魔法少女リリカルなのはANSUR~CrossfirE~
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Ep10エルジア紛争制圧戦~Joint struggle~
“テスタメント”の指導者であるハーデ、ディアマンテ。謹慎中のカルドとカルド・デレチョを除く幹部たちがここ会議室に揃っている。
「今すぐに使えるレジスタンスはほんの僅かだが、ひと月もあれば他の連中も立派な戦力になるだろう」
「鍛え甲斐があるというものです。中には嫌な顔をする者もいましたが」
“レジスタンス”の戦技教導を任されているマルフィール隊、その隊長マルフィールと、彼の部下マルフィール・イスキエルドが、午前中の教導で思ったことを報告した。その報告を受けた幹部たちはそれも当然かもしれない、とも思っていた。
「ま、覚悟とやる気の無ぇ奴は放っておけばいいさ」
「そう言うな。彼らにも心の準備というものが必要だろう」
サフィーロことルシリオンがそうグラナードを諌める。グラナードは「さいですか」と言って、自室待機を解かれたカルド・イスキエルドへと視線を移して声をかける。
「さっきから元気のない拗ねた子供のようなカルド・イスキエルドよ。良かったな、サフィーロとディアマンテに許してもらってさ」
「っ! あ、ああ。これからは気を付けるよ」
グラナードにそう話を振られ、フードに隠れたカルド・イスキエルドの顔が、余計なことを、と苛立たしげに歪む。だがその苛立ちを声に出さないように努めてそう返した。そんな彼がルシリオンへと悟られないように視線を移す。カルド・イスキエルドが前々から彼に抱いていた畏怖は、今では完全な恐怖へと変貌していた。
「そんなこと言わないの、グラナード。全てが終わるまでみんな仲良く」
「おう? ハハ、すまねえなトパーシオ。別にアイツを苛めてるわけじゃねえんだ。年長者からの忠告さ。今度は自制しするようにってさ。でないと、怖~いサフィーロお兄さんに消されちまうぞ、ってな」
トパーシオに袖を引っ張られながら注意されたグラナードはまともなことを言って返した。が、それで終わればよかったものを最後にルシリオンをネタにして笑いだした。トパーシオはそれが納得できなかったのか、グラナードをペシッと叩いてトテトテと椅子に座り直した。
「あー・・・はずしたか?」
「「「「バカだな」」」」
ルシリオンとマルフィール隊の3人に呆れた声でそう言われたところで会議室の入り口扉が開き、ディアマンテがコツコツと足音を立てながら入ってきた。空いている席へと腰掛け、この場に 居る幹部たちを見回した。
「マスター・ハーデから早速任務遂行命令が来た」
円卓中央にモニターが展開され、1つの管理世界が映し出される。
「管理世界の39番、世界名はエルジア。現在、このエルジアでは二大国間での紛争が起きており、魔導兵器に質量兵器といった物が錯綜している。その拡大した戦火は管理局の次元航行部ですら現状において完全鎮圧できないほどだ」
繰り広げられている紛争の光景。戦場に倒れ伏す様々の勢力に属する魔導師や全く無関係の民間人たち。老若男女を問わないその亡骸の山に、見るのが耐えられないのかトパーシオがモニターから視線を逸らす。
トパーシオの元へと歩み寄るのはアマティスタ。後ろからそっと抱き締め、会議室から退室するように促す。しかしトパーシオは「ありがとう。大丈夫だから」と言って、モニターに映る惨劇を再び視界に入れる。アマティスタはもう何も言わず、彼女の隣に座ってその手を握った。
「この紛争を鎮圧するのは容易なことじゃないのは確かだが、それは魔導にのみ頼っているからとも言える。スキーズブラズニルの攻防力と我々幹部、そしてレジスタンスの助力で鎮圧できるはずだ」
「なるほど。その紛争を鎮圧できれば管理局に知らしめることが出来るな」
「ああ。魔導にだけ頼る愚考を改めるだろう」
ディアマンテの考えを察し口にしたマルフィール。ディアマンテは満足そうに頷き、管理局の魔法・魔導師至上主義を改めさせるには良い機会だと続けた。
