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八条学園騒動記

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第五百四十一話 研究室に戻ってその三

「戦えばお互いに失うものが大きいであろう」
「核兵器とかね」
「そうしていがみ合いつつもな」
「失うことを恐れてだね」
「戦争をせん」
「それが抑止力だね」
「ライオン同士が何故争わぬか」
 よく使われている言葉もだ、博士は出した。
「お互いが強いからじゃ」
「それで強い者同士が争うとか」
「どうなるかだね」
「そうじゃ、お互い相当なダメージを受けるからな」
 つまり失うものが多いからだというのだ。
「争わん、連合にしてもエウロパと戦えば」
「戦力差あってもな」
「エウロパも強いしね」
「だったらな」
「連合もな」 
 この国もというのだ。
「エウロパと戦えば勝つ」
「前の戦争もそうだったしな」
「エウロパ戦役でね」
「大勝利だったな」
「こっちの損害は殆どなくて」
「しかしそれはきりのいいところで終わって火事場に飛び込む者達がおったからじゃ」
「ああ、義勇軍な」
「サハラの難民から構成された」
 二匹もこのことは知っていた、それで言うのだった。
「あの人達がいたから」
「危険なことは全部させていたしな」
「だから連合軍は損害出さなかったね」
「義勇軍を常に矢面に立たせていたから」
「若し正規軍だけだとじゃ」
 連合市民で構成される彼等のみならというのだ。
「あれだけの損害で勝てたか」
「そんな筈ねえよな」
「絶対にね」
「連合軍弱いからな」
「それで有名だしね」
 連合軍弱兵、これは中央政府軍も各国政府軍もだ。
「それじゃあね」
「エウロパ軍強いのにな」
「幾ら数で圧倒していても」
「向こうも必死だし」
「そんな軍隊と戦ってたらな」
「正規軍だけでそうしたら」
 それこそというのだ。
「あの状況より遥かにね」
「損害出してたよね」
「しかもさっきも言ったがきりのいいところでじゃ」
 連合軍がエウロパの首都星系であるオリンポスに入る、そうなればもう血みどろの戦いになることは確実だ。だがそれがだったというのだ。
「マウリアが仲裁に入ったからのう」
「だよな」
「そうして戦争終わったんだよね」
「あれ本当にいいタイミングだったよな」
「エウロパにとってね」
 首都星系に入られる、そこで仲裁に来たからだ。だが博士は二匹に対して落ち着いた声で言うのだった。
「じゃが首都に入られるとな」
「敵も必死で戦うしな」
「これまで以上に」
「そして首都を攻略して終わりか」
「そうも限らないしね」
「エウロパ全土を占領するまでとか」
「そんな戦争もあるしね」
「そうなるとな」 
 まさに相手国を全て滅ぼす、そんな戦争はというのだ。
「相手がどれだけ小さな国でもな」
「損害は大きくなる」
「そうなるんだね」
「そしてそれを恐れてか」
「攻めないんだ」
「うむ、しかも連合はエウロパは嫌いでも」
 このことは事実でもというのだ。 
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