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戦国異伝供書

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第六十五話 伊賀者その二

「わしもな」
「それでは」
「わしは中々ここにおらぬが」
 それでもというのだ。
「お主達に任せてよいか」
「はい」
 酒井はすぐに答えた。
「それでは」
「頼むぞ、わしはどうしてもな」
「駿府にですな」
「おることが多い」
「元服されても」
「それでもじゃ」
 このことはというのだ。
「殿をお助けして全体の政をとな」
「言われていますな」
「殿にも和上にも、そして」
 竹千代はさらに言った。
「彦五郎様にも」
「お三方から」
「是非そうして欲しいとな」
「それだけに」
「わしは駿府におることが多い」
「だからこそ」
「時があれば岡崎に入ってな」
 そしてというのだ。
「政を見るが」
「それでもですな」
「やはり駿府におるとな」
 それではというのだ。
「詳しいことはわからぬからな」
「この岡崎のことは」
「だからじゃ」 
 それ故にというのだ。
「お主達に任せたい」
「それでは」
「うむ、それでわしは元服すれば」
 その時のこともだ、竹千代は話した。
「出陣することにもなる」
「そうなれば」
「織田家と戦うことになる」
 今の今川家の最大の敵であるこの家と、というのだ。
「吉法師殿ともな」
「織田殿は」
「わしでは到底敵わぬ」 
 竹千代ははっきりと言い切った。
「何をどうしてもな」
「あの方には」
「あの方は間違いなくすぐにな」
「元服されてですな」
「跡を継がれたならな」
 その時はというのだ。
「尾張の他の織田家の方々を圧倒されて」
「尾張一国を」
「手に入れられて」
 それで終わりではなかった。
「伊勢も志摩も美濃もな」
「尾張以外の国々も」
「手に入れられる、その方と刃を交えても」
 そうなってもというのだ。
「わしではじゃ」
「敵いませぬか」
「だからお主達にな」
 是非にというのだった。
「助けてもらいたい」
「そうしてですか」
「吉法師殿と戦いたい」
「今尾張の中では」
「吉法師殿はうつけ殿とじゃな」
「評判でこの岡崎でもです」
「言われておるな、しかしな」
 その評価はというのだ。
「間違いじゃ、あの方は傾いておられるだけじゃ」
「傾いてですか」
「傾奇者という」
「傾いていて奇妙な」
「そうした身なりや振る舞いをな」
 そうしたことというのだ。
 
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