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八条荘はヒロインが多くてカオス過ぎる

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第二百四十四話 ガジュマルの木の傍でその四

「あれはね」
「出ないから」
「あんなの出たらね」
「大変よね」
「そうだよね」
「あれ妖怪じゃないけれど」
 あくまで熊の話である。
「羆はね」
「あれはもう猛獣で」
 まさに文字通りのだ。
「特にこのお話にあるね」
「冬眠する穴がなかった位の羆は」
「化けものだから」
 それでというのだ。
「そこまで大きくて熊って冬眠出来ないと」
「おかしくなるんだよね」
「冬に寝るのよ、熊は」
 美沙さんは熊に詳しかった、それだけこの輪を知っているということか。この辺り北海道の人達だけはある。
「それでずっと寝ていないから」
「寝ていないと誰でもね」
「おかしくなるでしょ」
「精神的にもね」
「しかも冬の山って餌もないから」
「余計にだったね」
「そう、本当におかしくなって」
 それでだったのだ。
「熊も大暴れしてね」
「ああなったんだったね」
「そうよ、あれは普通じゃなかったから」
 羆の方でもだ。
「あんなとんでもないことになったんだよ」
「開拓村が襲われて何院人も犠牲になった」
「酷いことになったんだ」
「そうよ、滅多にないことだったけれど」
「その滅多にないことがだね」
「起こったのよ、何でも十勝でもね」
 北海道のこの地域でもというのだ。
「開拓の頃二回位そんなでかい熊が出たそうだよ」
「二回もなんだ」
「猟師さんが返り討ちに遭う位のね」
「妖怪より怖そうだね」
「鬼熊だったかもね」
 美沙さんはこうも言った。
「その羆って」
「ああ、熊の妖怪だね」
 鬼熊と聞いてだ、僕はすぐに答えた。
「確か」
「やっぱり義和知ってるのね」
「うん、結構本に出る妖怪だからね」
 年老いた熊がそうなるらしい、民家に降りてきて牛や馬といった家畜を攫って喰うというから本当に鬼みたいだ。
「それでね」
「義和も知ってるのね」
「とにかく大きくて」
 それでだ。
「獰猛なんだよね」
「その鬼熊だったかもね」
「十勝に出て来た熊達は」
「そうかもね。あの羆嵐にしても」
 この事件もというのだ。
「実はね」
「妖怪だったかも知れないんだね」
「あの羆死んだ時大嵐が起こったし」
 だから羆嵐という名前だったのだ。
「それでね」
「アイヌの人達の話であるらしいね」
「そう、羆の神様か妖怪かね」
「そうした存在が死んだら大嵐が起こるんだったね」
「その時実際に起こったっていうから」
 それではだ。
「もうね」
「実際にだね」
「あの羆はね」
「妖怪だったかも知れないんだね」
「あたしそう思ってるし」
 実際にというのだ。 
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