「それで、だ。我々のターゲットはこの紛争を陰で操る組織だ。組織名をオルキヌス・オルカ。こいつらを絶対に捕縛する」
モニターに映し出される数十人の年齢層にバラつきのある男たち。“オルキヌス・オルカ”とは、戦争によって発生する利益などに集る、兵器開発などを主とした武器商人たちによる裏組織。紛争を起こしている二カ国の中にもその構成メンバーが入り込んでいる状態だった。幹部たちはその男たちの顔と情報を全て頭に叩き込んだ。
「なるほど、クズだな。それで? まさか、テスタメント総出かよ?」
「いや。俺は本拠地でアレの起動実験を行うためにパスだ。サフィーロとノーチェブエナとトパーシオは別命があるまで待機。マルフィール隊には引き続きレジスタンスへの教導を任せる」
ディアマンテは待機を指示した幹部たちを見回す。待機指示を受けたマルフィール隊の3人は「了解」と応え、ルシリオンとノーチェブエナことリインフォースはコクリと頷き応えた。
「よっしゃ! こういう派手なことをやりたかったんだよオレは!」
待機指示が下りなかった1人であるグラナードが勢いよく立ち上がり、両腕を掲げて吼えた。そして同様に出撃となったアマティスタとアグアマリナ・ペアは、フードに隠れてはいて見えないがやる気に満ちた表情をしている。
カルド・イスキエルドはこれ以上ルシリオンの怒りを買わないように全力でことに当たるつもりでいる。そしてディアマンテも立ち上がり、行動開始の号令をかけようとした。
「待って。わたしも行く」
「「「トパーシオ!?」」」
トパーシオの参加したいという意思に、アマティスタとアグアマリナ、カルド・イスキエルドが驚愕の声を上げる。
「トパーシオ、マスター・ハーデから君を可能な限り出撃させるな、と命令を受けているんだが」
「わたしだって戦える。紛争を止める力がある以上、黙って待っていられない」
「・・・判った」
トパーシオの強い意志の宿った言葉に、ディアマンテが折れる。トパーシオの出撃がディアマンテの独断で許可されたことに驚愕したルシリオンが2人の間に割って入る。
「待て、ディアマンテ。マスターの許可なくしてトパーシオの出撃は許されない」
「わたしは大丈夫。だからサフィーロ、行かせて」
トパーシオは、目の前に立つルシリオンのコートをキュッと弱々しく掴み、出撃させてくれるように懇願する。
「・・・これは卑怯だ。マスターから潔白なる聖者の命令にも従うように言われている以上、許可する他ない」
ルシリオンも否応なくトパーシオの出撃を許可した。
「ありがとう、ディアマンテ、サフィーロ」
トパーシオは2人に感謝を告げ、頭を下げた。
「トパーシオは私たちが護るから大丈夫よ、サフィーロ。まぁ最大戦力を使われたらこの場に居る“誰よりも強い”から、逆に護ってもらう方になるかもしれなけどね」
アマティスタが心配そうにしているルシリオンへと声をかける。彼は「出来るだけ無茶しないように見てやってくれ」と返して渋々引き下がっていった。
「これで決まりだ。早速エルジアへ向けて出撃だ。おそらく必要になる状況に陥ることは無いと思うが、場合によっては各自“最大戦力”を使用してもかまわない」
ディアマンテの最大戦力使用を許可するという発言に出撃メンバーは眉を顰めたが、彼らは一応「了解」と返した。
「マルフィール。即戦力のレジスタンスを集めてくれ」
「ああ、判った」
こうして、“テスタメント”幹部のグラナード、アマティスタとアグアマリナ・ペア、カルド・イスキエルド、トパーシオの5人が“レジスタンス”を率いて、エルジア紛争に介入することが決定された。
・―・―・―・―・―・
かつては自然が溢れ豊かだった世界も、今では戦火によって悲惨な様へと変わり果てていた。眼下に広がる戦火に、“スキーズブラズニル4番艦”の甲板の手すりに身体を預けているアマティスタがひとり悲しみに耽っていた。
「昔はあんなに綺麗な世界だったのに・・・」
