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夢幻水滸伝

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第百十七話 枢軸の者達の素顔その五

「関東はおろし大根に醤油、こっちは昆布とか鰹を使ったな」
「そうしただしでか」
「関東のそばつゆは辛くてな」
 それでというのだ。
「噛まんでな」
「飲むか」
「喉ごしを味わうもんらしい」
「そうなのか、そういえばだ」
 チェッチェフはルルフォの話を聞きつつさらに言った。
「関東の醤油と関西の醤油は違う」
「日本はな」
「それは起きている世界でも言われたが」
「こっちの世界でもそうでな」
「関東と関西ではそばつゆもか」
「味が醤油からも違ってな」
 それでというのだ。
「お蕎麦の食べ方もか」
「違うか」
「こっちは噛んでもええ」
 関西の蕎麦、ざるそばはというのだ。
「それもな、後な」
「後、何だ」
「何でも向こうでは蕎麦屋ではそば湯を飲む」
 飲みものはそれだというのだ。
「お茶やない、そして酒でもな」
「ないか」
「そば湯を飲むのが通のこだわりでな」
「お茶やお酒はか」
「何でも邪道らしい」
「こだわりだな、しかしお茶が駄目か」
 このことについてだ、チェッチェフはどうかという顔になって述べた。
「それがどうもな」
「自分お茶好きか」
「だから困るな」
「何でもお茶はあがりっていうからな」
 それでとだ、インペルが話した。
「それでや」
「あがり、お店を出るか」
「そやから最後に飲むもんでな」
「途中で飲むのはか」
「そば湯になるそうや」
「成程な」
「まあこっちはそうしたこだわりはないからな」
 インペル自身酒を飲んでいるし蕎麦も噛んでいる、そうしてコシも味わいつつそのうえで言うのだった。
「存分にな」
「噛んで酒も飲んでか」
「楽しもうな」
「それではな」
 チェッチェフも頷きそうしてだった。
 彼は実際に蕎麦を勢いよくすすって噛んで食べた、そうしてからまた言った。
「実に美味いな、そういえば起きた世界で日本の麺は」
「何食うてるんや?」
「起きた世界やと」
「うどんが多い、蕎麦を食べても」
 そうしてもというのだ。
「ざるそばはなかった、汁そばばかりだ」
「ああ、鴨なんばとかか」
「そっちのお蕎麦か」
「にしんそばが好きだ」
 この汁そばだというのだ。
「あれがな」
「あのお蕎麦か」
「確かに美味しいな」
「それで食堂でもよく食べるが」
 しかしという口調でさらに言うのだった。
「だがこのざるそばはな」
「なかったんやな」
「これまでは」
「起きた世界ではな」
「ロシアは寒いからな」
「冷たいもんはか」
「無意識でも避けるかもな」
 こう二人に言うのだった。
「私も自身熱いものが好きだしな」
「それやったらうどんの方がええかもな」
 ルルフォはチェッチェフの熱いものが好きというその言葉を聞いて落ち着いた顔で蕎麦を食べつつ言った。 
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