夢幻水滸伝
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第百十七話 枢軸の者達の素顔その十
「そうなるわ」
「ロシア人にとってウォッカがどれだけ大事か」
今度は一九〇位の背の男が言った、髭のない長方形の顔に黒く短く刈った髪の毛と細い黒い瞳はアジア系を思わせる。死者の肌からゾンビであることがわかる。服は黒い詰襟の軍服だ。天威星アンドレイ=チェーホフである。ロシアボロネジ出身で職業は剣士だ。やはりロシア五将軍の一人である。
「知っているだろう」
「それはな」
チェーホフには坪内が応えた。
「わかってるわ」
「そうだな、そして酒の基準はな」
「ウォッカか」
「そうだ、だからだ」
「甘いサワーとかビールはか」
「ジュースだ」
そうしたものだというのだった、チェーホフも。
「何でもない」
「そんな軽いものか」
「ノンアルコールと同じだ」
その程度のものだというのだ。
「某ストロングは違うがな」
「その酒こっちの世界でもあるで」
「そうなのか」
「澄み渡るもな」
こちらの種類の酒もというのだ。
「しっかりとあるで」
「あの酒も美味いな」
「好きか」
「軽く飲めるからな」
「あの種類の酒は確かに飲みやすいが」
それでもとだ、坪内はどうかろいう顔で述べた。
「飲みやすいだけにな」
「飲み過ぎてか」
「悪酔いしてしまうが」
「あれで酒だ」
チェーホフもまたロシア人の基準から話す、日本酒を飲みつつ。
「その範疇に入る」
「そんなものか」
「あれだな、甘酒だな」
他の面々と比べて遥かに小柄な鋭い目のやや俯いた姿勢のグレムリンの男が言ってきた、髪の毛は黒く縮れている。天英星フョードル=ゴンチャロフである。ロシアスモレンスク出身で職業はアサシンである。これまたロシア五将軍の一人だ。見れば五人とも黒く大きなマントを羽織っている。
「ビール等は」
「日本で言うとか」
「そうなるな」
こう島崎に話した。
「我々から見ればな」
「ロシアの感覚はちゃうな」
「寒いせいだ」
ゴンチャロフは島崎に答えた、刺身を食べつつ。
「全てはな」
「やはりそこか」
「そうだ、その寒さはな」
それこそというのだ。
「日本の比ではない」
「というか他の国に比べてもやな」
「酔って外で寝てしまう」
酔い潰れてというのだ。
「夏以外でそうなるとな」
「ほんまに死ぬか」
「この世界でもな、それで復活の術の世話になる者が多い」
「完全にお陀物にならんだけましか」
「おい達が起きた世界ではそうなるがな」
復活の術等生き返る手段がないからだ、ゴンチャロフはこのことも話した。
「しかしな」
「こっちの世界やとな」
「それはないからな」
復活出来るからだというのだ。
「世話になっている奴が多い」
「そうなんか」
「中にはサンクトペテルブルグの川に落ちてだ」
酔ってというのだ。
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