彼女は以前来たことがあるのか、変わり果てたエルジアの景色に落胆していた。そんなとき、彼女は眼下からこの“スキーズブラズニル4番艦”へと迫る対空砲撃を見た。紛争を起こしている二大勢力が、“4番艦”を互いの兵器だと勘違いしての攻撃だった。
だが彼女は何ら慌てることなく迫りくる対空砲撃を見つめ続けた。迫る砲撃が“4番艦”へと直撃するまで残り数秒。直撃だったはずの砲撃が、船体に直撃する直前で消滅していた。
「まさか、あの“ルシル君”がこんな凄いものを持っているなんてねぇ」
彼女はルシリオンの愛称であるルシル君と口にして、話に聞いていた通りの“スキーズブラズニル・シリーズ”が誇る防御力に感嘆していた。さらに立て続けに“4番艦”へと迫りくる対空砲撃群。しかしその砲撃群は先程の第一射と同様に直撃することなく消滅していく。
「あ~あ、無駄玉のオンパレードだな、こいつは」
そう呆れ口調で言いながら甲板へと出てきたのはグラナード。次々と放たれてくる魔法・質量兵器問わずの砲撃を見て「勿体ないねぇ」と呆れ果てていた。そして今度はお返しと言わんばかりに“4番艦”の両舷から何十門もの砲塔が現れた。ドドドドドォン!!と連続して轟音が響き渡る。
「うはぁ! こういう体の奥にまで来る響きも良いもんだな! 魔導砲には無いこの良い感じの震動、たまらねぇな!」
睡眠ガスの封入された砲弾が放たれると同時に起こる震動に心地よさを感じたグラナードのテンションは高い。砲弾は地上へと高速で撃ちこまれ、着弾と同時に砲弾に封入されていた睡眠ガスが戦場を席巻していく。
「さてと。それじゃ行くぞお前ら!!」
いつの間にか甲板へと上がってきていた“レジスタンス”へとグラナードが吼える。様々な銃火器を手にした“レジスタンス”は、これから戦場へ向かう恐怖を拭うかのように「オオオオオオオオ!!!」と雄叫びを上げ自らの心を奮い立たせる。
『スキーズブラズニル、降下します』
“4番艦”の全区画にトパーシオの声が流れる。次第に高度を落としていき、地面すれすれまで降下した。地上は完全に静まったとは言えないが、それでも先程までの圧倒的な戦火はなかった。
“4番艦”がそり立つ崖に横付けされ、甲板で待機していた“レジスタンス”がその崖へと次々と降り立っていく。
「そんじゃま、グラナード隊。組織のアホ共をとっ捕まえて、管理局や管理世界に紛争の真実を語らせるぞ」
「アグアマリナ隊は今なお戦っている連中の戦闘行動の停止に向かいます」
「アマティスタ隊は要救助者の救助を最優先」
「俺は予定通り組織構成メンバーとその兵器群の無力化へ向かう」
任務実行部隊である3隊を率いることとなったグラナードとアグアマリナとアマティスタが続いて“4番艦”を降りる。カルド・イスキエルドは、最大戦力・ゼルファーダ武装における攻防力が優れているため、部隊を率いることなく単独行動となっていた。
これで“4番艦”に残っているのはトパーシオただ独り。彼女は再度空から砲撃を放つ役目と作戦管制を担っていた。徐々に上昇していく“4番艦”を見送った後、任務実行3部隊とイスキエルドは紛争地域へと向かった。
・―・―・―・―・―・
ブリッジの玉座に腰かけ、砲塔を操作して砲撃を放っていくトパーシオの元に通信が入った。通信を入れてきた相手は、ルシリオンだった。
「どうしたの?」
『管理局が動いたとマスターから連絡が入ったことを伝えておく。私たちテスタメントへの対策として編成された臨時部隊だそうだ。管理局の要注意戦力ばかりで構成されているようで、名を“特務六課”というらしい。そちらに現れる可能性がある。十分に注意してくれ』
トパーシオを囲むように幾つものモニターが展開される。そこに映し出されるのは“特務六課”の前線メンバーの顔写真と戦力情報。
「・・・判った、ありがとう。でも誰が来ても邪魔はさせない、絶対に。管理局が変わろうとするまで、今まで斃れていった戦友たちの無念を晴らすまで」
トパーシオは玉座のひじ掛けに置いている拳をギュッと握りしめた。小さな体である彼女もまた管理局によってその人生を狂わせられ、管理局の変革を願うことになった存在だった。
