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夢幻水滸伝

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第百十五話 恐怖の正義その十

「カーストもあるし」
「それぞれか」
「そや、それでや」
「一概に控えめとは言えんか」
「男女関係に積極的でもな」
「それでか」
「あちらさんは時分にぞっこんやしな」
 それでとだ、中里は言うのだった。
「会ったらそうなるのもな」
「しゃあないっていうんやな」
「そや、けど自分はやな」
「どうもな」
 芥川は眉を顰めさせ腕を組んだうえで頭の上に黒い丸い線を無数に幾つも重ねた様なものを出した感じになって述べた。
「あの娘はな」
「苦手やな」
「どうしてもな」
「そこはしゃあないな」
「人の好みってあるやろ」
「どうしてもな」
「特に異性のタイプってな」
 つまり交際相手や結婚相手も求めるものはというのだ。
「あるやろ」
「それはどうしてもあるな」
「それでや」
「あの娘はやな」
「あの娘には悪いけどな」
 それでもと言うのだった。
「タイプやない」
「それでもあっちはな」
「僕がタイプやねんな」
「そや」
 中里ははっきりと告げた。
「まさにど真ん中ストライクや」
「それでか」
「そや、自分を見たらな」
「アタックしてくるか」
「こっちの世界でもな、けどこっちの世界では初対面同士や」
「ああ、けどこっちの世界にも来てるって知った時は」
 芥川はこの時のことを思い出して述べた。
「うわっ、ってなったわ」
「絶対に会いたくないってか」
「心の底からな」
「同じ世界を救う星のモンでもか」
「それでも天敵は天敵や」
 そうした立場であることは変わらないというのだ、この世界でも。
「そういうことや」
「そうか」
「そや、それでや」
「今回はか」
「そのことが気掛かりや、会いたないな」
「そう言うてもなあ」
 綾乃が主の座から言ってきた。
「しゃあないで」
「ああ、向こうが全員で来たからやな」
「それやったらあの娘もおるし」
 それでと言うのだった。
「もうそのことはな」
「諦めてか」
「そのうえでな」
「僕は覚悟を決めてか」
「行くとええわ」
「しゃあないで済まんけどな」
 自分自身はとだ、芥川は中里に困った顔で述べた。
「ほんまな」
「そう言うけどな」
「言っても仕方ないんやな」
「そや、というかそんなに嫌いか」
「嫌いやないけどな」
 それでもとだ、芥川は太宰に言うのだった。
「苦手なんや」
「嫌いと苦手はちゃうか」
「そや」
 そこが違うというのだ。
「ほんまにな」
「ちょっとわからんな」
「わからんっていうかな」
「それはか」
「感覚や、僕もあの娘は嫌いやない」
 このことは事実だというのだ。 
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