れられず、今回の契約では桃子母さんから感じた母性を、シャマルからも薄っすら感じた。

「ふふ、お母さんみたい」

「・・・フライハイトちゃん。私、一応これでも22歳設定なんだけど? フライハイトちゃんみたいな大きな子供のお母さんはちょっと・・・ね」

「あ、そうだったんだ。んー、確かに22歳で10歳の子供はないか~。じゃあお姉さんって感じか」

シャマルの温もりや香りから自分から離れるのはちょっと名残惜しいけど、フェイトやクロノ達を待たせるわけにもいかないから「それじゃ行こうか」マンションに入って、ハラオウン邸のある階までエレベーターで上がる。そしてドアの前でルシルがドアホンを鳴らした。

『あ、おはよう、みんな! どうぞ入って!』

「「「おはよう!」」」

「おはよう、フェイト」

「おはよう、テスタロ――じゃない、フェイトちゃん」

屋外子機から聞こえたフェイトからの入室許可に、私は玄関のドアノブを回してドアを開ける。玄関ではフェイトとアルフが待っていてくれて、「いらっしゃい!」って出迎えてくれた。私たちは「お邪魔します」靴を脱いでスリッパに履き替える。

「シャマル。いい加減、その言い直しを改めろ、失礼だぞ」

「あぅ~。そうよねザフィーラ。ごめんね、フェイトちゃん」

「あ、いいえ。私がハラオウン家の養子になったのもつい最近ですし、これまでずっとテスタロッサって呼んでくれてたのでしょうがないかと・・・」

「フェイト・テスタロッサ・ハラオウン。あながちテスタロッサ呼びでもいいんだけどさ。やっぱ名前で呼んでほしいよな~」

アルフがそう言った。この前のお花見で、フェイトは予てからリンディ提督から提案されていた養子縁組を受け入れた。それでアルフの言うように、テスタロッサ姓をそのままにハラオウン姓も一緒にした名前になったわけだ。

「あの、でもシャマルがテスタロッサ呼びで慣れているなら、そのままでいいですよ? シグナムも変わらずテスタロッサ呼びですし」

「う~ん、でもフェイトちゃん呼びをするわね」

「判りました。・・・あ、じゃあ制服に着替えて、アースラに移動しようか」

そう言ってリビングを横切ろうとするフェイトにトテトテと駆け寄って、「フェイトにも大好き~のぎゅ~♪」ハグした。

「えっ? えっ? なに? 急にどうしたの、シャル?」

私の突然のハグに困惑するフェイトをなのは達が優しく見守ってる。そんなフェイトから離れて、「アルフにも大好きのぎゅ~♪」アルフを抱き締める。まだ10歳にも見たないアルフなのに、人間形態時のこの子はホントにスタイルの良い女の子で、その豊満なおっぱいに顔を埋める。

(アルフは母親って言うよりは姉って感じ)

「なんだい、シャル。くすぐったいじゃないかい」

アルフも私の頭を撫でてくれる。そのくすぐったさと、アルフから香る甘い匂いに後ろ髪を引かれながらも離れた。

「ん、満足じゃ♪」

「??・・・えっと・・・私たち女の子は、私の部屋で。ルシルはリビングで、でいいかな?」

「ああ、判った」

ルシルとザフィーラをリビングに残して、私たちはフェイトとアルフの部屋に入る。女の子っぽいなのはの部屋とは違ってシック調だ。そんな2人の部屋で私たちは着てきた服を脱いで、それぞれの部署の制服へと着替える。私は地上部隊の茶制服、なのはとフェイトとはやてとシャマルは次元航行部の青制服。アルフは使い魔ってことで私服で、ザフィーラは狼形態が通常だから子犬フォームから本来の大きさに戻るだけ。

「早くしないとルシルが、おそーい、って入ってくるかもだし、ササッと着替えないとね」

「ふえっ!?」

顔を真っ赤に及び腰になって、今から着ようとしてたブラウスで胸の辺りを隠したフェイト。なのはとはやては最初はハッとして服で体を隠そうとしたけど、すぐに私のからかいだって理解したようで苦笑い。シャマルは大人の余裕か焦ることなく着替えを続けて、フェイトだけが未だに「え? え?」混乱中だ。

「こーら、シャル。うちの大事なご主人様をからかうんじゃないよ。フェイトも、ルシルがそんな真似するわけないって判ってるだろ?」

「うぅ~」

アルフに怒られる私と、窘められるフェイト。からかいたくなる程に純粋なフェイトが可愛すぎるんだもん。そんなフェイトが「もう。シャルひどい」ってジト目で睨んできた。

「ごめんごめん。ま、ルシルとザフィーラを待たせるのも可哀想だし、ささっと着替えよう」

んで、着替えを終えて、ドレッサーの前で髪や服装に乱れが無いかを確認してから「お待たせ~」ルシル達の待つリビングへ戻る。そして私と同じ陸士隊制服に着替えたルシルと一緒に、トランスポートのあるエイミィの部屋へ。

「毎回思うけど、エイミィも年頃の女の子なのに部屋が酷い」

エイミィの部屋は機材に溢れていて、女の子の私室って言うより機関室。

「こちらフェイト。エイミィ、みんな準備万端だよ」

『りょーかーい! 今からアースラに転送するから、3人ずつトランスポートに入ってね』

フェイトがアースラに居るエイミィに通信を繋げて、まずはやてとシャマルとザフィーラが転送されて、次に「ほら、ルシル、フェイト、アルフ」を先に入れる。ルシル達が転送された後、最後に「なのは!」の手を取って、トランスポートに入る。