『君は確かに強い。しかしその分反動が強い、無茶はしないように』
「うん。心配してくれてありがとう」
ルシリオンとの通信が切れる。再び話し声のなくなったブリッジが静まりかえる。
「そう、絶対にまだ終われないんだ。管理局の未来のために・・・」
トパーシオは地上で行われている紛争の現状を知るためにモニターへ映し出す。紛争を促す敵性魔導師以外の一般兵は催眠ガス砲弾で次々と無力化してはいるが、耐性を付けた敵性魔導師隊はまだ活動している。その敵性魔導師隊を迎え撃っている4人の幹部と率いている部隊。
「介入から2時間。カルド・イスキエルドの方は順調に任務遂行中。だけど、さすがに力を抑えた他の3人は簡単に済まないみたい。レジスタンスも頑張ってくれているけど・・・」
“レジスタンス”がスタン弾や麻酔弾といった特殊弾頭が込められた銃で応戦している様子が映し出される。未だに動く一般兵はそれで対応できてはいるが、やはり魔導師には上手くいっていなかった。相手が一般兵であろうが、魔法に頼らずとも彼ら“レジスタンス”は十分に奮闘していた。
魔法を扱う魔導師と質量兵器を手にした一般人が共闘して1つの事件に対応している。禁じられている質量兵器も使い方次第で十分に役に立ち力となる。それが今、証明されようとしている。
――ビービービービー!
突如“4番艦”のブリッジに警報が鳴り響く。トパーシオが急ぎコンソールを操作して幾つもモニターを展開していく。そしてその1つのモニターにある物体が映し出された。
「管理局の次元航行艦・・・! 特務六課・・・!」
映し出されているのは、エルジアに進入したばかりの“特務六課”旗艦である“ヴォルフラム”だった。
・―・―・―・―・―・
「こちら時空管理局・特務六課。テスタメント所属艦スキーズブラズニルへ告ぐ。今すぐ地上への砲撃及び航行を停止し、武装を解除して投降しなさい」
“ヴォルフラム”より2000m低い高度を航行する“4番艦”へと投降勧告を出すはやて。しかしトパーシオ独りが乗る“4番艦”は、砲撃も航行も停止する様子を見せない。
「司令、敵艦に生命反応は“ありません”。スキーズブラズニルは“無人”です」
“4番艦”の内部の様子を知るためにスキャンした結果を報告するオペレーター。艦長席に座るはやての表情が疑問に満ちた。いくら自動にしていても大事な艦を無人にしておくなんて正気か?と。
「地上はどうなっとる?」
「少し待ってください。・・・来ました。テスタメント幹部の白コートを4名発見しました。グラナード、それにユークトバニアに出現した銃剣使いと格闘家(仮)です。・・・シグナム一尉たちを撃墜したカルド隊が1人だけいます」
ブリッジに展開される4つの大型モニター。
1つはラギオンと部隊を率いて、“オルキニス・オルカ”の構成員を拿捕しようとしているグラナードの様子。
1つはアグアマリナと率いる部隊が懸命に紛争を止めようと駆けまわっている様子。
1つはアマティスタと率いる部隊が戦闘を行いながら避難し遅れた民間人の救助を行っている様子。
1つはカルド・イスキエルドが単独で魔導・質量兵器を破壊していっている様子。
「カルド隊・・・。ホンマに1人だけか?」
「あ、はい。間違いなく1人だけです」
漆黒の甲冑に身を包み、闇色の炎で兵器を破壊していくカルド・イスキエルドを見たはやては緊張した声で彼が単独かを尋ね、返答に安堵の表情を浮かべた。そしてすぐにキリッとした顔へと戻した。
「スターズ、ライトニング両隊は地上へ降下、テスタメント及びレジスタンスの逮捕。と言いたいところやけど、このまま黙って紛争を見過ごすわけにもいかん。一時休戦や。テスタメントと協力して、このまま戦火の縮小したエルジア紛争を鎮圧する」
『スターズ了解!』
『ライトニング了解!』
降下ハッチへ集合していた両隊の隊長であるなのはとフェイトから応答が入る。はやては2人に「お願いや」と返し・・・
「シャマル、ザフィーラ。2人も地上に降りて怪我人の救助を行ってくれへんか?」
