青女房

「ヤクザ屋さんの方がな」
「怖いのね」
「実際そうだろ」
「それはね」
　亜希もそのことは否定しなかった。
「確かにかなり減ったけれど」
「それでもな」
「ヤクザ屋さんはね」
「妖怪より怖いだろ」
「そして何かあったらね」
「警察に通報しないとな」
「市民の義務だし」
　このこともというのだ。
「事務所があっても」
「その時もな」
「通報しないとね」
「何かあっても通報して」
　ヤクザ者に対してはというのだ。
「何かある前にもな」
「警戒してね」
「通報しないと大変なことになったらな」
「その時は遅いから」
「だからな」
　それでというのだ。
「ヤクザ屋さんの方がな」
「問題よね」
「ああ、だからな」
　それでというのだ。
「妖怪は怖くないさ」
「人を襲わない限りは」
「大丈夫だよ、じゃああらためてな」
「飲んで食べて」
「そうしてな」　
「楽しみのね」
「この店今日ビール飲み放題なんだ」
　そのビールを飲みつつの言葉だった。
「それじゃあな」
「今日は沢山飲むつもりね」
「ああ、このビール美味いしな」　
　言いつつまた飲んだ。
「今日は飲むぞ」
「飲んでもいいけれど」
　それでもとだ、亜希は夫にどうかという顔で返した。
「太るわよ」
「それか」
「あと痛風にも気をつけてね」
「怖いこと言うな」
「実際にビールは飲み過ぎたら危ないわよ」
　その痛風にというのだ。
「だからね」
「飲み過ぎるなか」
「そうよ、幾ら飲み放題でも」
　例えそれでもというのだ。
「痛風にはね」
「注意しないと駄目か」
「物凄く痛いっていうし」
「部長がこの前言ってたよ」
　その痛風のことをだ、夫も言った。
「もう親指の付け根がな」
「万力で締め付けられたみたいによね」
「物凄く痛くなってちょっと風に当たったり肩がぶつかってもな」
　そうした何でもないことでもというのだ。
「泣きたくなる位痛いってな」
「そうなるから」
「ビールは注意か」
「せめて他のお酒にしてね」
「そういえば他のお酒も飲み放題だな」
「じゃあビールはそれ位にして」
　そしてというのだ。
「それでね」
「他のお酒か」
「それにしてね」
「仕方ないな、じゃあワインか焼酎にするか」
「実際そういったお酒の方がずっと身体にいいし」
　ビールよりもというのだ。
「だからね」
「どっちかか」
「日本酒もあるけれど」
　メニューを見ればそうだった。