『じゃあ、なのはちゃん、シャルちゃん。ちょっとジッとしててね』

「はい!」「ん!」

私たちもアースラのトランスポートへと転送される。着いたそこにはモニター越しのリンディ提督とエイミィ、それにクロノが待っていてくれて、「お疲れ様」って労いの言葉を掛けてくれた。

「君たちを迎えに来ている研修先の方々を待たせるわけにもいかないからな。挨拶もそこそこに本局へと転送する」

『なのはさんは戦技教導隊、シャルロッテさんとルシリオン君はミッド地上本部、はやてさん達は今日は・・・ある執務官の下で特別捜査官としての研修ね』

「フェイトとアルフは、このままアースラに残って、僕の補佐をしてもらう」

今日明日の予定を確認して、フェイトとアルフが「じゃあみんな。私とアルフはここで」ってクロノの隣に並んだ。私となのはとはやては「うん。また月曜日に」フェイト達に小さく手を振る。

「ルシル・・・あの・・・」

「また連絡するよ、フェイト」

「っ! うんっ、うんっ! 待ってる!」

満面の笑顔を浮かべるフェイトに、ルシルも笑顔を返した。2人の間に流れるほんわか空気を邪魔するのは気が引ける、って顔をしてるクロノが咳払いを1回して、「さて、そろそろ出立だ。エイミィ」ってモニターのエイミィを呼んだ。

『はーい! それじゃみんな、そのままでね』

本局のトランスポートホールへの転送が始まる中、リンディ提督たちが「いってらっしゃい」見送りの挨拶をしてくれて、私たちも「いってきます!」手を振って、転送の光に飲まれた。

「よーし、本局に到着ぅ~!」

「ハッ! この気配は・・・彼女か!」

ホールに着いた途端にルシルがグッと腰を落として周囲をキョロキョロ。この反応、そして“彼女”っていう言葉。私たちはすぐに誰のことかを察した。

「ル~シル~!」

フェードインしてくる足音と声。そしてルシルはバッと体の向きを変えて、こっちに向かって突っ込んで来た「セレス執務官!」の両手をバシッと鷲掴んだ・・・かのように見えた。それは一瞬。セレス(呼び捨てでも良いって言うしね)の姿が掻き消えて、ルシルの背後に回っていた。

(魔法でもスキルでもない純粋な身体能力だけであの高速移動。使い方は馬鹿だけど)

「ちくしょう、今日も避けられなかった・・・」

セレスに抱き締められて項垂れてるルシル。フェイトには見せられないよね。そんな2人を見て苦笑してると、「高町」って呼ぶ男性の声が。そちらに目をやると、なのはが「アレッタ三佐! お疲れ様です!」って敬礼した。

「ああ。早速だがオフィスへ。本日の任務のブリーフィングを行う」

「了解です! えっと、シャルちゃん、ルシル君、はやてちゃん、シャマルさん、ザフィーラ、それにセレスさん、私は先に」

アレッタ三佐っていうなのはの上司らしい男性と一緒に去っていくあの子に、「いってらっしゃい!」私たちは手を振って見送った。

「ルシル。今日の抱き心地も素晴らしかった。さてと。じゃ、はやて達も行こうか」

「え?」

「八神家諸君。本日より事件解決までの間、あなた達の上官となるセレス・カローラ執務官兼特別捜査です。よろしく」

ルシルから離れるとセレスははやて達に敬礼して、「シグナムとヴィータも待ってるから、第8ブリーフィングルームに行こうか、諸君」そう言って踵を返した。

「了解です!」

「了解です! それじゃシャルちゃん、ルシル君、またな!」

はやて達とも別れた私とルシルは、ミッドの次元港行きの船に乗って1時間半。到着した第1ロビーで、「ルシル兄~!」と「シャルロッテちゃ~ん!」っていう呼び声が掛かった。

「スバル? それにギンガも。どうしたんだ2人とも?」

「フィディ一尉!」

ルシルのところには女の子が2人(背の高いのがギンガ、小さいのがスバルね)、私のところには首都防衛隊第2班の隊長を務めるフィディ・A・リヴォルタ一等空尉が駆け寄ってきてくれた。

「お疲れ様です、一尉!」

「はい、お疲れ様です、シャルロッテちゃ・・・コホン、候補生」

一尉と敬礼をし合って、「近くに車を停めているから、行きましょうか」一尉がそう言いつつルシルにも敬礼してから、エントランスに向かって歩き出した。

「ルシル。また来週ね♪」

ギンガって子に、クイント准尉はどこか?って聞いてるルシルにウィンクすると、ルシルが「ああ。気を付けてな」気遣いの言葉を掛けてくれた。そんなルシル達を置いて私と一尉は外に出て、一時駐車用のロータリーに停められた車に乗り込む。

「おはよう、シャルロッテ君」

「おはようございます、イーゾ二尉」

運転席に居るのはイーゾ・A・リヴォルタ二等空尉。フィディ一尉の双子の弟さんで、第2隊の副隊長。そんな二尉に「出して」と指示を出した一尉。車が地上本部へ向かって走り出す。

「ねえねえ、イーゾ。さっき、ルシリオン君を見たわ。男の子って信じられないくらいに可愛いの!」

「えっと、シャルロッテ君の義理の弟さんだね」

「はい。ちょっとばかり差を付けられてる、自慢の弟です」

私たちのように学校に通ってないルシルは、学校に行っていない分の時間を管理局従事に使って、この半年の間にすっかり名を挙げて有名人だ。それがちょっと悔しい。

(私だって負けてらんない!)

ルシルに負けないくらいに管理世界を守ってやるんだから。 
ページ上へ戻る
ツイートする
 

全て感想を見る:感想一覧