『はやてちゃん・・・。はい! シャマル、ザフィーラ共に了解です!』
治癒などの補助魔法のエキスパートである医務官シャマルとその護衛としてザフィーラにも地上降下を指示する。シャマルは、“テスタメント”逮捕という任務より人命救助と紛争鎮圧を優先したはやての指示に、とても嬉しそうに応えた。
はやてが降下部隊に出撃を指示しようとしたが・・・。
『こちらテスタメント所属スキーズブラズニル4番艦。現在、わたし達テスタメントは任務遂行中なため、そちらの指示には従えません。管理局所属艦ヴォルフラムに警告します。我々テスタメントの妨害をするのであれば交戦を止むをえません』
“4番艦”操主・トパーシオから通信が入る。その声色は可愛らしく幼さの残る少女のものだった。だがそんなことより驚くべきことがあった。
「な!? 無人やなかったんか!?」
オペレーターの報告とは違って、“4番艦”に人が乗っていたことに驚愕するはやて。すぐさまオペレーターが再スキャンを試みる。
「やはり何度スキャンしても生命反応なし、と出ます!」
同じ結果が出ることに困惑するオペレーターの声がブリッジに響き渡る。はやては“4番艦”を通して別のところから発信しているのかと考えるが、「司令! 敵艦の甲板に人がいます!」別のオペレーターからの報告が入り、すぐさま別モニターに“4番艦”の甲板が映し出される。広大な甲板にひとり佇んでいる白コート。体格は小柄で、声の通り子供だと判断するはやて。
「ホンマに生命反応が出やへんのやね?」
「はい。間違いありません。敵艦内に生きている者はいません!」
はやてにそう答えたオペレーターの言葉に静まり返るブリッジ。思うことはただ1つ。それじゃあ甲板に立つあの白コートを纏った子供は何なんだ?だ。
「こちら特務六課部隊長・八神はやて二佐。これより特務六課もエルジア紛争を鎮圧するために動く。まずは鎮圧を優先するつもりや。そやから交戦なんてせんでもええ」
はやてがトパーシオへと音声のみの通信を入れる。するとモニターに映るトパーシオが動きを見せた。フードに隠れている顔がハッキリとはやてへと向き直ったのだ。サーチャーの場所や見られていることも知らないはずなのに、それでもしっかりと自分に視線が向けられていることに息を飲む。
『それを信じろと? わたし達テスタメント幹部は、これまで何度も管理局に裏切られてきた。きっとあなた達も同じ。必ずわたし達を裏切る』
はやてはトパーシオの声に様々な感情が入り混じっているのが判った。怒りや呆れ、憎しみ、悲しみ。子供にしか見えないトパーシオが発するにはあり得ないほどの強烈な敵意。
「そやな。そやったら先にハッキリさせとこか。特務六課はエルジア紛争の鎮圧後にテスタメントを逮捕するために動く。協力するんは鎮圧を終えるまで。どうや? これならハッキリしとって裏切りなんて言えへんやろ?」
だからこそはやてが真剣な面持ちでトパーシオにハッキリと宣言した。協力して紛争を鎮圧した後は、一切合切の手加減なしで逮捕に行く、と。
『・・・うふふ・・・あははははは! そうだね。うん、それならハッキリしてる。いいよ、鎮圧するまでは一緒に戦う。だけど鎮圧後、帰還を妨害するならこっちも手加減なしだから』
「決まりやね。それじゃ早速始めるよ!」
“4番艦”のトパーシオとの通信が切れる。はやては降下ハッチに集合している降下部隊へと通信を繋ぐ。
「今の聞いとったな。まずはテスタメントと協力してエルジア紛争を完全鎮圧する。鎮圧後は一切の手加減なしでテスタメントを逮捕。ええな?」
『『了解!!』』
なのはとフェイトから応答が入る。
「降下部隊、出撃!!」
はやての出撃命令と同時になのはたち降下部隊は地上へと降り立っていった。それを確認したはやては、オペレーターにある調査を指示した。
「地上に居るテスタメント幹部の生命反応を調べてくれへんか?」
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